2 / 12
父親の世界
しおりを挟む出国したバレは、最初に父親の世界に行く事が地図に記されていた。
地図には父親の世界への行き方、父親の名前と父親が住む地名が記されている。
「父親の世界の住人1億人、名前はギルバー・ルータ、ツキハ村に住む」
与えられた父親の情報はそれだけだ。
宙の国の金の門から出ると、あちらこちらにバレと同じ歳の子供達がいる。
罰を受けたくないため義務を果たすためみんな他の子供に興味すら抱かず先を急いでいた。
キョロキョロ見ながら歩いているのバレ1人くらいだ。
私、変なのかな?義務を果たすことも永遠に生きる罰を受けたくないことも知っているが、私はせっかく産まれて初めて見たどこまでも続く青い空をずっと見たい。
初めて見る空は太陽の光でキラキラと青く輝き美しかった。
バレの見える範囲だけでも百人近くの子供達がいた。
自分の家族に興味はあったが、世界にも興味があった。
父親の世界は宙の国から一番近く、金の門から歩いて10キロ先にある駅から歩いて10キロ先にある駅から列車で1時関の旅。
バレはとぼとぼ歩いていたが、他の子供は歳をとるのが怖いのか、罰を受けるのが怖いのか、早足や走って駅へ急いでいる。
子供の性格は、すでに10歳までは形成される。
産まれた時に、家族がいないだけで子供達は、それぞれの遺伝からもらっているため誰1人として同じ子供はいない。
宙の国の金の門を出てから、ずっと砂利道と青い空が続いて他には何も見あたらない。
ふと、バレはリュックをその場におろし、座りこみ荷物の中身を見た。
荷物の中身を確かめる悠長な子供なんて、バレ1人くらいだった。
水筒が1つ、乾いたパンが1つ、赤茶色のワンピースが1枚、毛布が1枚、小型のナイフが1つ、それが全てだった。
駅までは、3日も歩けばつく。駅から列車で父親の世界は1時間だ。
バレの父親の茶色の瞳は、うつろだった。
父親の世界の駅からバレの父親の家は、駅から徒歩5分の藁葺き屋根のボロ屋。
バレが父親の駅の世界につき、無表情な駅員に地図を見せると
「ああ、あの酒飲みギルバーか。家ならすぐそこだよ。この世界は駅から近い家ほど貧しいんだよ、覚えておくと良い」
子供達は、父親の世界の奥へと歩いていく。駅前の藁葺き屋根に行く子供はバレを含めて10人。
人目を気にしながらバレは、藁葺き屋根の家の中でも1番のボロ屋の父親の家に入った。
中は薄暗く、ひんやりとしていて小さな台所と1つテーブルが置かれた部屋が1つあるだけだった。
バレと同じで細身で茶色の瞳をした男がバレを見た。
「よく来たね。汚い家ですまない。お入り」
うつろな瞳をしたギルバー・ルータは弱々しく話した。
バレはおずおずとテーブルを間に、父親の前に座った。気がつくと自分の体が大きくなり、父親より身長が高くなり15歳になっていた。
「あの、次の母親の世界に行くための列車のパラのお金が必要だから、下さい・・・」
宙の国でバレが産まれた時、この世界ではパラと言うお金が必要で、父親からもらう事を知っている。
バレは居心地が悪く、早くこのギルバー・ルータと言う自分の父親のもとから去りたかった。
「悪いが、10パラも持ってないんだ。バレはお金を持っているならお父さんにくれないかな?」
バレは耳を疑った。
10パラあれば1週間生活出来る。自分の父親はそれすらない。むしろ、娘からお金をたかる父親だった。
「ありません。次の母親の世界に行きます」
バレは言葉少なく、父親の藁葺き屋根を出た。
父親が話すたびに、バラがまだ飲んだ事もない酒臭い匂いが部屋に溢れた。
父親の世界の駅に着くと、駅には藁葺き屋根から出てきた10人の子供しかいなかった。
他の子供達は、次に10年歳をとるまで、この世界に1ヶ月はいるつもりだろう。
さっきの無表情な駅員がバレを見て、無言で10パラの列車賃を渡してくれた。
「この世界では、藁葺き屋根に住む家の子供は義務で次の世界に行くためのお金が宙の国から給付されるんだよ」
バレは無言で受けとると、駅のホームで母親の世界行きの列車を待った。
バレの見上げた空は、どんよりと重く曇っていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる