家族まで

長谷川 ゆう

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第13話 姉妹(サユコ)

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 ずっと、ずっと羨ましかった。
社交的で誰とでも話せる双子の姉、マユコが。


  両親が交通事故で死んでショックの中、親戚達は、一卵性双生児の2人の7歳のマユコとサユコの今後でもめた。

  1人ずつ引き離して、養護施設まで入れる話を聞いた時は、サユコは姉のマユコの腕を強く抱きしめ泣いた。


 「サユコ、大丈夫。お姉ちゃんはサユコから離れない」
   内向的で自分の気持ちを言えないサユコの頭を撫でながら、姉のマユコは言った。


  親族争いが続く中、母親の妹夫婦が正式な手続きをとって7歳の冬に、2人は叔母夫婦の養女となる。


  優しく穏やかな母親とは違い、サバサバしている叔母になかなかサユコは慣れなかったが、穏やかな叔父に慣れて、いつの間にか、4人は家族になっていた。


   同じ高校に行きだした2人だが、姉のマユコは喫茶店でバイトを始める。


  「いくらお金は、いらないと言ってくれても学費くらいは払いたいから」
  姉のマユコは、そう言って大学と家の中間地点にある家族経営の喫茶店で、働きだした。


 サユコも働こうかと迷ったが、なかなか踏み出せなかった。


  大学に無事入学して、1年間の学費を見て流石のサユコも働く事を決めた。


 何でも姉のマユコに相談していたので、バイトの事を相談すると自分が働いてる喫茶店のキッチンのバイトを紹介してくれた。


  もともとサユコは、料理が上手い。共働きの叔母夫婦に代わりよく夕食を作っては、褒められた。


  喫茶店でのメニューも一週間もしないうちに全て覚えて出せるようになったほどだ。


  そんなある日、ホールで姉のサユコが親しげに話している男性に気がついた。いつも窓際に座り、本を読んでいる。


  サユコは、いつの間にか一目惚れをしていた。

  
  姉のマユコに相談すると、最初はからかわれたがキッチンとホールを田中さんと言う男性が来る日だけ代わってくれると言う。


   久しぶりに心が踊るようか気持ちになったサユコだったが、その数日後、姉のマユコが交通事故で亡くなった。


  喫茶店のバイトすら辞めてしまおうかとすら思ったが、50代の店長さんが「気持ちが落ち着いて、働きたくなったらおいで」と言ってくれた。


  叔母夫婦も明るいマユコを亡くしてショックを隠しきれていなかったが「私達にはサユコちゃんがいるから、大丈夫」と力なく笑ってくれる。


  姉の代わりにはならないが、育ててくれた叔母夫婦の支えにはなるはずだ。


  サユコは喫茶店のバイトを再開した。店長がキッチンを、サユコがホールを担当し、姉のいない寂しさを大学とバイトでうめた。


  土曜日には、窓際に田中さんが来る。


 最初は、ぎこちない態度だったが穏やかな人で話をしていると姉のいない虚しさが和らいだ。


  ある日、付き合いを申し込まれ戸惑ったが、姉のマユコに背中を押してもらっている気持ちにもなり、承諾した。


  大学卒業と同時に結婚した。

 「何だか、佐藤さん雰囲気が変わりしまね」
  田中真の一言が気になったが、まさか田中真が自分とマユコを間違えているなんて、夢にも思わない。

  
   それを知るのは、数年後サユコが一卵性双生児の娘を産んだ時からだった。



  
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