前世聖女だった村娘は幸せを願う。~今度は自分の為に祈るんでよろしくね!神様ッ!~

haru.

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畑の収穫

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朝食兼昼食を食べ終えるとお花摘みに行きたくなった。

だがこれがまた難点だった。
神殿では当たり前だったトイレが家や村には存在しなかった。村人は自分の家の外に穴を掘り、その穴をトイレの代わりにしていた。しかも紙なんて高級品はなく雑草や木の皮を湿らせた物で代用していた。

......つまり不衛生極まりなかった。

私が生まれた頃、この村は異臭が凄すぎて家の中に居るのに鼻がひんまがりそうで、瞳からは涙が出た。

そしてその時私は決めた。
この件に関してだけは自粛するのは止めようと。
このままの状態で暮らすのはキツすぎるし、病の元になると判断したからだ。

だから私は全力で祈った。

神様、神様!この村の衛生管理どうかお願いします!臭いがキツいし、このままじゃ病気になっちゃいます!

神様、神様!どうかこの村の清潔を常に保った状態のままにして下さい!どうか...どうか...

赤ん坊はする事がないので、その日は 無我夢中で祈り続けた。

すると次の日からぱったりと異臭がしなくなった。
成長して外にお花摘みに行くようになり、外のトイレ擬きの穴を確認すると...

穴の中に詰まっている筈の物が消えていて、異臭も発していなかった。

神様、神様!どうもありがとうございます!
外がトイレなのは恥ずかしいけど、異臭が無くなってかなり快適です。

村人達はこの事態に首を傾げていたが、悪くなった訳ではないから良いか。と楽観的に考えて笑っていた。

いや、そんな風に流してくれるとありがたいけどさー。
受け入れるのが早すぎて心配になるよ。

だってあの異臭と異物が一日で消滅したんだよ?
奇跡だけど.....異常じゃない?!

まあ神様の見技だ!とか、聖女様がーーーとか言い出さないだけ良かったよ。

あれはのんきすぎる村人達だから成り立った事だろう。

気をつけて行動しなくては...


△▽△▽


家の裏庭にはどの家にも畑がある。
大きいとは言えない畑だが、各家庭で違った種類の野菜を作って村の中で交換しあっているのだ。

我が家はトマトとキュウリそしてじゃがいもとサツマイモを作っている。

芋類は冬場二、三ヶ月保存出来るので備蓄食材としてはかなり有能なのだ。だからどの家庭でも芋類は必ず一種類は作るようにしている。

今は夏場なのでトマトとキュウリが収穫出来るから私が食べられそうな物を畑へ取りに行く。

それと同時に暖炉の灰を畑に撒くのも私の役目だ。

よく理由はわからないけど、灰を畑に撒くと野菜が元気に育つらしい。まあ灰がゴミにならなくて済むから助かってはいる。

だから灰の入ったバケツと小さなスコップを持ちながら前日の灰を畑の土へと撒く。

それが終わってから野菜の収穫に向かう。

そしてその間に父さんとお兄ちゃんは庭で薪割りをしている。

「父さん達が見える位置に居るんだよ?気をつけて!」

「あんまり取りすぎちゃダメだからな!必要な分だけを取るんだぞ!」

心配性の二人は私が収穫に行く際はこうして見守っていてくれる。

手を振っている二人に見送られながら苦笑いで畑へと向かう。すぐ目の前だけど...

でもこれでも良くなった方なの。
少し前までは灰を撒いていたり、野菜を収穫してる私の後ろにピッタリとくっついて見守っていたから。

私が転ばないように...迷子にならないように...って。

だがその光景を見た母さんの雷で止めてくれるようになって、この距離が保たれているのだ。

母さんありがとう...。

それにしても最近お兄ちゃんが父さんの影響を受けて心配性に溺愛が足されてきた気がする。
ちょっと心配だ...



日差しがジリジリと焼けつくような暑さの中、ザルを小脇に抱えながら畑を散策する。

茎や葉があっても実がなっている物はそう多くない。

作物と作物の間を器用にすり抜けて踏まないように気をつけながら収穫できる物を探す。

トマトもキュウリも私より背が高いので下だけでなく上も忘れずに見なくてはいけないので首が痛くなる。

まあ私が埋もれてしまう程生い茂った畑じゃないから見渡すのも通り抜けるのも楽ちゃ楽なのよね。

それに毎日確認していると、明日はどこの何が収穫出来そうだ。とかわかるようになってくる。

いつもと同じ色の薄い小さなトマトと、痩せ細ったキュウリを収穫してザルにいれた。

やっぱりまだまだ質が悪いね...

土の状況を確認する為、地面にしゃがみこんで土を手に取ってみる。

湿気を含んでいない土がそこにはあった。
土の中には虫一匹居なかったので、栄養素がまた足りなくなっているのだと思った。

最近雨が降っていなかったから土がカサついてるなー。
また祈らなきゃ.....

神様ー。どうかお願い!雨を降らせて土に栄養を!
いつも感謝してます。どうもありがとー!

瞳を閉じて僅か一分足らず...
これで本当に良いのかって思うでしょ?

それがね!何と今晩は雨が絶対に降ります!

雨がたっぷりと降り、土に水と栄養が含まれる。
そして次の日太陽をいっぱい浴びれば土も作物も元気いっぱいッ!

だから明後日の収穫は今よりも少し良い野菜が期待できるかもね!

それに雨が降れば次の日に行く水汲みの回数が減る!
夜の間バケツや入れ物を外に出して置けば水が手に入る。

あとなんといってもお風呂ッ!!!
上から落ちてくる雨に全身を濡らせば、ちょっとしたお風呂になってサッパリするし、髪も洗えると思うの!

怒られるのが怖くて試した事はないけど...

だから雨を祈る事は一石二鳥ならぬ、一石三鳥なの!

夜の雨を想像すると楽しくて仕方なかった。

「ふふふふふッ....」

堪えきれなかった笑い声を口から漏らしながら収穫した野菜を家に持ち帰った。


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