9ツノ世界と儀式

長谷川 ゆう

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エピローグ・自由の世界・その後

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  自由の世界は、産まれた時よりバレが思うほど
大きくなかった。

  自由の世界は、宙の国の隣国だった。宙の国では義務を放棄する者は罰を受けた罪人として、忌み嫌われる。

   真逆に、自由の世界では、義務を正しい生き方だと思い、自分の頭で考えずに、9ヶ月で尽きる命や義務を疑問にすら思わない宙の国の人間を忌み嫌っている。

 
   自由の世界の人間五千人。病院、理容室、学校、図書館、花屋、パン屋、屋台、農家がそれぞれある。どの場所も、それぞれ2つしかないが、住民にとっては、充分だった。

   
   自由の世界で、もう一度、10歳で生まれ変わった人間には、  愛する世界で出会った人間と暮らせる小屋が用意され、自由の世界から支給される生活費で暮らし、18歳まで全員、学校に
無料で行ける。


    10歳から丁稚奉公で働く人間もいるが、バレとブランドは、用意された小屋に住み、支給された生活費を切りつめ貯めた。

    バレとブランドは18歳まで、学校に通い、文字を覚え、必死で勉強をする事を決めている。

 
    自由の世界では、18歳から結婚出来る。子供を持てる。子供を持たない夫婦もいれば、同性婚で養子をもらう2人もいれば、4人までなら、自由の世界では、子供の生活費も学費も18歳までは、無料だ。

  バレとブランドが15歳の夜、1人分のパンを半分に分け、バレが作ったコーンスープを飲みながら、ブランドは言った。

  「バレ、宙の国も自由の世界も忌み嫌いあっているけれど僕は、どちらの国に産まれても、そんな大差ないと思うんだ」

  バレは、パンを食べる手を止めた。

 「どちらの世界を撰ぼうが、産まれた時に僕らには手札が配られている。それを命尽きるまで、どちらの国に産まれたって、どう使いきるかだよ」

   
   ブランドは、食べるのがゆっくりだ。
   バレは、ブランドよりもゆっくりだ。


  「宙の国と自由の世界は生き方は、違うけれど、産まれるのは、どう足掻いても自分で、家族は選べないだろ?2つの世界を見て、思ったよ、僕はどっちの世界でも、バレを選ぶし、自分の生き方は、自分で選ぶ」

   宙の国から出て、出会った時のブランドは、この世界に冷めきっていた。

  また、バレも9つの世界に、絶望したり泣いたり救われもした。

   「私は、ブランドで良かった。この切り札で幸せだった」


   自由の世界では、夫婦になり、子供が産まれた場合、もしくは養子をもらい、18歳まで育つと、バレは母親の世界へ、ブランドは、父親の世界へと飛ばされる。


   子供達は、20歳まで自由の世界で生き、その後、家族と自由の世界の記憶を全て消され、宙の国へ送られ、10歳で生まれ変わる。

    この世界では、実は知らないうちに、一度は産まれ変わっているのだ。


   バレは、思う。いつか母親の世界に行った時、自分は、どんな子供達を迎えるのだろうかと。




  
     

   
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