詩集

言葉のタカラモノ

  もうこれ以上、言葉が出てこない


  もうこれ以上、歩めない


  もうこれ以上、上を向けない


  もうこれ以上、自分でいられない


  もうこれ以上、道が見えない


  もうこれ以上、人生がない


  暗闇で独りでうずくまる


 何を目指して生きているのかすら


 手からこぼれ落ちる命のように


 何もかも分からなくなる


 心臓と記憶だけが嫌でも脈として音になる


  「まだだよ、オワリハ」


  記憶の誰かの言葉が足下をテラス


  ボロボロの足がまだある


   「まだだよ、サイゴハ」


 記憶の誰かの言葉が傷だらけの血がにじんだ手元をテラス


  心の中にたくさん放り込まれた誰かからの言葉がタカラモノのようにヒカリダス


  そばにいなくったって


   離れてしまたって



   あなたの言葉がタカラモノとしてまだ
この暗闇の人生を照らしてくれる


     全て失くしたって

     たくさんもらった言葉のタカラモノをまだ抱えている


   大切に壊さないように忘れないように


   見えない誰のものでもない自分だけのタカラモノを抱えてまだ生きていける


    まだ、生きていける


    タカラモノは光っている