一人っ子の人生

長谷川 ゆう

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ひとりっ子、フレンチトーストに憧れる

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  両親共働きのうえ、父親が軍隊並みに厳しい家だったため、小学生でも1日のおやつは、母親から決められたお菓子しか食べさせてもらえなかった。

  小4の時、とても仲の良かった女の子の友達がいて「一生、友達ね!」と女子によくある絶対ない約束をした(ご想像どおり、卒業と同時に無効となった)

  その子の家に行き、公園や公園の近くの小さな丘で木登りをして(今では想像つかないくらい、私は当時おてんばだった)、散々遊んだ。

  おやつの時間、その子の家に行くと、私は衝撃を受けた。

  その友達は、台所のガスコンロの前に小さな台を置き、「フレンチトースト作るね」と火をつける。

  当時、何でも許可が親から必要だった私の家では、子供が火を使うなんて言語道断だった。

  「火を使って、いいの?(震え)」
と動揺しながら、牛乳と卵と砂糖をボールの中で混ぜ、食パンをひたす私に、その子はきょとんとした顔でうなずいた。

    私の甘めの味付けと、その子が焼いた少し焦げたフレンチトーストは、本当に美味しくて、少食な私でも、全部食べていた。

   「一生、友達ね!」の約束は、無効になってしまったけれど、私は今でも時々、フレンチトーストを作る。

   あの少し甘すぎる焦げたフレンチトーストの想い出だけは、大人になった、今でも有効だ。
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