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死者に生かされる
しおりを挟む人生を最期にしようと想った
8年前の4月
あてどもなく街を歩いたんだ
深夜から明け方にかけて
まるで夜の闇に隠れるように
独りぼっちで
いくつかの街を通りすぎた明け方に
この世の終演のような赤紫の太陽の光
地平線が天国のように美しかったのを覚えてる
腐るほどの人の中に埋もれるようにいて
独りぼっちは死のようだ
太陽の赤紫に初めてあの人を愛した日のようにみとれていた
地球は生きるには美しすぎる
この世界は生きるには息苦しすぎる
明け方の静まり返った街に
自分のヒールの音が心音のように鳴り響け
最期に貴女に会いにいこう
貴女への道は知っている
最期を覚悟した私を見た貴女は
何も言わずに迎えてくれた
暖かいコーヒーを買うお金と家の鍵しか持たない私に貴女はいつものように笑って何も聞かない
「帰るね」
嘘をつくと出不精な貴女は珍しく私を玄関まで見送ってくれたね
「また、来てね」
貴女はそう言って、冷えきった私の手をキツく握ったんだ
私より強い力で私より暖かい両手で瀬戸際の私を信じたんだ
自分すら信じられない私を貴女は信じてくれた
「また、来るね」
一言、約束をしてしまった
その貴女はもうこの美しい地球に
息苦しい世界にいない死者に成り
それでも「あの一言」で私を生かすんだ
信じるんだ
貴女にはかなわないよと言いながら
またこの息苦しい世界で生かされる
「また、来てね」
その言葉、私とまた再会したら言ってくれるのを信じて
今日を泣きながら生きている
死者の貴女と共に
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