詩集

賛否両論

  私が怖いのは賛否両論の偏り


  戦中産まれの祖母が語っていた


  先祖代々、必死に働いて出来た土地を一瞬で国にとられたと


 怒らない祖母の悔しい顔を最初で最後に見た時


 シベリア抑留者の無口な祖父は、幼い私がどんなに昔の話を聞こうとしても


  何も語らないまま、この世を安らかに去った


  シベリアから命からがら帰還した祖父を家族は、祖父をだと分からないくらいの浮浪者だと驚き、面影すらなかったと語った



  正しいと誰かは語る


  正しくないと誰かは語る


  その間で揺れる私は考え続ける


  祖父母が語らずに、教えてくれた賛否両論の中で出したコタエを私は私の思考を止めずに出したい


  今、生きる世の中の流れに戸惑いながらでも、祖父母の人生を私は受け継ぎ、頂いた人生


   賛否両論の中でも、私は思考は止めない



  誰かの考えの流れに乗るのは、いつだって楽だ



    楽じゃなくても、私が思考を止めないのは、語らない祖父母の人生を見て生きてきたからだ