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転生ヒロインの企み
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私は転生者。
しかも乙女ゲームのヒロインだった。
ユリシア・アルティス子爵令嬢。
乙女ゲームのヒロインで攻略対象者達の心の悩みを解決して仲良くなっていく王道ストーリーの主人公。
あのゲームはさまざまなイベントがあってクリアする事に好感度が上がる仕組みだった。
前世ではガチオタクだった友人の影響で乙女ゲームをやっていた。
だから私が特別乙女ゲームが好きだった訳でははい。
推しキャラがいる訳でもないし、ヒロインとして逆ハーレムを狙うような痛い思考もしていない。
もしもこの世界で何かを望むとすれば、たった一人自分だけを愛する男。絶対に私を裏切らない、逆らわない。
そういう男が欲しい。
抜け出せない。抜け出す必要のない愛に身を委ねて堕ちていってくれる、そんな男が欲しい。
....いや、違う。
私が落としてやりたい。ドン底まで...
そしてすがりつかせたい。
何処かにいないかしら?と思いながらずっと探していた。
理想の男を...
見つかりさえすれば何とかなると思ってた。
私の出生の秘密が力になってくれると思ってた。
そして乙女ゲームの学園生活が始まった。
攻略対象者達は私が望まなくても勝手に目の前に現れる。
ゲームの強制力なのかは知らないが勝手に知り合いになり、たまに話す関係になっていった。
だが攻略対象者も悪役令嬢もどこか私の知ってるキャラクターとは違った。
攻略対象者には悩みがあるような影は見られなかったし、悪役令嬢も全然悪い子ではなかった。むしろ良い子だったし、男女問わず生徒には慕われていた。
....もしかしたら悪役令嬢も転生者なのか?そう思った。
だけど逆ハーレム築いて国をダメにしている訳ではないし、ヒロインである私を敵視してもいなかった。
だから私に不利益が無いならと放って置いた。
そんな時だった。
以前から話す間柄だった攻略対象者のルーベンス・ヨルドラン侯爵子息が気になり始めたのは...
初めはただの真面目な男で面白味のない奴だって思ってた。実際、会話も本当に真面目でつまんなかったし。
だけど思ってしまったの。
真面目で、曲がった事が嫌いで、貴族としても人としても間違えた事のないこの男にとんでもない過ちをさせたらどんな表情になるのかしら?って...
誰にも許されない過ちを犯させたい。
そして私だけが助けを求められるそんな存在になりたい。
あの真面目な顔を崩してみたい...
そう思ってしまったの。
ふふふ...とても愚かで狂った考え方よね。
わかってる。だからあの男にも目をつけられたのよ。
まあ私にとっても良い協力者だったから不満はないんだけどね。
あの男は私の...いえ、この国と隣国の最大の秘密を何故か知っていた。
私がアルティス子爵家の本当の娘ではないという事を。
私の父親は隣国の現国王。
そして母親はアルティス子爵の妹。
だから子爵とは叔父と姪の関係なのだ。
私の母は若い頃隣国での夜会に出席する機会があったの。その時にまだ王子だった父と出会ったらしい。互いに婚約者のいる男女だったが何か惹かれあう物を感じた。そして止められない愛に堕ちていったそうよ?
母は何度も隣国へ足を運び、極秘に父との逢瀬を続けたそうだ。愚かにも若気のいたりで一線を越えてしまった.....私を身籠るまで。
まあその後の展開は察しがつくでしょ。
次第に大きくなる母のお腹。
子爵家では父親は誰だと騒がれ屋敷に閉じ込める事になった。
婚約は内々に破棄される事になり、密やかに私が生まれた。
その時に母は亡くなってしまったから仕方なく叔父である子爵が自分の子として育ててくれたの。周囲に悟らせる事なくずっと...
まあ、それだけなら王家は絡まなかったんだけど、私の父はちょっぴりお馬鹿さんだったみたいなのよ。
密かに母や私の事を見守り続けていた父は、密偵とのやり取りを書面に残していたらしい。そしてその書面を王妃様側の人間に見られて私の存在が知られてしまった。
しかもその時期が悪かった。
ちょうど父である国王陛下と王妃様との間で子供が生まれなくて側妃の話がでている最中だったのだ。
自分が子に恵まれずに苦しんで、しかも側妃の話まで出ているのに夫には娘がいると...
そりゃあ、女としても王妃としても許せないよね。
そんなこんなで王妃様は怒り狂い私へ暗殺者を送り込んできたらしい。それをこの国の侵入者として王家の影が捕らえた事で事態が発覚した。
そして父が事態を把握した時には全ての秘密がバレた。
王家にもユリシア・アルティス子爵令嬢が隣国の王の娘だと気付かれて、叔父である子爵にも私の父親が隣国の国王だと知らされた。
....あの時の子爵の狼狽えようは本当に憐れだったな。
妹は身分違いの恋か既婚者との恋をしたから言い出せないと思っていたのに、まさか王子に手を出されていたとは思いもよらなかったのだろう。
その日からまともに私と会話が出来なくなってしまった。
父と母のせいで重荷を背負わせてごめんなさいね、叔父様。
そして王妃様のした事を知った父は王妃様を断罪する事が出来なかった。
自分が裏切った事に後ろめたさがあったのだろう。
しかも自分の失態のせいでこんな事態になったのだから...
生涯私を王女として城には入れない。と父は王女に約束したらしい。その上で王妃の選んだ相手を側妃として娶ると決めた。だから私には手出ししないでそっとして置いてくれと約束させた。王妃様もそれに同意した。
だが父は王妃様を信じきれなかったのだろう。
国同士で今回の件を話す事になった時、父は迷惑かけた謝罪と共に私の身の安全を守って貰いたいと願い出た。
これは一国の王としては異常事態だろう。
他国の王に自国の弱みと取れる秘密を知られ、その上で守ってもらいたいなんて...
まあ隣国の方が財力も軍事力も農業、畜産、貿易全てにおいて勝ってたから言い出せた事なのだろう。
ディルデント王国にとって嬉しい条件を出して、私の出生の秘密を秘匿する事。そして危害が及ばぬように護りきる事を契約した。
それが私の...乙女ゲームのヒロインの秘密。
実は隣国のお姫様だったって事!
まあ乙女ゲームで全ての攻略対象者のルートをクリアすると隠れ攻略対象者として隣国の公爵様が現れるんだけど...そのルートで私の出生の秘密が明かされるんだよねー。
公爵様が私の中に父の面影を見つけちゃって色々とイベントが起きるのよ。
また色々やらかしちゃう王妃様を断罪とか...父との対面とかあるんだけど...
今の私には会う気なんて更々無い!
王女とかごめんだし。子爵令嬢で結構です。
まあ話を戻すけど...
私がルーベンス・ヨルドラン侯爵子息を手に入れようと決めて、協力者になったあの男は本当に恐ろしい奴だった。
私の出生の秘密を知ってるだけでなく、私も知らない王家の秘密を握ってるみたいで、王族を味方につけてあの茶番劇を起こさせた。
ルーベンスは私とあの男からあの茶番劇の話を聞かされて最初は怒りと嫌悪を露にしてた。
そしてそんな事は出来ないときっぱりと断った。
だけど王家からの正式な命令書と共に現れた第二王子の存在がルーベンスの信念を打ち砕いた。
自分が大切にしてきた。
人としての倫理観や正義、そして侯爵子息としてのプライドと自覚。
人としての間違った事はしたくない。
だが貴族としては王家の命令に逆らう訳にはいかない。
従うしかないのは自覚していたのだろう。
だが自分がその命令に従えば、確実に婚約者の人生を狂わせてしまう。
...ルーベンスは多くを天秤にかけて貴族としての自分を選んだ。正しくなくとも自分が侯爵子息として生きていける道を選択をした。
婚約者を踏みつけにする事で...
ふふふふふ....。
ルーベンスったらね、あの断罪の後、私が居るのも関係なしに号泣して嘔吐までしちゃったのよ。
「すまなかった...」「申し訳ない...」「俺は生きるに値しないクズ野郎だ...」
ずーっと自分を貶す言葉を吐いて泣き続けてたの。
まあ、あんなに優しい婚約者を陥れたんだもんね。
社交界でも学園でも好かれていた人を...。
きっと皆、ルーベンスのした事を忘れないわね...。
ルーベンスの状況はまさにドン底だった。
周囲の人達からは蔑んだ瞳で見られ、嫌われ、その上、自分が大切にしてきた物を全て失くしてしまった憐れなルーベンス。
だが涙が枯れるほど泣いても、食事が喉を通らなくても、悪夢を見る為眠れなくても、それでもルーベンスは死を選べなかった。
無意識に生きていたかったんだね...
誰かに救って欲しかったんだよね。この状況から...
だから救ってあげたの。
甘い甘ーい言葉で許してあげたの。
ルーベンスがした事を...。
ルーベンスがこの先生きる事を...。
「私は貴方を愛しているわ。」
「この先どんな事があっても貴方の味方。」
「仕方がなかったのよ。あれは...」
「侯爵子息として王家に従っただけ貴方は悪くないわ。」
「貴方の選んだ道は間違っていないわ。」
「私と一緒に生きていきましょう。」
「私が貴方を守ってあげるわ。」
ルーベンスはその言葉に、私の手にすがった。
私が地獄へと突き落とした張本人だと覚えている筈なのに...
怒りより、嫌悪より、憎悪よりも、自分が救われる道を選んだのだ。
自分を...婚約者を...不幸にした女の手を自分の意思で取ったのだ。
....きっとその瞬間がルーベンスが私に落ちた瞬間よね。
逃げ出せない。底の無い沼へと入り込んだ瞬間。
だからここからはただひたすらに甘やかしてあげる。
ドロドロに甘やかして、依存させて、私がいないと生きていけないようにしてあげる。
ルーベンスは私の物。
もう返してはあげられないの。
ごめんなさいね、悪役令嬢さん。
でも仕方ないわね。
私ヒロインだもの...ただ攻略対象者を攻略しただけ。
ハッピーエンドに辿り着いただけなの。
だから許してちょうだいね、これは必然だったのよ。
あ、でも貴女は大丈夫よね。
あの男が側にいるもの...。
あの男の執着は並大抵ではないから、きっと逃げ出す事は出来ないわよ。
どうか幸せになってちょうだい。
貴女があの男の望む幸せの中に居てくれないと皆が困っちゃう事になるのよ。
だからこれが皆が幸せになれる道。
ハッピーエンドなのよ!
しかも乙女ゲームのヒロインだった。
ユリシア・アルティス子爵令嬢。
乙女ゲームのヒロインで攻略対象者達の心の悩みを解決して仲良くなっていく王道ストーリーの主人公。
あのゲームはさまざまなイベントがあってクリアする事に好感度が上がる仕組みだった。
前世ではガチオタクだった友人の影響で乙女ゲームをやっていた。
だから私が特別乙女ゲームが好きだった訳でははい。
推しキャラがいる訳でもないし、ヒロインとして逆ハーレムを狙うような痛い思考もしていない。
もしもこの世界で何かを望むとすれば、たった一人自分だけを愛する男。絶対に私を裏切らない、逆らわない。
そういう男が欲しい。
抜け出せない。抜け出す必要のない愛に身を委ねて堕ちていってくれる、そんな男が欲しい。
....いや、違う。
私が落としてやりたい。ドン底まで...
そしてすがりつかせたい。
何処かにいないかしら?と思いながらずっと探していた。
理想の男を...
見つかりさえすれば何とかなると思ってた。
私の出生の秘密が力になってくれると思ってた。
そして乙女ゲームの学園生活が始まった。
攻略対象者達は私が望まなくても勝手に目の前に現れる。
ゲームの強制力なのかは知らないが勝手に知り合いになり、たまに話す関係になっていった。
だが攻略対象者も悪役令嬢もどこか私の知ってるキャラクターとは違った。
攻略対象者には悩みがあるような影は見られなかったし、悪役令嬢も全然悪い子ではなかった。むしろ良い子だったし、男女問わず生徒には慕われていた。
....もしかしたら悪役令嬢も転生者なのか?そう思った。
だけど逆ハーレム築いて国をダメにしている訳ではないし、ヒロインである私を敵視してもいなかった。
だから私に不利益が無いならと放って置いた。
そんな時だった。
以前から話す間柄だった攻略対象者のルーベンス・ヨルドラン侯爵子息が気になり始めたのは...
初めはただの真面目な男で面白味のない奴だって思ってた。実際、会話も本当に真面目でつまんなかったし。
だけど思ってしまったの。
真面目で、曲がった事が嫌いで、貴族としても人としても間違えた事のないこの男にとんでもない過ちをさせたらどんな表情になるのかしら?って...
誰にも許されない過ちを犯させたい。
そして私だけが助けを求められるそんな存在になりたい。
あの真面目な顔を崩してみたい...
そう思ってしまったの。
ふふふ...とても愚かで狂った考え方よね。
わかってる。だからあの男にも目をつけられたのよ。
まあ私にとっても良い協力者だったから不満はないんだけどね。
あの男は私の...いえ、この国と隣国の最大の秘密を何故か知っていた。
私がアルティス子爵家の本当の娘ではないという事を。
私の父親は隣国の現国王。
そして母親はアルティス子爵の妹。
だから子爵とは叔父と姪の関係なのだ。
私の母は若い頃隣国での夜会に出席する機会があったの。その時にまだ王子だった父と出会ったらしい。互いに婚約者のいる男女だったが何か惹かれあう物を感じた。そして止められない愛に堕ちていったそうよ?
母は何度も隣国へ足を運び、極秘に父との逢瀬を続けたそうだ。愚かにも若気のいたりで一線を越えてしまった.....私を身籠るまで。
まあその後の展開は察しがつくでしょ。
次第に大きくなる母のお腹。
子爵家では父親は誰だと騒がれ屋敷に閉じ込める事になった。
婚約は内々に破棄される事になり、密やかに私が生まれた。
その時に母は亡くなってしまったから仕方なく叔父である子爵が自分の子として育ててくれたの。周囲に悟らせる事なくずっと...
まあ、それだけなら王家は絡まなかったんだけど、私の父はちょっぴりお馬鹿さんだったみたいなのよ。
密かに母や私の事を見守り続けていた父は、密偵とのやり取りを書面に残していたらしい。そしてその書面を王妃様側の人間に見られて私の存在が知られてしまった。
しかもその時期が悪かった。
ちょうど父である国王陛下と王妃様との間で子供が生まれなくて側妃の話がでている最中だったのだ。
自分が子に恵まれずに苦しんで、しかも側妃の話まで出ているのに夫には娘がいると...
そりゃあ、女としても王妃としても許せないよね。
そんなこんなで王妃様は怒り狂い私へ暗殺者を送り込んできたらしい。それをこの国の侵入者として王家の影が捕らえた事で事態が発覚した。
そして父が事態を把握した時には全ての秘密がバレた。
王家にもユリシア・アルティス子爵令嬢が隣国の王の娘だと気付かれて、叔父である子爵にも私の父親が隣国の国王だと知らされた。
....あの時の子爵の狼狽えようは本当に憐れだったな。
妹は身分違いの恋か既婚者との恋をしたから言い出せないと思っていたのに、まさか王子に手を出されていたとは思いもよらなかったのだろう。
その日からまともに私と会話が出来なくなってしまった。
父と母のせいで重荷を背負わせてごめんなさいね、叔父様。
そして王妃様のした事を知った父は王妃様を断罪する事が出来なかった。
自分が裏切った事に後ろめたさがあったのだろう。
しかも自分の失態のせいでこんな事態になったのだから...
生涯私を王女として城には入れない。と父は王女に約束したらしい。その上で王妃の選んだ相手を側妃として娶ると決めた。だから私には手出ししないでそっとして置いてくれと約束させた。王妃様もそれに同意した。
だが父は王妃様を信じきれなかったのだろう。
国同士で今回の件を話す事になった時、父は迷惑かけた謝罪と共に私の身の安全を守って貰いたいと願い出た。
これは一国の王としては異常事態だろう。
他国の王に自国の弱みと取れる秘密を知られ、その上で守ってもらいたいなんて...
まあ隣国の方が財力も軍事力も農業、畜産、貿易全てにおいて勝ってたから言い出せた事なのだろう。
ディルデント王国にとって嬉しい条件を出して、私の出生の秘密を秘匿する事。そして危害が及ばぬように護りきる事を契約した。
それが私の...乙女ゲームのヒロインの秘密。
実は隣国のお姫様だったって事!
まあ乙女ゲームで全ての攻略対象者のルートをクリアすると隠れ攻略対象者として隣国の公爵様が現れるんだけど...そのルートで私の出生の秘密が明かされるんだよねー。
公爵様が私の中に父の面影を見つけちゃって色々とイベントが起きるのよ。
また色々やらかしちゃう王妃様を断罪とか...父との対面とかあるんだけど...
今の私には会う気なんて更々無い!
王女とかごめんだし。子爵令嬢で結構です。
まあ話を戻すけど...
私がルーベンス・ヨルドラン侯爵子息を手に入れようと決めて、協力者になったあの男は本当に恐ろしい奴だった。
私の出生の秘密を知ってるだけでなく、私も知らない王家の秘密を握ってるみたいで、王族を味方につけてあの茶番劇を起こさせた。
ルーベンスは私とあの男からあの茶番劇の話を聞かされて最初は怒りと嫌悪を露にしてた。
そしてそんな事は出来ないときっぱりと断った。
だけど王家からの正式な命令書と共に現れた第二王子の存在がルーベンスの信念を打ち砕いた。
自分が大切にしてきた。
人としての倫理観や正義、そして侯爵子息としてのプライドと自覚。
人としての間違った事はしたくない。
だが貴族としては王家の命令に逆らう訳にはいかない。
従うしかないのは自覚していたのだろう。
だが自分がその命令に従えば、確実に婚約者の人生を狂わせてしまう。
...ルーベンスは多くを天秤にかけて貴族としての自分を選んだ。正しくなくとも自分が侯爵子息として生きていける道を選択をした。
婚約者を踏みつけにする事で...
ふふふふふ....。
ルーベンスったらね、あの断罪の後、私が居るのも関係なしに号泣して嘔吐までしちゃったのよ。
「すまなかった...」「申し訳ない...」「俺は生きるに値しないクズ野郎だ...」
ずーっと自分を貶す言葉を吐いて泣き続けてたの。
まあ、あんなに優しい婚約者を陥れたんだもんね。
社交界でも学園でも好かれていた人を...。
きっと皆、ルーベンスのした事を忘れないわね...。
ルーベンスの状況はまさにドン底だった。
周囲の人達からは蔑んだ瞳で見られ、嫌われ、その上、自分が大切にしてきた物を全て失くしてしまった憐れなルーベンス。
だが涙が枯れるほど泣いても、食事が喉を通らなくても、悪夢を見る為眠れなくても、それでもルーベンスは死を選べなかった。
無意識に生きていたかったんだね...
誰かに救って欲しかったんだよね。この状況から...
だから救ってあげたの。
甘い甘ーい言葉で許してあげたの。
ルーベンスがした事を...。
ルーベンスがこの先生きる事を...。
「私は貴方を愛しているわ。」
「この先どんな事があっても貴方の味方。」
「仕方がなかったのよ。あれは...」
「侯爵子息として王家に従っただけ貴方は悪くないわ。」
「貴方の選んだ道は間違っていないわ。」
「私と一緒に生きていきましょう。」
「私が貴方を守ってあげるわ。」
ルーベンスはその言葉に、私の手にすがった。
私が地獄へと突き落とした張本人だと覚えている筈なのに...
怒りより、嫌悪より、憎悪よりも、自分が救われる道を選んだのだ。
自分を...婚約者を...不幸にした女の手を自分の意思で取ったのだ。
....きっとその瞬間がルーベンスが私に落ちた瞬間よね。
逃げ出せない。底の無い沼へと入り込んだ瞬間。
だからここからはただひたすらに甘やかしてあげる。
ドロドロに甘やかして、依存させて、私がいないと生きていけないようにしてあげる。
ルーベンスは私の物。
もう返してはあげられないの。
ごめんなさいね、悪役令嬢さん。
でも仕方ないわね。
私ヒロインだもの...ただ攻略対象者を攻略しただけ。
ハッピーエンドに辿り着いただけなの。
だから許してちょうだいね、これは必然だったのよ。
あ、でも貴女は大丈夫よね。
あの男が側にいるもの...。
あの男の執着は並大抵ではないから、きっと逃げ出す事は出来ないわよ。
どうか幸せになってちょうだい。
貴女があの男の望む幸せの中に居てくれないと皆が困っちゃう事になるのよ。
だからこれが皆が幸せになれる道。
ハッピーエンドなのよ!
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