ニート株式会社

長谷川 ゆう

文字の大きさ
上 下
10 / 12

金色ニート①

しおりを挟む

  「ケンたん♪部署は決まったの~?」
 食堂で何故かルリの卒論を書きながら、俺は珍しくコンビニのおむすびを食べているルリを見上げた。

  
  「やべ・・・」
 入社前からいろんな社員に会いすぎて金髪人事部に行く事をすっかり忘れていた。

   「1年に1度のおかかおにぎりは、おいしいね~♪2月までに卒論よろしく~♪」
  1年に1度のおかかおにぎり・・・。そういえばルリは秋になるとコンビニで買って食べている。


  4年の付き合いでも、分からない事だらけだ。卒業したらルリはパパの会社に入社する。都内だがもう会うのは難しくなる。


  しんみりしている俺を横に、おかかおにぎりを食べ終わったルリが、両腕を伸ばしのびをすると、こちらをチラッと見た。


  よく見ると、マリネさんと似ている凛とした丸い瞳をしている。

  「だ~いじょうぶ♪社会人になっても夏にはパパのクルーザー旅行にケンたんもお呼びするから♪じゃあ、私はこれから彼氏とデ~トに行ってきま~す♪」
   前言撤回。4年も付き合いがあれば、いろいろ分かる事もある。

 
  マリネさんと同じスラッとした腕をヒラヒラさせながらルリは学食を出て行った。

 
  あらかたルリの卒論を終わらせて、午後から来社する事にする。

 
   何度来ても、ロビーには誰もいない。今のご時世に物騒だと思いつつエレベーターで人事部のある18階に行く。


  よく考えたら、人事部の金髪の2人に会ったのは初夏以来で微妙に緊張してくる。


  18階のフロアは、半分がカシマたんが仕事をしているパソコンなどが置かれたオフィスで、半分が部屋になっていて「人事部」とだけ書かれた白いドアがあった。

    オフィスには誰もいない。

     
   アポすらとらずにこの会社には、何度も来ているがノックをするのに数分かかった。

   
  ノックをすると、数秒間がある。
「どうぞ」
   確かヤヨイたんと言う金髪ロングの女性の声だ。


  ドアを開けたとたん、俺はフリーズした。

   真ん中にパソコンが置かれたデスクにヤヨイたんの顔が見えない程の書類が山になっている。

   それは、会社としてはまともだが、その横にリクライニングのイスに座りパソコンでゲームをしている・・・しょうたんがいた。


  「あ、あの、部署を希望しに・・・」
やっと出た声を合図にヤヨイたんが、分厚いクリアファイルを持ってきた。


   「人事部は、ダメよ。私達、以前も良いましたが結婚前提ですので、ね、ショウたん♪」
   ヤヨイたんが振り向くと、ショウたんはこちらに見向きもせずに、ゲームをしながらうたずく。


   「営業が少し不足しているの。あなた、コミュ障っぽいけど短期間で、この会社の人と交流しているから、いけると思います。決まりです」
    コミュ障は認めるが、あっと言うまに決まった・・・。

   「では、来年の入社、心待にしております」
   ヤヨイたんがお辞儀をすると金髪の髪が短冊のようにキラキラ揺れる。慌てて、俺も頭を下げる。

   「宜しくお願いします」
 その間もショウたんのゲーム音は、止まらない。

     狐につままれたような気分で人事部を出ると、久しぶりにマリネさんがシックな白いスーツを来て歩いていた。


  「むふふ♪ケンたん、お久しぶり~♪部署は決まった?」 
   あいかわらず、スタイルの良い細身の体に髪は後でまとめているせいか凛としている。

   「はい・・・あの、でも、ショウたんがゲームしてました・・・」
    口から思わず出てからしまったと思った。仕事中のゲームなんて、告げ口になる。


  「あ~、ショウたん、ヤヨイたんのお給料で生活しているニートだから♪でも、社員ではあるけど、仕事はしてない!でも、会社の前で拾った時よりは、人間らしい生活してる♪」
   ニート?社員?拾う?頭が混乱する。


  「もうすぐ、3時だし、食堂でスイーツでも食べて話そうか?」
  マリネさんのペースにのせられて、食堂に向かうマリネさんの後を歩く。


  本当にこの会社は、ニートまで社員なんて摩訶不思議だ・・・。

    
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

TOUCH

廣瀬純一
大衆娯楽
体に触れると下半身を交換できる能力がある女性の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貧乏神の嫁入り

石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。 この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。 風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。 貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。 貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫? いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。 *カクヨム、エブリスタにも掲載中。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

おねしょ合宿の秘密

カルラ アンジェリ
大衆娯楽
おねしょが治らない10人の中高生の少女10人の治療合宿を通じての友情を描く

処理中です...