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うつ病ろろ①
しおりを挟むカシマたんやマリネさんの事が少しずつ
会社を来社するたびに、この会社の事が分かってきた。
・・・いや、むしろ分からなくなっているような。
講義がなくなった土曜日。
外は梅雨を乗り越えてカラッとした初夏になり始めている。
さすがに金髪人事部に顔をださなければと思って、ルリが「パパ」と毎年、夏は2週間は海外に遊びに行く。
夏と言っても、まだ初夏だが
「卒業旅行にニューカレドニアとハワイとフランス行ってくる♪ケンたん卒論は宜しくね♪」
卒業旅行で、なんだそのパリピは。
ルリとは違う学科だが、4年間の恩もあり図書館で参考書を借りてから来社する事にする。
ロビーにはあいかわらず人が・・・いた。マリネさんが雇ったのだろうか。
それにしては、上下赤いジャージに髪の毛は、ボサボサで受付に突っ伏して泣いている女性だ。
この異様な雰囲気にも慣れてきた自分が怖い。
とりあえず、放っておくのが1番。今日こそ金髪人事部に行くのだから。
「ケンたんんんんんんん~~!ケンたんんんんん~~!」
大号泣の大絶叫がロビーに響きわたる。
爆発したボサボサの髪の毛のすきまから見えるのは、涙でぐちゃぐちゃの化粧をしていない知らないけど女性の顔だ。
なのに声は聞いた事がある。
「あの、失礼ですが、どちら様で・・・?」
聞いてまずかった。その赤いジャージ女は、受付から全力疾走で俺に向かって走り出し、ひざをついて腰に両腕をまわして号泣しだした。
「ろろだよ~!ロリータファッションすら、化粧すら出来ない、ろろだよ~!」
え?は?マリネさんと初めて社内見学の時に会ったロリータファッションで会社を数百件落ちたプロミラングで日本3位の?
人が・・・顔が別人・・・。うさぎだったのが亀になってるくらい違う・・・。
「化粧、こわ・・・」
思わず口から出てしまった。ろろさんが、また大号泣する。
「ケンたん、ひどおおおおおおいいい~うわあああああ!」
女性を泣かせた事のない人生を送ってきた俺はおおいに動揺した。
その時だった。
ロビーのガタンッと自動販売機から音がした。藁をもすがる思いで見ると、リス、否、カシマたんがスポーツドリンクを両手に持ってこちらを見ている。
まずい・・・ルリのおかげでやっとカシマたんとは少しうちとけたのに、非常にまずい・・・。脂汗が背中をつたう。
俺のリクルートスーツが涙で、びちゃびちゃになる。
「ろろさん、今日はうつですかぁ?」
消え入りそうな声でカシマたんが俺に向かって言う。
「えッ?うつッ?」
動揺している俺をお構いなしに、カシマたんが俺達の所にゆっくり来た。
「ろろさん、今日はうつがヒドイなら談話室に行きましょう。野田さんも宜しいですか?」
とても優しく穏やかなカシマたんの声は俺の気持ちすら、落ち着けてくれた。
ロリータファッションのろろさんは、今は赤いジャージだが、どうやらうつ病らしい・・・。
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