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金色ニート①
しおりを挟む「ケンたん♪部署は決まったの~?」
食堂で何故かルリの卒論を書きながら、俺は珍しくコンビニのおむすびを食べているルリを見上げた。
「やべ・・・」
入社前からいろんな社員に会いすぎて金髪人事部に行く事をすっかり忘れていた。
「1年に1度のおかかおにぎりは、おいしいね~♪2月までに卒論よろしく~♪」
1年に1度のおかかおにぎり・・・。そういえばルリは秋になるとコンビニで買って食べている。
4年の付き合いでも、分からない事だらけだ。卒業したらルリはパパの会社に入社する。都内だがもう会うのは難しくなる。
しんみりしている俺を横に、おかかおにぎりを食べ終わったルリが、両腕を伸ばしのびをすると、こちらをチラッと見た。
よく見ると、マリネさんと似ている凛とした丸い瞳をしている。
「だ~いじょうぶ♪社会人になっても夏にはパパのクルーザー旅行にケンたんもお呼びするから♪じゃあ、私はこれから彼氏とデ~トに行ってきま~す♪」
前言撤回。4年も付き合いがあれば、いろいろ分かる事もある。
マリネさんと同じスラッとした腕をヒラヒラさせながらルリは学食を出て行った。
あらかたルリの卒論を終わらせて、午後から来社する事にする。
何度来ても、ロビーには誰もいない。今のご時世に物騒だと思いつつエレベーターで人事部のある18階に行く。
よく考えたら、人事部の金髪の2人に会ったのは初夏以来で微妙に緊張してくる。
18階のフロアは、半分がカシマたんが仕事をしているパソコンなどが置かれたオフィスで、半分が部屋になっていて「人事部」とだけ書かれた白いドアがあった。
オフィスには誰もいない。
アポすらとらずにこの会社には、何度も来ているがノックをするのに数分かかった。
ノックをすると、数秒間がある。
「どうぞ」
確かヤヨイたんと言う金髪ロングの女性の声だ。
ドアを開けたとたん、俺はフリーズした。
真ん中にパソコンが置かれたデスクにヤヨイたんの顔が見えない程の書類が山になっている。
それは、会社としてはまともだが、その横にリクライニングのイスに座りパソコンでゲームをしている・・・しょうたんがいた。
「あ、あの、部署を希望しに・・・」
やっと出た声を合図にヤヨイたんが、分厚いクリアファイルを持ってきた。
「人事部は、ダメよ。私達、以前も良いましたが結婚前提ですので、ね、ショウたん♪」
ヤヨイたんが振り向くと、ショウたんはこちらに見向きもせずに、ゲームをしながらうたずく。
「営業が少し不足しているの。あなた、コミュ障っぽいけど短期間で、この会社の人と交流しているから、いけると思います。決まりです」
コミュ障は認めるが、あっと言うまに決まった・・・。
「では、来年の入社、心待にしております」
ヤヨイたんがお辞儀をすると金髪の髪が短冊のようにキラキラ揺れる。慌てて、俺も頭を下げる。
「宜しくお願いします」
その間もショウたんのゲーム音は、止まらない。
狐につままれたような気分で人事部を出ると、久しぶりにマリネさんがシックな白いスーツを来て歩いていた。
「むふふ♪ケンたん、お久しぶり~♪部署は決まった?」
あいかわらず、スタイルの良い細身の体に髪は後でまとめているせいか凛としている。
「はい・・・あの、でも、ショウたんがゲームしてました・・・」
口から思わず出てからしまったと思った。仕事中のゲームなんて、告げ口になる。
「あ~、ショウたん、ヤヨイたんのお給料で生活しているニートだから♪でも、社員ではあるけど、仕事はしてない!でも、会社の前で拾った時よりは、人間らしい生活してる♪」
ニート?社員?拾う?頭が混乱する。
「もうすぐ、3時だし、食堂でスイーツでも食べて話そうか?」
マリネさんのペースにのせられて、食堂に向かうマリネさんの後を歩く。
本当にこの会社は、ニートまで社員なんて摩訶不思議だ・・・。
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