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金色人事
しおりを挟む「ケンたん、金色お客様きてるよ~!」
食堂の窓際で、1人で1番安いハンバーグ定食を食べていたら、ルリがスキップしながら来た。
「金色お客様って、そんな知り合い知らないけど」
ここ数日、ニート株式会社の内定が決まったり、社内見学で、この世のどこにもない会社にあてられたのか、俺は疲れてた・・・。
「たぶん、叔母さんの会社からだと思う♪私は午後からパパのクルーザーで太平洋に行くから、ぼっち飯じゃなくて良かった、良かった!」
満足そうな顔をしたルリが、混みはじめた食堂から、出ていってしまった。
「ぼっち飯って・・・そうだけど、パパのクルーザーってどんだけ金持ちだよ」
独り言を言いながらハンバーグをほうばっていたら、周りの席がざわついた。
あきらかに俺に四方八方から視線の矢がつきささる。大学で身につけたのは、いかに同世代と目を合わせない技術だ。
なのに・・・。
顔をあげると、ヒップホップスタイルの黒いパーカーに黒いジャージをはいた髪色のみがキラキラ光る、恋人つなぎをした金髪カップルがいた。
ルリの言うとおり、金色お客様だ。
二人とも20代後半で無表情・・・というよりにらまれている。
女性は腰まである金髪にウェーブをつけてる。男性は短髪の金髪に金色のピアスを両耳にあけている。
正直、怖い。
「な、なにか・・・」
やっと出た言葉を合図にしたように、金髪カップルが、目の前に座る。
「ニート株式会社の人事部、ヤヨイです」
バサリッとハンバーグ定食の横に分厚いファイルを置く。
「同じく、ニート株式会社の人事部、ショウです」
見かけによらず名前がしぶい。と言うよりあの会社に人事部があった事に、俺はひたすら動揺した。
普通の会社なら当たり前だが。
「御社のマリネ社長が、勝手に内定を決めたそうですが、人事部にも意地があります。ね、ショウたん♪」
ヤヨイと名乗る女が話す。ショウたんが気になる。
「そうそう、いくらマリネ社長が自由勝手だろうが、会社の規定もありますので。ね、ヤヨイたん♪」
「はあ・・・」
よく考えれば、内定も合格も社内見学も順序がバラバラだ・・・。
ヤヨイたんが青いクリアファイルを開くと、突然の面接が始まった。
「名前は、野田ケン、普通ですね。大学はこちらの大学。偏差値は普通ですね。4年間に、サークル入ってませんが、なぜ?」
ヤヨイたんが、金髪をバサリッとかきあげながら聞いてくる。
「そんなに、興味がなくて・・・」
本音が出た瞬間、面接だという事を忘れて、冷房のかかった食堂で冷や汗をかく。
「普通だな。御社を志望した理由は?」
ショウたんが聞いてくる。
「貴社の自由な社訓と社長の自由な将来性のある可能性に惹かれ・・・」
よくつらつらと言葉が出てきたなと、自分でさすが数百社に落ちただけあると自分に感心する。
「普通だな」
ショウたんが、うなずく。
「面接は、以上です。人事部は18階にあるので入りたい部署があったら入社日までに希望を出して下さい、ケンたん」
真面目な顔をしたヤヨイたんが、ファイルを脇に抱えて席を立つ。
ショウたんも席を立つ。思わず俺も席を立つ。
「私達は、見てのとおり結婚を前提に付き合っているので、入社後、私達を邪魔する以外は、ケンたんの入社を楽しみにしております」
恋人つなぎをして、2人が斜め45度の礼をするのでつられて俺も頭をさげた。
「では、失礼。」
金髪カップルは、颯爽と食堂を去っていき、残ったのは俺につきささる食堂の学生達の視線のみ。
いろいろまぶしすぎる面接だ。
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