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第3話 母親と会話
しおりを挟む「ラナ、田中カモメ君とクラス一瞬なの?」
夕食の10分前にリビングに母親から呼ばれたラナは、スマホで花とLINEをしながらダイニングテーブルに座っていたら、カボチャのコロッケを揚げている母親から、突然聞かれた。
「えっ?」
花と明日の数学の小テストの愚痴をLINEで言いあっていたラナは、面食らった。花からLINEが返ってきたが、こちらに背中を向けてる母親の背中から目が話せない。
キラキラネームをつけたわりに、ママ友とは、昔から異常に保守的な母親は学校の情報は、生徒のラナより早く入手する。
「なんで?」
ラナは否定でも、肯定でもない、うやむやの小さな声を出した。
油の中で、パチンとコロッケのころもが弾けた。
「田中花ちゃんのお母さんから聞いたのよ、花ちゃんとカモメ君ていとこなんだってね。カモメ君とラナが教室で話してたんだって?」
女に秘密もへったくれもない事を、ラナは少なくても小学校低学年から学んでる。
「ごめん、お母さんにカモメ君のことバレた」
LINEで花に送ると、すぐに返事がきた。
「ラナのお母さんだから、しかたないよ。明日のテスト頑張ろう。おやすみ」
花から短い返信と、眠ったウサギのスタンプが返ってきた。
ラナはLINEを閉じて、スマホを置きリビングのニュースがずっと流れているテレビを見た。
「カモメ・・田中君、同じ班だから、班でレポート書いたりするから話すよ」
出来るだけ自然にしたが、声がうわずり焦る。
「そう、ラナ、それならしょうがないけど班以外はカモメ君と話さないようにしなさい。カモメ君、学校では変わり者って噂なんでしょ?」
母親の語尾の「でしょ?」にトゲがあった。知っているくせに、わざとラナにかまをかけるような、同意を求めるような、母親のいやらしさにラナは、イラッとした。
話して欲しくないなら、はっきり言えば良いのにラナの母親は、いつも世間体が1番だ。
「知らない。うちの学年、けっこう仲良いから、カモメ君も普通の子だよ」
意地をはるような気持ちで、ラナが強めに言うと揚げあがったカボチャのコロッケをお皿に盛り、母親がテーブルに置いた。
「そう、なら良いんだけど、来年は受験でしょ?2年生だから、人間関係の付き合いは内申にも響くし」
にっこりと、笑った母親の顔が初めて憎らしくなって。受験も大事だ。でも私の人生と人間関係より、受験なのか。
「ご飯にしましょ」
母親が、ごはんを取りに台所に戻る。
コロッケから立ち上る湯気が、ラナの心のモヤモヤのように立ち込め、蒸気となって天井に透明になっていくのをラナは、ずっと見ていた。
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