4 / 6
第4話 彼女と会話
しおりを挟むショッピングモールで一日過ごし、すっかり日が落ちた中を俺たちは繁華街から離れる方向に歩いていた。
何を隠そう、これからホテルで一泊するためだ。しかもラブが付く方の。
「七海?」
「………は、はい……」
「大丈夫か?」
「………は、はい……」
俺が何処を目指しているのかは少しでも地理に精通していればわかる。
賑やかな中心街からは離れた裏通りのような場所。近づくにつれて七海の落ち着きが無くなって行くのがわかった。
そういう俺もホテルに行くのは久しぶりなのでワクワクしている。
特に毎回受け付けをする度に驚愕した目で見られるのが俺のお気に入り。
こういう系統のホテルはこの世界だと、男性が少ないことで発生したユリカップルによって使われることが多い。もちろん男性が使っても問題は無い。
周りがユリな分、俺にとっては楽園のような場所とも言えるかもしれない。
「行くよ?」
「……はい!」
七海に一声かけてからホテルの入り口にある扉を押して中に入る。
内装はピンク色の壁にピンク色の明かりを使っており、とにかくそういう店にありがちなピンク一色だった。
「すみません、いいですか?」
「はい……はい?!え、?!………ご、ごほん。失礼しました。こちらのプランから希望するものを選択してください。」
「ありがとうございます」
被害者累計百人近くが存在する中、この受付嬢も言い反応をしてくれた。
チラチラと俺と七海に視線を送るのは果たして。嫉妬なのか、羨望なのか、それとも正義感なのか。
「宿泊でお願いします。部屋はノーマルの洋室で」
「?!……承りました。開始まで時間がありますが、いかがしますか」
「うーん、直ぐに部屋に入りたいので休憩でお願いします」
「わ、わかりました……お会計は〇〇〇〇◯円になります」
俺は財布を取り出し料金を支払う。俺は七海と違って給料をもらっているので俺の驕りだ。
「せ、先生……すみません後で払います」
「驕りだから気にするな」
「……で、でもっ」
「とりあえず部屋に行こうか」
「……わかりました」
受付嬢から部屋番号が書かれたキーを受け取ると、俺と七海はエレベーターを使って部屋に向かった。床にはこれまたピンク色の絨毯が敷き詰められているため、足音が響くこともなく、結構当たりのホテルだと思った。
部屋に入ると、ベッドにソファーにテレビがあり、そして暗めのライトによってぼんやりした空間が広がっていた。
「……凄いです……」
七海は始めて来たようで当たりを見渡して感動していた。
「そうだな……七海」
「っ……はい……!!」
ここはもう周囲の目を一切気にする必要の無い密室。
俺は横にいる七海を抱きしめると、お互いの唇を交える。
しばらくしてから、俺たちはベットへと向かった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」


王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる