外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

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動乱

43.天国にきたのか?

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「うわっ」

「きゃあっ」

 壁に飲まれたアマーリアとソラノは後ろにもんどりうったが、地面に転がる前に何者かに抱きかかえられた。

「ライティング!」

 二人の背後で声が響き、辺りが光に包まれた。

「「テツヤ!?」」

 二人の声がはもる。

 二人の下にいたのはテツヤだった。

 場所はわからないがどうやらここは地下道らしい。

 いつの間にか二人を拘束していた鎖も外されている。

「二人とも無事だったか!」

 テツヤは床に倒れながら二人をかき抱いた。

「ああ、私たちは無事だ。それよりもそっちは大丈夫なのか?」

「怪我はないのか?」

「ああ、問題ない。それよりも早いところ移動しよう」

 テツヤは二人の心配に答えながら立ち上がった。

「知ってると思うけど首謀者はランメルスだ。王城も既に占拠されているらしい。まずは王を助けないと」

 そう言って歩き始めたがすぐに体が揺れ、地下道の壁へもたれかかった。

「「テツヤ!」」

 二人が慌てて抱きかかえる。

 テツヤは荒い息をしながら顔にびっしりと汗をかき、意識ももうろうとしている。

「これは……まずいぞ。かなり弱っている」

 アマーリアが眉をひそめた。


 テツヤを地下道へ寝かし、着ているシャツをはだけた。

 しばらく触診した後に左肩から右わき腹へかけて指でなぞった。

「おそらくここからここへかけて切られている。治癒魔法をかけたのだろうけど完全には治りきっていない。この傷から生命力が流れ出続けている」

「そんな!それじゃあテツヤは……!」

 アマーリアの厳しい言葉にソラノが悲痛な声をあげた。

「このままでは長くはもたない。なんとかしないと」

 そう言ってアマーリアは服を脱いだ。

「ななな、何をしてるんですか!こんな時に!」

 ソラノが顔を真っ赤にして素っ頓狂な声をあげた。

「いいから早くテツヤの服を脱がすんだ」

「なあああ?」

 返答を待たずにアマーリアはテツヤの服を脱がし始めた。

 ソラノは顔面を紅潮させながらそれを見ていたが、やがて意を決したようにアマーリアを手伝った。

「私たち二人の力でテツヤに生命力を与えるんだ」

 そう言うとアマーリアは地下道を流れていた水を掌で掬った。

 目を閉じ、二言三言念じると濁っていた水が瞬く間に清水へと変わっていく。

「さあ、テツヤ。この水を飲んでくれ」

 そう言って水を飲まそうとするが、半ば意識を失っているテツヤは全く飲む様子がない。

「しかたがない。こうするしかないか」

 そう言ってアマーリアはその水を自らの口に含み、そのままテツヤに口づけした。

「ななななななああああ、ア、アマーリア様!」

 慌てるソラノには構わずアマーリアは口づけを続けた。

 テツヤの喉が鳴り、水を飲みこんだのを確認すると何度かそれを繰り返し、更に水を飲ませた。

 それが終わったら裸でテツヤを抱きしめる。

 アマーリアの力が生み出した蒸気が二人を包み込む。

 その蒸気は光を発しながらアマーリアとテツヤの周りを渦巻き、やがてテツヤの体へと吸い込まれていった。

 テツヤの顔に血の気が戻っていく。

 しかしまだ完全に意識は戻っていないようだ。

「さあ次はソラノの番だ」

 アマーリアがテツヤから体を離し、ソラノへと預けた。

「わ、わ、私ですか?な、な、何をしろと?」

「何って、今さっき私がやったようなことさ。私の力でテツヤに生命の水を与えた。しかしまだ体内を巡る生命の気が足りていない。ソラノの力で生命の気を与えてやってくれ」

「む、む、無理です!無理です!わ、私が、は、初めてのキキキ、キスをテツヤとするなんて!」

「何を言ってるんだ。これは人助けだぞ。キスの数には入らんだろ。それに初めてというのなら私だってそうだぞ。それともソラノはファーストキスがテツヤでは不満なのか?他に誰かお目当ての人がいるのか?」

「そ、そういう意味ではないのですが……は、初めてのキスというのはもっとこう、場面とかムードとかそういうものが……」

「何をまどろっこしいことを。さっさとしないとテツヤが危ないのだぞ。ムードなどといってる場合か」

「~~~~~~!」

 顔を真っ赤にしながらしばし逡巡した後に、遂にソラノは決心して服を脱ぎ去った。

「い、良いですか!これは人助けですからね!」

 アマーリアに念を押してテツヤを腕にかき抱く。

 顔を朱に染めながら大きく息を吸い込むと目を瞑ってテツヤの口から息を吹き込んだ。

 空気を送り込まれたテツヤの胸が大きく動く。

「よし良いぞ、そのまま何度か繰り返すんだ」

 テツヤを背中から抱き支えながらアマーリアが言葉をかけた。


 どの位空気を送り続けたのだろうか、やがて瞑っていたテツヤの瞼がピクピクと動き始めた。

 いつの間にか顔はすっかり血色がよくなり、体にも生気が戻っている。

「う……こ、ここは……」

 目をしばたたかせ、辺りを見渡す。

 見下ろしたその先には裸でテツヤに抱きついているソラノがいた。

「え、ソラノ?なんで…裸……?」

「み、み、見るなあ~」

 ソラノは抱きつきながら顔から火が出そうなくらい赤くなっている。

「ようやく目が覚めたようだな」

 後ろからアマーリアの声がした。

 振り返ると後ろからアマーリアが抱きついている。

 こっちも裸だ。

 前後から感じる柔らかな四つのふくらみを感じながらテツヤは自分も全裸であることに気付いた。

「俺は天国にきたのか?」

「なかなか言うではないか。それだけの元気があればもう大丈夫だな」

「いいからさっさと目をつぶれ~!」

 ソラノの叫び声が地下道に木霊した。
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