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ー本編ー

悪夢の夜

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「貴様との婚約は破棄だ!!!私はここにいる愛するルーチェと婚約を結ぶ!」

ここは王家が主催している夜会の会場・・・きらびやかな人達と世界が広がる空間の中心に、怒鳴り声を撒き散らす王子様や側近達、無表情でそれを見つめる婚約者の令嬢そして、王子様の側には涙を瞳に浮かべている令嬢・・・

周囲の者達は何が起きているのか、わからずに行く末を見守る・・・そんな騒動の中、夜会の会場の隅で・・・
(うわぁ~、これが乙女ゲームのクライマックス?!)と浮かれている令嬢(モブ)がいた。

王子様達の御乱心にも動じず、表情を崩さない令嬢は「私に何か不手際でも御座いましたでしょうか」と冷静に対応していた。

王子様や側近達は自分達だけが醜態を晒し続けたいるのにも気付かずに、

「不手際だと!!!
お前は自分には何も非が無いと申す気か!」

「なんという女か!」

「己のしでかした事をかえりみる事さえもしないとは!!」

等々罵詈雑言を吐き続け、しまいには王子様の隣にいる令嬢を虐げた・悲しませたとかで謝罪しろ!と要求しだした・・・

「ここにいるルーチェは私の愛する女性であり、未来の王妃であるぞ!!!
少しは自分のした事の罪深さを感じるがいい!地に頭をついて詫びるのだっ!!!!!」

令嬢に対してあり得ない要求をする王子様とその王子様に同調する側近達に夜会の隅で浮かれていた令嬢(モブ)も、(え?これはちょっとヤリ過ぎじゃない?女の子に土下座させるの?)とドン引きし、周囲の者達も同様が隠せずにざわめきだした、その時・・・

「違いますっ!!!!
私には他に愛する人がいます。王子様とは婚約は出来ません!」

今まで涙目で王子様の隣で大人しくしていた令嬢が突然叫び声をあげて、青ざめながら凄い勢いで王子様から離れた。

会場にいた全員が、(今さら何を言ってるんだ、こいつ・・・)と思っていたその時、

「殿下っ!!!
今の言葉は誠でございますっ!ルーチェは私と婚姻いたします。どうかお許しください!」

会場にいた者達を掻き分けながら、やって来た男が叫び、令嬢を抱き締めた!
(何か凄い展開になってきたな~)と令嬢(モブ)が眺めていたら・・・

(ん?・・・何か見覚えのある顔・・・あ、あれ?うそでしょ・・・な、なんでそこにいるの?お、お、お、お、お父様)

そこに居たのは先程まで一緒に挨拶回りをしていた筈の父親だった・・・

ドラマチックな展開だと思っていたのが自分の父親がヒロインとパッピーエンド?するという悪夢の展開になり、動揺と意味のわからない恐怖に襲われて、震えだした体を側にいた友人達が支えて下さり最後まで見届ける事ができた。

「な、な、な、いきなり何を言っているのだ!ルーチェから手を離さぬか!!!」

同じく、動揺が隠せない様子の王子様達は、吃りながらも愛する女を取り戻そうと奮闘する。

「そ、そうですよ!婚姻と言いますが、貴方方は何歳、年齢が離れていると思っていらっしゃるのですか!!!!!」

「そうだ!そんな婚姻、不幸になるだけだ!」

「その歳で婚姻していない筈がない!後妻か?!それとも妾にでもするつもりか!」

王子様達は思い浮かぶ全ての暴言を告げていったが、お父様に抱き締められていた令嬢は強かった・・・

キッと王子様達を睨み付け、(不敬です。)

「私がこの方を愛したのです!他の方にとやかく言われる筋合いはありませんわ!!!
引っ込んでいらして!」

と、怒鳴り付け、

「・・・それに、私は何度も申し上げましたわ。婚約者を蔑ろになさらず、きちんと向き合った方がいいと、そして私には関わらないでほしいと・・・なのに私の話は何も聞こうとせずこのような場でこんな事を・・・うぅぅ。」

冷静な声を話をしていたかと思ったら段々と声が震え、泣き始めてしまった。

お父様はそんな令嬢を表情を隠すように自身の腕の中に引き入れ、何かを耳元で囁いている様子だった・・・

(え・・・泣きたいのは私の方なんですけど。)

そんな夜会会場カオスで遂にこの国の最高権力者(国王陛下)が現れた。

「これは一体何事だ。」

低音の重い声が会場に響き渡り、皆一同に固まってしまった。

誰よりも先に意識が戻り行動したのは王子様の婚約者である令嬢だった。

「陛下、発言をお許しください。」

「うむ、申してみよ・・・」

令嬢は先程あった婚約破棄の騒動から、土下座を要求された事(明らかに冤罪だと思われる)
問題の王子様の相手である令嬢は他に婚姻を結ぶ予定の相手がいる事(私のお父様)等々を詳細に説明していった・・・

夜会会場は段々と重たい空気に包まれていき、陛下は怒りで体を震わせ、そのオーラに当てられた王子様や側近達は恐怖で体を震わせた。

「・・・そうか。」

そう言って王子様達へ目線を向けると地面へ座り込んで震えているという、無様な様子だった

陛下は王子様と令嬢の婚約を破棄ではなく、白紙に戻すと宣言し、令嬢には後日王家から謝罪すると告げ、王子様達は衛兵に連れ出された。

一連の手際の良さに呆然としていた私達に、

「とんでもない余興を見せてしまったが気にせずに楽しんで行って欲しい・・・」

と仰って下さった。そして・・・お父様達には

「そなた達にも、迷惑をかけたな、もし本気で婚姻するのであれば余が力になろう・・・
その時は王城へ来るがいい。」

と言って去っていった。

お父様と令嬢は「感謝致します!」と頭を下げて陛下を見送っていた・・・

(え???陛下の御墨付き???
って事は、ほぼ決定じゃない?・・・・・・・
・・・?・・・お父様、あの子と婚姻するの?私と同じ歳の子と?・・・・・・え?・・・
・・・う、う、うそだよね・・・ゆ、ゆめかな?これ・・・)

お父様と令嬢がバルコニーに消えていくのを見届けて私は意識が遠退いていくのを感じた・・・

(ま、待ってよ・・・誰に誘われてもバルコニーには行くなってお父様が言ってたのに・・・・その子は連れ込むの?・・・・)

私の意識が完全に無くなり倒れ込むと友人達や周囲の方々が・・・

「「「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」

と悲鳴をあげ、一気にまた騒然とした空間へ戻った、そして、この日の夜会は『悪夢の夜会』をとして語り継がれる一夜になった。


・・・因みにお父様は娘が倒れた事には気付かずにイチャイチャとしていた所を知り合いに見つかり、娘の状況を聞き、青ざめながら家に帰ったらしい。







 
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