11 / 12
金色ニート②
しおりを挟む「金髪が落っこちてました」
食堂でマリネさんが、ノンカフェインのワインと俺には1ヶ月働いても買えないようなお皿にチーズが3つしかない軽食をおごってくれた。
「ヤヨイたんがある日、行ったの。会社のロビーに、本当に金髪のショウたんが座ってて、行く場所がないって言うから、拾っちゃった♪」
拾っちゃった♪って捨て猫じゃないんだから・・・。
「高校出てから、燃え尽きてニートになって、親にも見放されて、ホームレスになって、行き着いたのが、うちの会社の誰もいないロビー」
マリネさんは、上品にチーズを食べながら話す。
「ショウたんに働く?って聞いたら嫌ですって言ってさすがの私も困ってたら・・・ヤヨイたんが、彼に一目惚れしたので私が養います!って言って、今にいたるの♪」
一目惚れの結婚前提の彼なのか・・・本当にこの会社は何でもありだ。
食堂の窓から、マリネさんがぼんやり秋から冬になりそうな、高くなりはじめた空を見上げた。
「ケンたんは、まだ不思議でしょ?いろんな人がいて、この会社。むふふ」
思わず、ストレートなボールが投げられて、飲んでいたワインをむせる。
「まあ・・・はあ・・・」
我ながら情けない声がでる。
「実はね、ルリが高校生の時に不登校になって、今で言う社会不適合者だから、ルリが入社できる会社を作っちゃえって思ったの♪まあ、結局、私の兄の・・・ルリのパパの会社を希望になっちゃったんだけどね♪むふふ♪」
え?っと思った瞬間、ノンアルコールのワインを吹いた。
「ブガハッゲホッ、ご、すみまぜん」
目の前が、服がまるで吐血したようになった。
「やだあ♪ケンたん、かわいい♪むふふ」
目の前で笑うマリネさんに動揺しながらも、あの彼氏が途切れない、友達たくさんのルリが不登校なんて微塵も知らなかった・・・。
「ルリ、有名な電化製品の社長の娘のわりには意地っ張りで私立じゃなくて、公立の進学校に行くってきかなくてね。行ったら行ったで、妬みからイジメられたのよ・・・」
マリネさんが、また高くなった空を見上げた。
「ケンたんには、黙っててくれって言われてるんだけどね♪ルリ、ケンたんの事を1番信頼してるみたいで、叔母さん安心しちゃった♪大学で1人でもそんな友人ができて♪」
意外な話を意外な流れで聞いているせいか、現実とは思えなかった。
「ルリに助けられたのは、ぼっちだった俺のほうです・・・」
やっと出てきた一言に、初雪のような汚れのない笑顔でマリネさんが微笑むので、思わず目をそらした。
「私は、そんな会社を作りたかったの。今も試行錯誤で失敗だらけだけど、この国は、1度ルールや人間社会から離れたら、戻ることも難しい。だから、人生や人間関係やルールが楽しみで働いてくれる会社にしたいし、今の全国にいる4000人の社員に感謝しかないわ♪」
ルリさんは、うんとのびをすると、最後の一口のワインを飲み込んだ。
「だから、ケンたんも、来年から楽しんで働いて♪仕事のためじゃなく、人生と人間関係を楽しむための仕事だから♪」
マリネさんは、ルリと同じ白いスラッとした手をひらひらふりながら仕事へと戻って行った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
Prince Killer ~7人の殺し屋~
河崎伊織
キャラ文芸
2020年、東京の山奥の児童養護施設から追い出された、4人の少年が路頭に迷っていた。
中学生になると“売れ残り”と見なされ、まともな扱いを受けなくなった彼らは、1人の青年と出会う。
「お前ら、殺し屋に興味はないか?」
その言葉が彼らにもたらしたのは、傷付き壊れた、かつての仲間だった。
今宵、新たな殺し屋人生の幕が開ける。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
作ろう! 女の子だけの町 ~未来の技術で少女に生まれ変わり、女の子達と楽園暮らし~
白井よもぎ
キャラ文芸
地元の企業に勤める会社員・安藤優也は、林の中で瀕死の未来人と遭遇した。
その未来人は絶滅の危機に瀕した未来を変える為、タイムマシンで現代にやってきたと言う。
しかし時間跳躍の事故により、彼は瀕死の重傷を負ってしまっていた。
自分の命が助からないと悟った未来人は、その場に居合わせた優也に、使命と未来の技術が全て詰まったロボットを託して息絶える。
奇しくも、人類の未来を委ねられた優也。
だが、優也は少女をこよなく愛する変態だった。
未来の技術を手に入れた優也は、その技術を用いて自らを少女へと生まれ変わらせ、不幸な環境で苦しんでいる少女達を勧誘しながら、女の子だけの楽園を作る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる