19 / 48
19 今日も記憶がない
しおりを挟む虚弱体質で内向的なくせに、3才あたりから限界こえるまで頑張るタイプだ。なぜだ。大人になったのだから、もう少し調整しろと言いたくなるが、性格なのか変わらない。
疲労の限界がくると、時々、私は記憶がなくなる。まだ認知症ではないと思う。たぶん。
幼稚園の時、母親が月1でベターホームの料理教室に通っていたらしい。らしいと言うのは、幼稚園児の私には、母親がどこかへ消える日でしかなかった。
よって、軍隊式の厳しい子育てをする父親と土曜日の夜は2人きりだ。
いつも玄関から、少しお洒落をした母親が出て行き、冷たいアパートのドアをずっと見ていた。
とりあえず、幼稚園児の私が歩いて徒歩5分の場所に故人の祖父母も住んでいて、近所には、お友達と頼れるお友達のご両親もいる。
私はなんとか母親が消えても生きていける事を確認した後、記憶がなくなり、布団の中で横になっていた。
なぜ血族のそれも実父がいるのに、生きていくために祖父母とお友達のご両親を心の支えに幼心に思ったのか。
そして、たぶん夕食を食べ、お風呂に入り、パジャマを着て布団に入ったのにいっさいの記憶がない。
3才くらいでどれだけ心労なんだ、私。
拍車をかけるように、ある土曜日、生存競争を生き抜く確認をし、記憶をなくし、布団の中で眠っていた。
その頃から私は眠りが浅く、狭いアパートでの異常な静けさに、自衛隊なみの早さで飛び起きた。
和室でワープロ(当時はパソコンがなかった時代)を打っていたはずの父親の姿がなく、テーブルの上でワープロだけが無機質な音を立てていた。
その時、幼稚園児の私が1番に思った事は、大人になってから親に話しても笑われる。
「捨てられた!私は捨てられた!」
なぜだろう・・・幼稚園に普通に通い、異常に厳しいものの両親もいるのに、父親から他人を頼るなと叩きこまれた私は、捨てられたと本気で思い、とりあえず、1人でも生きていくために、夜の近所へ駆け出した。
海外なら、親が罰金ものだ。だが、ここは法治国家の日本。とりあえず、生きていかねば。と思った私は裸足で外を走り始めた。
今思えば、祖父母の家の方向に走っていた。向こうからなぜか笑いながら父親が来る。
「ゴミ捨ててきただけだよ、裸足でなにしてるの、あはは」
あはは、じゃない!捨てられたと思った幼稚園児の私は、さすがに大泣きした。またその後の記憶がない。
それから、辛いことがあるたびに、時をかける少女の逆バージョンで私は記憶がなくなる。
親の病院で疲れたひどい時なんかは「昨日の夜は何、食べたっけ?」と母親に聞き驚かれる。
もう故人が入所していた特養に入って3食つき、月1で内科の先生つきで、余生を読書でもしながら、ゆっくり生きたいくらいだ。
しかし、まだ残念ながらその年齢ではない私は、三つ子の魂百までもを実行し、疲れて限界を越えると、あれ?時間すぎたけど、私は何をしていたっけ?と今日も記憶がないのだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
趣味で占いの勉強始めました
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
最近ゲッターズ飯田さんの五星三心占いにハマり始め、そこから火が付き五星三心占いの元になっている四柱推命、西洋占星術、宿曜占星術、算命学、あと昔あった動物占いや六占星術などを読み漁っています。そのうち九星気学も見てみようと思う。
楽しくてしょうがないのよ。止まらないのよ。人の生年月日がやたら気になる術式発動中なのよ(笑)
まだまだ勉強し始めなので(占い歴2ヶ月くらい)個人鑑定とかはやってないよ。でもそのうち出来るようになれば楽しいよね!!
このエッセイは、私の周りの人のこの星持ってる人はこんな感じ!!を書きたい時に好きなだけ書く場所です。書きたいのよ(笑)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
捻くれ者
藤堂Máquina
エッセイ・ノンフィクション
コロンビアで過ごした四か月足らずをエッセイに書き起こしました。
ひねくれた自分と異常な学校方針、コロンビアの暖かい人々の中で起こる様々な出来事は、執筆中も継続したほど厄介な問題となっております。
海外企業との間に起こる私の滑稽さを見ていただければ幸いです。
足元からの変革:靴職人の挑戦と成功
O.K
エッセイ・ノンフィクション
靴職人の主人公は、海外からの安価な靴の輸入により売り上げが減少して困っていた。しかし、地元の素材会社が特殊な素材を開発したことを知り、その素材を使って世界で唯一無二の靴を作り上げる。その靴は世界的なブームとなり、地元経済の活性化や持続可能なファッションの先駆者として成功を収める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる