駆け落ちした愚兄の来訪~厚顔無恥のクズを叩き潰します~

haru.

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対峙

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  ケルヴィン叔父様達と話し合った末、結論が出た私はこの場にお母様を呼び出した。

  同じ屋敷にいるというのにいくら待っても中々現れない。もしかしたらこのまま部屋から出てこないつもりかと思っていたら、先日の暴れ狂った姿からは考えられない、夜会でも行くような美しく着飾った姿でお母様は現れた。

  執事からケルヴィン叔父様達の来訪は聞いていた筈だというのに何故か白々しい態度で微笑む。

「あら? ケルヴィン様やイザベラ様もいらしてたの? ふふふ、一体なんの話かしらね?」

  長き引きこもり生活で常識を忘れてしまったのか、待たせた事の謝罪や挨拶すらしないで席に着くお母様。

  その態度にイザベラ様は一瞬だけ口元が引きつり、その場の空気がピリつくのを感じた。

  元々完璧な淑女で侯爵夫人として義務や責任を立派に果たしてきたイザベラ様と、か弱い微笑みで全ての責任を投げ出して自分の事を守る事しかやってこなかったお母様では相性が悪すぎるのだ。

  互いに反りがあわないのか、顔をあわせる度に言葉の端々に嫌みが飛び交い、攻撃をする仲なのだ。

  まぁその主な原因は私だろうけど。

  お母様が一人安全な場所に引きこもり幼い私を見捨てた事がイザベラ様の逆鱗に触れ、今でもその事を許していらっしゃらないのだ。
  逆にお母様は私の母親でもないのに私を引き連れお茶会へ行ったり、ロブゾ家のお茶会を開催する私の手助けをする姿に怒りを募らせていた。

  ロブゾ家を乗っ取り、息子を失い嘆き悲しむ母親に成り代わろうとする悪女と。

「あら、随分と待たされたと思ったら伯爵夫人様は何か勘違いされたようね? 私達は話がしたくて貴女を呼んだのよ?」

  本日夜会の予定はなくってよ? と扇子で口元をあからさまに隠しながら告げるイザベラ様の瞳の奥には隠しきれない程の嘲りがあった。

「……っ!」

  顔をカッと赤らめたお母様は怒りなのか、それとも羞恥からなのか、涙を瞳に潤ませながら唇を噛んだ。

「イザベラ、その辺に」

「ふふふ……失礼しましたわ。少しハシャぎすぎてしまったみたいね」

  反論しようとするお母様の姿を見たケルヴィン叔父様は時間を無駄にはしたくないといわんばかりにイザベラ様を諌め、その場を納めた。

  怒りを隠そうともしないお母様は瞳に憎悪を宿してイザベラ様を睨みつけていた。

  その姿に私はイザベラ様に申し訳なくて居たたまれない気持ちになった。

  我が家の揉め事にイザベラ様は力を貸して下さっているというのになんという態度をとるの? お母様

  プライドだけは一人前のお母様に私は又も失望した。

「話が進まなくなるのでお止めください、お母様。」

  口から思わず漏れてしまった溜め息にお母様は私へ振り返った。

  何故自分を責めるのか、その呆れた表情は何なのか、恨みがましい表情を向けてくる姿を無視して私は話を始めた。

「ではお母様もいらっしゃった事ですので、先日の件への対処を話し合いたいと思います…………というよりロブゾ家当主の決定事項です」

「……え? ジュリエッタ? 貴女なにを……」

  突然の娘の言葉に戸惑うお母様

「当家とはもうなんら関係のない方ではありますが、アルバート・ロブゾと名乗る者が最近屋敷の周囲を彷徨いています」

「な、アルバートが来ているの!? ジュリエッタ! 何故、屋敷に入れてあげないの!」

  外の情報を知らなかったお母様は初めてあの男があれからも屋敷に現れていた事を知り、目を見開いていた。

  そして息子を無下に追い返している娘への怒りを募らせた。

「お母様、何度言わせるのですか? 私の兄は五年前に自らの意思で居なくなりました。その時点でアルバート・ロブゾは死んだも同然です」

「なんて事をいうの! 貴女はそれでも妹なの!? イザベラ、貴女ね!この子をこんな血も涙もない性格に仕立てたのは! 苦しい時に支えあえない家族なんて家族じゃないわ!」

「「「……………………」」」

  涙ながらに情を訴えるお母様。
  でもそれを貴女が言うの?

  呆れ返って言葉をなくす私達を見て、言い負かしたと錯覚したお母様は一瞬だけ口角を上げてほくそ笑んだ。

「では五年前に義務を放棄して我が家を窮地へ追いやったアルバート・ロブゾや五年間部屋に引きこもって伯爵夫人としての義務を放棄し、困っていた娘を無視したお母様は私の家族ではないという事ですね。……よくわかりましたわ」

  家族だから、母親だからと堪えてきた何かがプツリと切れた。きっとそれは私の中に残されたお母様への最後の情だったのかもしれない。

  冷めきった無表情で告げる私の言葉に今度はお母様が絶句していた。

「……ぁ、…………」

  私の五年分の怒りがようやく伝わったのだろう。
  真っ青な表情で微かに震えながら私から視線を反らすお母様へ最終通告を出した。

「認めて下さい、お母様。アルバート・ロブゾはもういないと。貴女の優秀な息子はもう何処にも居ないんです! というより初めからそんな人物居なかった。私達の目が曇っていたんです!」

  現実を見てください。
  そう言って私は執事がまとめた報告書を手渡した。

「…………っ………………」

  震える手で報告書を受け取ったお母様は報告書の内容を読み進めていく内、表情に陰りを見せた。

  最後のページへ進み、手や瞳の動きが止まったのを確認した私は「理解できましたか? あの男がどんな人間か」と問いかけた。

「うるさい、うるさい、うるさいうるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさいのよ! あんたはグチグチとっ! こんな嘘の報告書を作るなんてあんたは一体何を考えてるの!」

  報告書の内容を嘘だと決めつけ、私の頬をおもいっきり叩くお母様。その痛みに私はまたか、と思った。

「……っ!」

  先日お母様に扇子で頬を打たれていた私は動揺する事なくお母様を見据えた。

  だがイザベラ様は違った。
  可愛がっている私が頬を叩かれた事に酷く動揺していた。

「きゃぁ! ジュリエッタっ! や、やだ、どうしましょう。頬が赤く、赤くなってるじゃない! 誰か! 冷やす物を持ってきてちょうだい! 誰か!」

  ケルヴィン叔父様の制止を振り切って慌てて近寄ってきたイザベラ様は私の頬にソッと触れた。

  赤く腫れ、ジンジンする私の頬に濡れた布を当てるイザベラ様。

  扇子で打たれた時よりは全然平気なんだけどなぁ。
  内心そんな事を思っていた私はケルヴィン叔父様の心配するような視線に気がついた。

  恐らく執事から内密に報告を受けて先日の私とお母様のやり取りを知っていたのだろう。

  だから私とケルヴィン叔父様はお母様のこの癇癪に動じる事がなかったのだ。

  
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