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黒持ちへの周囲の態度
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慌てているリュシアスの大声に私が振り返るとそこには盗賊達の仲間で何処かに隠れていた筈の魔法を使っていた者がいた。それも驚く事にまだほんの5、6歳の小さな男の子がそこには居た。今にも倒れそうな身体で必死に立ち上がっていた男の子は私達を憎しみを籠った視線で睨み付けてきた。
「み、みんなをはなせ・・・。お、おれが・・・おまえたちを・・こ、・・ころ・・してやる」
身体をフラつかせながら右手に魔力を込め出した男の子。小さな火種が現れ徐々に火が大きくそして、火花のようなモノがバチバチと現れていた。
「落ち着いてください!彼等は突然私達を襲撃してきたので拘束しただけです!誰1人命を落とした者はいません!だから貴方も魔法を使うのは止めて下さい!」
幼い男の子に向かって私は彼等が悪い事をした為に捕まえたのだと説明した。だが私が考えていた善悪の区別がついていない幼い子供もとは違い、この世界で荒んだ暮らしをしてきた男の子はハッ!と鼻で嗤い、薄暗い視線を私達へ向けながら怒鳴った。
「おれたちはとうぞくだ!!!ひとからかねやたべものをぬすみ、おそいかかるのがしごとなんだよ!!」
「ですが・・・それは犯罪です・・・」
「アホか!・・・そんなことはしってる!でもおれたちだって、まいにちいきるかしぬかなんだ!」
「そ、それは・・・」
「だからこれがはんざいでもかんけいねぇ。おまえたちをころしてなかまをとりもどすッ!!」
辿々しい言葉で自分の意見をしっかり言う男の子。その意見は褒められたモノではなかったが、覚悟を持って本気で立ち向かってくる姿に私は胸が痛むのを感じた。すると男の子の感情につられて膨れ上がっていった火種は限界値に達して凄まじい音をたてて爆発していった。私は瞬時に男の子の周りに結界を構築した。そして私の背後にいる者達にも被害が出ないように結界をはった。すると凄まじい爆発音と共に風や木々が結界を傷つけていった。私達を睨み付けている男の子と4台の分の馬車や冒険者、そして私達にも結界を張っていた私は初めの広範囲な結界に苦戦してきた。
広範囲に結界を展開しているせいか、一つ一つの結界の強度が甘くなっていた。私が気がついた時には結界の至る所にヒビが入っていて、今にも結界が崩れそうな状況だった。
だか目を血走らせながら息を荒くしている男の子は2度目の爆発が上手くいかなかったを知ると地面に崩れ落ちながらも、もう一度右手に力を集めだした。
「やめなさい!それ以上は命に関わります!」
「・・・ッ・・・う・・るせ・・ぇ・・ッ・・」
もう怒鳴る元気すらないのだろう。掠れている声を必死に絞り出して、視点のあっていない瞳で睨み付けてくる男の子。その姿はまるで死すら恐れていないのではと思わせるような執念であった。その姿を目の当たりにした私は思わず後ろへと後ずさってしまった。
「リヴィ!!!」
そんな私を危険に思ったのだろう。少し離れた位置に居たラルフが一瞬にして私の前に立ち、目の前で本当に最後、命を懸けて力を絞り出している男の子を闇魔法で拘束をした。
「大丈夫?怪我をしてない?い、痛い所はない?」
私の身体を触りまくって怪我の有無を確かめていたラルフの姿は不安そうに表情を歪めながら私の心配をしていた。
「は、はい。魔力を消費しただけなので問題ありません・・・で、ですが・・・」
闇魔法・・・使っちゃったよ・・・
私がどうしようかと考えていると背後から女性の叫び声が聞こえてきた。
「きゃぁぁぁああああ!!!
な、何なのよ・・・それ!く、く、く、黒じゃないッ!!!いやぁぁぁあああ!」
振り返るとそこには、馬車の窓から顔を覗かせていたマリカさんが信じられない者を見るようにラルフを見つめていた。
ラルフの今の姿は魔法を使わずに身体のみで戦闘を行っていたせいかフードがとれて、本来の黒髪の姿が露になっていた。
ま、まずい・・・
これ以上の目撃者を減らす為に、リュシアスは慌ててラルフのフードを被らせ、闇魔法の拘束をとかした。そしてぐったりとした意識のない男の子を縄で拘束した。
「ふ、不吉だわ!!!私達まで呪われてしまう!!!いやぁぁぁああああーーーーー!」
私達が叫び続けていたマリカさんを落ち着かせようと側に近寄ると、鋭い視線で私達を制した。
「や、止めてッ!これ以上こっちには近づかないでッ!!!き、気持ち悪いわ・・・」
その言葉や視線に昔を思い出したのか身を固くして蹲ってしまったラルフ。私はそれを見て怒りが湧いてくるのを感じた。そしてマリカさんの制しの言葉を無視して私は馬車の窓まで向かって馬車の壁を思いっきり叩き、マリカさんの言葉を止めた。
「マリカさん・・・落ち着いてください。彼は黒持ちですが、貴女達の為に戦った命の恩人ではありませんか?・・・それなのにこの言葉ですか?それは酷すぎるのでは・・・ラルフが貴女に何をしましたか?黒持ちで貴女に迷惑をかけましたか?」
理不尽な態度に関しての私の止まらない質問と、冷静すぎる視線にたじろいだマリカさんは口ごもりながらも、反論してきた。
「い、命の恩人って・・・も、元はといえば黒持ちが馬車に乗ってたからこんな事が起きたのかも・・・。そ、そうよ!黒持ちだもの・・・呪いがそうさせたのね・・・。やっぱり不吉で不気味よ・・・」
「マリカさん!冷静に考えて下さい!黒とはただの色ですよ?そこに何か特別な力はありませんし、不幸な事が起きるなんて事はありえません!彼を見てください!貴女の言葉にあんなに傷ついているんです!ラルフは優しくて暖かい普通の男性なんですよ!」
マリカさんの目には混乱と恐怖そして怒りが混ざりあっており私の言葉は耳に届かず、虚ろな感じで言葉をブツブツと呟いていた。
・・・ダメだ。今はわかってもらえない・・・
生まれてきてからずっと黒への蔑みや嫌悪する言葉を聞いて、教え込まれてきたのだろう。その上、目の前で起きた戦闘に加え黒持ちや闇魔法を直接見た事で彼女の中にあった黒持ちへの感情や知識が頭の中から溢れてしまっているのだろう。
幸いラルフの闇魔法が使える事と黒持ちだという事はマリカさんと外に居た御者達にしか見られていなかった。御者達は私とマリカさんの会話を聞いていたのだろう。困惑して怯えている瞳で私達を見ていた。
「み、みんなをはなせ・・・。お、おれが・・・おまえたちを・・こ、・・ころ・・してやる」
身体をフラつかせながら右手に魔力を込め出した男の子。小さな火種が現れ徐々に火が大きくそして、火花のようなモノがバチバチと現れていた。
「落ち着いてください!彼等は突然私達を襲撃してきたので拘束しただけです!誰1人命を落とした者はいません!だから貴方も魔法を使うのは止めて下さい!」
幼い男の子に向かって私は彼等が悪い事をした為に捕まえたのだと説明した。だが私が考えていた善悪の区別がついていない幼い子供もとは違い、この世界で荒んだ暮らしをしてきた男の子はハッ!と鼻で嗤い、薄暗い視線を私達へ向けながら怒鳴った。
「おれたちはとうぞくだ!!!ひとからかねやたべものをぬすみ、おそいかかるのがしごとなんだよ!!」
「ですが・・・それは犯罪です・・・」
「アホか!・・・そんなことはしってる!でもおれたちだって、まいにちいきるかしぬかなんだ!」
「そ、それは・・・」
「だからこれがはんざいでもかんけいねぇ。おまえたちをころしてなかまをとりもどすッ!!」
辿々しい言葉で自分の意見をしっかり言う男の子。その意見は褒められたモノではなかったが、覚悟を持って本気で立ち向かってくる姿に私は胸が痛むのを感じた。すると男の子の感情につられて膨れ上がっていった火種は限界値に達して凄まじい音をたてて爆発していった。私は瞬時に男の子の周りに結界を構築した。そして私の背後にいる者達にも被害が出ないように結界をはった。すると凄まじい爆発音と共に風や木々が結界を傷つけていった。私達を睨み付けている男の子と4台の分の馬車や冒険者、そして私達にも結界を張っていた私は初めの広範囲な結界に苦戦してきた。
広範囲に結界を展開しているせいか、一つ一つの結界の強度が甘くなっていた。私が気がついた時には結界の至る所にヒビが入っていて、今にも結界が崩れそうな状況だった。
だか目を血走らせながら息を荒くしている男の子は2度目の爆発が上手くいかなかったを知ると地面に崩れ落ちながらも、もう一度右手に力を集めだした。
「やめなさい!それ以上は命に関わります!」
「・・・ッ・・・う・・るせ・・ぇ・・ッ・・」
もう怒鳴る元気すらないのだろう。掠れている声を必死に絞り出して、視点のあっていない瞳で睨み付けてくる男の子。その姿はまるで死すら恐れていないのではと思わせるような執念であった。その姿を目の当たりにした私は思わず後ろへと後ずさってしまった。
「リヴィ!!!」
そんな私を危険に思ったのだろう。少し離れた位置に居たラルフが一瞬にして私の前に立ち、目の前で本当に最後、命を懸けて力を絞り出している男の子を闇魔法で拘束をした。
「大丈夫?怪我をしてない?い、痛い所はない?」
私の身体を触りまくって怪我の有無を確かめていたラルフの姿は不安そうに表情を歪めながら私の心配をしていた。
「は、はい。魔力を消費しただけなので問題ありません・・・で、ですが・・・」
闇魔法・・・使っちゃったよ・・・
私がどうしようかと考えていると背後から女性の叫び声が聞こえてきた。
「きゃぁぁぁああああ!!!
な、何なのよ・・・それ!く、く、く、黒じゃないッ!!!いやぁぁぁあああ!」
振り返るとそこには、馬車の窓から顔を覗かせていたマリカさんが信じられない者を見るようにラルフを見つめていた。
ラルフの今の姿は魔法を使わずに身体のみで戦闘を行っていたせいかフードがとれて、本来の黒髪の姿が露になっていた。
ま、まずい・・・
これ以上の目撃者を減らす為に、リュシアスは慌ててラルフのフードを被らせ、闇魔法の拘束をとかした。そしてぐったりとした意識のない男の子を縄で拘束した。
「ふ、不吉だわ!!!私達まで呪われてしまう!!!いやぁぁぁああああーーーーー!」
私達が叫び続けていたマリカさんを落ち着かせようと側に近寄ると、鋭い視線で私達を制した。
「や、止めてッ!これ以上こっちには近づかないでッ!!!き、気持ち悪いわ・・・」
その言葉や視線に昔を思い出したのか身を固くして蹲ってしまったラルフ。私はそれを見て怒りが湧いてくるのを感じた。そしてマリカさんの制しの言葉を無視して私は馬車の窓まで向かって馬車の壁を思いっきり叩き、マリカさんの言葉を止めた。
「マリカさん・・・落ち着いてください。彼は黒持ちですが、貴女達の為に戦った命の恩人ではありませんか?・・・それなのにこの言葉ですか?それは酷すぎるのでは・・・ラルフが貴女に何をしましたか?黒持ちで貴女に迷惑をかけましたか?」
理不尽な態度に関しての私の止まらない質問と、冷静すぎる視線にたじろいだマリカさんは口ごもりながらも、反論してきた。
「い、命の恩人って・・・も、元はといえば黒持ちが馬車に乗ってたからこんな事が起きたのかも・・・。そ、そうよ!黒持ちだもの・・・呪いがそうさせたのね・・・。やっぱり不吉で不気味よ・・・」
「マリカさん!冷静に考えて下さい!黒とはただの色ですよ?そこに何か特別な力はありませんし、不幸な事が起きるなんて事はありえません!彼を見てください!貴女の言葉にあんなに傷ついているんです!ラルフは優しくて暖かい普通の男性なんですよ!」
マリカさんの目には混乱と恐怖そして怒りが混ざりあっており私の言葉は耳に届かず、虚ろな感じで言葉をブツブツと呟いていた。
・・・ダメだ。今はわかってもらえない・・・
生まれてきてからずっと黒への蔑みや嫌悪する言葉を聞いて、教え込まれてきたのだろう。その上、目の前で起きた戦闘に加え黒持ちや闇魔法を直接見た事で彼女の中にあった黒持ちへの感情や知識が頭の中から溢れてしまっているのだろう。
幸いラルフの闇魔法が使える事と黒持ちだという事はマリカさんと外に居た御者達にしか見られていなかった。御者達は私とマリカさんの会話を聞いていたのだろう。困惑して怯えている瞳で私達を見ていた。
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