10 / 16
今日はスマホ没収日
しおりを挟むやばい・・・。
高校2年の健介は、公園のベンチに座り青い空を見ていた。
2学期の期末試験の勉強の最中に、スマホで学校の友人とLINEをしている時に、母親が部屋に突撃してきた。
年末からは、本格的な受験勉があるのに希望大学にはギリギリの偏差値なのだ。
母親は、鬼のように顔を青ざめて・・・いや、青鬼は絵本ではいい奴だ。コーラと夜食を部屋のローテーブルに叩きつけ、スマホを床に叩きつけた。
母親の腕力をなめていた。スマホの画面にヒビが2、3本入り画面が真っ黒。友人が消えた。
「何すんだ・・・」
言い返そうとしたら、母親が落ちているスマホをこれでもかと足で踏みつけ、ヒビが3本増えた。
「期末試験の勉強が終わるまで、スマホ没収!」
ヒビだらけのスマホをむんずと掴むと、母親はドアを勢いよく閉めた。
「マジか・・・」
健介は、今までのライフラインを絶たれた気がして、家の親機で友人にコトのてんまつを話したら、ゲラゲラ笑われた。
期末試験勉強期間は、あと1日もある。とりあえず、その日は勉強をしてベッドに入った。
手が何かを引き寄せようとしている。青鬼にとられたスマホだ・・・。
期末試験の勉強は、早めに終わらせていたので、日曜日の明日はする事がない。
健介は、空気スマホを持った形で眠りについていた。
とりあえず、バイトで稼いだ金と家のカギを持って外へ出た。
日曜日のせいか、どこも混んでいて、ファーストフード店で、ハンバーガーとコーラを買う。
手持ちぶさたで、周りを見ると8割の人の頭頂部だらけだ。みんなスマホに夢中で周りを見ていない。
「お待たせしましたあ~」
テイクアウトで頼んだ袋を、健介と同じくらいの年齢の女の子が持ってきてくれた。
この店、こんな可愛い女の子いたっけ?普段は、スマホを見ながら下を向いていたせいか気がつきもしなかった。
青鬼もたまには良いことをするなあと健介は、心の中でにやけた。
子供の頃から来ていた小さな公園に行く、少し肌寒くなったが冬の寒さではない。
ベンチに座ると、砂場を挟んだ正面のベンチに老人と息子くらいの男と小さな女の子が座っている。家族だろうか。
俺もいずれは、あんな大人になって老いていくのかなあと健介は、空を見た。
「うっわ 」
思わず声が出た。
最近、勉強ばかりとスマホばかりで、久しぶりに見る空が思いのほか、高くなっている。
スマホがなくて時間はよく分からないのに、うっすらと白い下弦の月が出ている。
「空って、こんなに綺麗だったっけ?エモい・・・」
健介は、首が痛くなるまで空を見た後、冷たくなってしまったハンバーガーを口にした。
まずい・・・。普段はスマホを見ながら適当に食べているせいか、味すらよく分からなかった。
これじゃ、青鬼の手作りの料理の方がウマイ。
「スマホないと、味覚まで冴えるのな」
独り言を言って、完食はした。
いつの間にか、目の前にいた家族がいなくなっている。
時間って、こんなにゆっくり進んだっけ?俺、生き急いでない?
夕日が、ゆっくりと落ちていくのを見ながら、今頃、友人達のLINEやSNSの通知がたくさん来ているだろうな、と思いつつ、スマホ1台で、人間関係は、あっさり途絶える。
俺がここにいる事も誰も知らない。何だか深く呼吸が出来る。
健介は、伸びをしてから家までゆっくり帰った。
玄関口でヒビがなおされたスマホを持ちながら、青鬼、否、青い顔をした母親が待っていた。
「健介に返そうと思ってなおして、電源いれたら通知が鳴りっぱなしなのよ、お友達、大丈夫かしら?返すわ」
友人関係を心配した母親からスマホを受けとると、健介は電源をoffにした。
「どうせ、明日会えるし、大した事でもないし、腹減った~」
健介は、動揺している母親の横を通りすぎ、リビングに行った。
カレーの匂いがする。今日は母親の料理を味わって食べよう。
窓から見える月が、街を静かに夜に変えていく。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる