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27 今日も、ちびっこパトロールの音がする
しおりを挟むご近所に、本当に現代の子か、
もしや映画のAllways三丁目の夕日の高度経済成長の日本で生まれた子ではないかと見間違うほど、元気な兄弟がいる。
ちなみに、名前が分からないので私が勝手に小学校低学年くらいの弟さんを「坊っちゃん」とつけている。
かなり怖いものがあると自分で分かっております。
少し近い近所に引っ越してしまったのか、最近見ないので未婚だが小さな子供は変な意味ではなく、大人が想像しない事をするのでどんなちびっこでも、見ていて可愛いため、寂しい毎日だ。
三輪車を公道のど真ん中で、ジャリジャリいわせながらぶっ飛ばし、坊っちゃんは突然、道のど真ん中にチャリンコを乗り捨てる。
買い物から帰ってきた私は、乗り捨てられたチャリンコが道のど真ん中で、寂しく坊っちゃんの帰還を待つチャリンコを見て動揺。
かなり乗り回しているのか、夕日が当たるとボロボロなのでなおさら、切なくなりもする。
と、ともに大人の私は公道のよく自動車が通る道のど真ん中にある三輪車をはじに寄せた方が良いのか、今の時代、人様のお子さんのものを勝手に動かしてよいのかおたおたする。
私がおたおたしている間に、すばしっこい坊っちゃんは戻ってきて、私をチラリと見てまたジャリジャリ三輪車に乗り去って行った。
道でたまに会うくらいだったが、坊っちゃんをヒーローだと思った出来事があった。
私の母親は、とある体の病気で8年間に14回も救急車で運ばれている。
顔見知りの救急隊員まで出来てしまった私の救急車ギネス更新中だ。
泣きたい。泣きたい私はどうでもいいが、救急隊員のあの頼もしさには敬服する。
14回目、さすがに私の心は折れた。
よく考えてみたら、よく13回も救急車に同行したな私も。
救急隊員の人にお願いして、父親に連絡するのがやっとだ。
救急隊員の方は、頼もしく力持ちで冷静で家族の私にも気を使ってくださるが、搬送する患者が第1なので、去った後は家の中が悲惨なことになるのだ。
失礼な表現だが荒らされたか、物取りでも入ったかのように、めちゃくちゃになる。
泣きながら、何度もうずくまりながら、部屋をかたずけていた私に、ご近所お世話好きお婆さんが家に来た。
「◯◯さん?◯◯さん?」
チャイムを連呼しながら、心配する偽善者はどこにでもいるが、人様の家に救急車が来た時くらいは、そっとしておくのが礼儀だろうと思って泣いた。
鳴り続けるチャイムと、公道に響く自分の家の名前。
私はうずくまり、震えながら泣きながら動けなくなった。頭が真っ白だ。
その時だった。
カンカンカン!ジャリジャリ(たぶんうちの壁がけずれた音)カンカンカン!
坊っちゃんは、どこから持ってきたのか、小さな鉄パイプを持っていた。(鉄パイプってどこにあるんだろうか今の時代)
カンカンカン!とうちの前で音が止まったと思ったら、公道中に坊っちゃんの大声が響いた。
「うるせええええっ!だまれっ!」
正直、坊っちゃんの声の方がうるさいわと思ったが、お世話好きお婆さんが退散した。
その後もカンカンカン!と鉄パイプは、公道やうちの壁を鳴らしながら、坊っちゃんは走りまわっていた。
うずくまって泣いていた私は、よろつきながらも動けた。
ヒーローって映画じゃないんだな、自分にとっての人なんだなと想わせてくれた。
真夏だろうが、真冬だろうが、ジャリジャリいわせながら坊っちゃんは、チャリンコを走らせた。
とある夏に引っ越してしまったのか、見なくなり寂しさにかられていたが(恋人か)ある冬から、たまにうちの前をジャリジャリいわせながら、坊っちゃんのチャリンコが通る。
荒っぽい元気なヒーローのせいか、三輪車でもバランスをくずし、時々うちの壁がガリガリ削られて去っていくのだが、ヒーローだから良いのだ。
今日も夕方くらいに坊っちゃんのチャリンコのジャリジャリ、ガリガリが聞こえる。
今日もちびっこパトロールの音がする。私はその音だけで、平和で安全に暮らせるのだ。
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