詩集

散らばった心を

 足元にぶちまけてしまった


 大量の小銭


 あふれそうな涙を見られないように


 うずくまって髪で隠してひろったんだ



  何円から拾えばいい？


   
 五百円？


 百円？


 五円？


 一円？


 指先が止まる駅のホームは止まらない


 
 ヒールに落ちた涙がホームに流れた


  なんなんだ

  
  せっかく集めた心なのに


  どれから拾ったらいいんだよ

   
  うずくまっていたら


  音もたてずに拾ってくれたサラリーマン


   「これで全部ですか？」


 新宿小田急の駅


 知りもしない私の心を集めてくれた人


 うなずくと去っていた


 手には知らないサラリーマンが拾ってくれて集まった心


  また前を向いて鞄にいれた


   振り向くと姿勢の良いその人が颯爽と前を歩く背中



   その背中に私は深く深くお辞儀したんだ