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~第一章~
オリヴァー家の変貌
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「アクア様、明日も仕事があるのですから本日はもうお休みになってください。」
夜も更にふけていきトロイから寝るように言われ、ジェイクからの悪の親玉疑惑を晴らせず先に寝ることになった。
ジェイクの疑うようなジト目に見送られて私は自分の部屋へと戻り眠りについた。
そして次の日、目覚めるとオリヴァー家はトロイの配下に置かれていた。
「アクア様は朝は果実水を好んで飲む。ここにあるミモナがお気に入りだ!」
「あ、ミモナ! 買ってこられたんですね。わかりました! ミモナの果実水とパンケーキを作りますね。」
黄色のラグビーボール型、甘酸っぱくて爽やかな味の柑橘系っぽい果実のミモナ。恐らく市場で買ってきたのだろう。紙袋いっぱいに入っているミモナをトロイは得意気に差し出し、それを嬉しそうに受け取って調理場へと移動するリエラさん。
え……私、まだリエラさんに笑いかけてもらった事ないのに何か仲良くなってる。
「おーい! 終わったぞ! リビングの掃除!」
ゴミ袋と雑巾片手にやってきたオリヴァーさんは額に光る汗を袖で拭いながら大声を出していた。
「こうやって朝から掃除っていうのも悪くないな!」
ゴミ袋の中には昨日出た酒瓶やつまみのゴミが入っていた。
「そうか。ならこれから掃除は毎朝しとけよ。アクア様に汚い場所は似合わないからな!」
「わかった。任せとけっ!」
トロイはリビングを小姑の如く見て回り、ゴミや汚れが無いかチェックしていた。
ちょっと! 私、ただの居候なんだけど!
家主に何命令してんのっ!?
「トロイ様! 朝の素振り5000回終わりました!」
外から木刀を持って汗だくのジェイクが爽やかに現れた。
え……トロイ様? 素振り5000回?
「終わったんならそのまま帰って来んな! 外で水浴びして汗と汚れを落としてこい! 部屋が汚れんだろ!」
「あ、失礼致しました!」
トロイの横暴な命令に何故かジェイクはきびきびと返事して外へ駆け出していった。
その後もあれやこれやと皆に指示を出していた。
あれ? 昨日のは夢だったのかな?
トロイが情報収集と称してオリヴァーさんとリエラさんを酔わせたり、念書書かせたり。そのせいでジェイクからの信頼が失墜してたような……
何でこんなに打ち解け……いや、第三師団みたいの騎士達みたいな部下になってんの?
隊長の命令は絶対っ! みたいな……。
1日経っただけで何でこんな事なってんのよ。
一体どんな事をしたらこんな……
現実から目を反らしたかった。
もう一度ベットに戻ろうかとさえ思ったが、階段の所に居るのをトロイに見つかり逃げ出すのは失敗した。
「おはようございます、アクア様! よく眠れましたか?」
「何したのよ、これ……」
私がこんなにも困惑して動揺しているのに、いつも通りに笑うトロイの笑顔が無性に腹が立った。
むっすーとした不貞腐れた顔で問い詰めるとーー
「ああ、この状況ですか? ジェイクは昨日の夜ちょっと男同士の話をしてわかりあった感じですかね? 俺に意見したいなら倒してみろって言ってやったんですよ。それに昨日も見た通り、ジェイクの親はちょっと頼りなさそうでしたので、本気でサマンサと縁を切って両親を守りたいなら強くなれ。と言ったら……まぁ何ていうか、私が鍛える事になりました。」
無理ーー! 15歳の少年に騎士団最強の男を倒せなんて不可能でしょ!
それに鍛える事になった。って何よ!
何で、オリヴァー家で部下? 弟子? 作ってんの!?
お願いだから子供相手に物理的なマウント取らないでよ?
将来ある若者なんだからね!
「しかもオリヴァーとリエラは昨日の事を覚えているらしく、自分の中に隠れていたサマンサへの恨みや憎しみを自覚したらしいです。それとアクア様への罪悪感もあるみたいで……あんな娘を育ててしまったという。」
「そ、それは……」
「だから罪悪感があるのなら罪滅ぼしになるよう、アクア様が幸せになれる手伝いをすればいいと言いましたら、このような結果になりました。」
「…………。」
「まぁ、結果オーライですかね。」
…………そう。結果オーライ……なわけ無いでしょー!
何で罪悪感からそんな事になるわけ!?
しかもオリヴァーさんとリエラさんね!
さん付けを忘れんな! 歳上だし! 私の居候先の家主だよ!
「ちょっと早めに手を打っておかなければならなかったので、これであの者達はあの女への情は断ち切れましたし、今後あの女の手先になる事は無さそうです。それにアクア様の生活環境もよくなられましたから安心致しました。」
「……腹黒っ。」
どう見ても計画的犯行なこの事態にせめてもの抵抗に小声で悪口を言うとトロイは「アクリアーナ様が苦手な腹の探りあいを担う内に鍛えられんですかね?」と言ってきやがった!
わかってるわよ!
私には貴族達との腹の探りあいや言葉の裏を読むのが苦手だって事は!
家族からもそれだけは成長しないって言われてたし!
王族なのに社交の基礎が出来ないなんて致命的だよ!
でもしょうがないじゃん!
優しくしてくれる人は親切な人だって思っちゃうし!
笑ってくれる人は好意的な人だって信じたいんだもん!
まぁそんな危なっかしい私をトロイがフォローしてたのは知ってるけど、私まで手玉に取られたみたいでムカつく!
「……だってアクア様、嘘つくの苦手ですよね?」
むーかーつーくー!!!
何その上から目線! 何なのよーー!
そして不満たらたらのまま朝食をとって仕事に向かった。
……リエラさん、私にも凄い優しくしてくれたし、笑ってくれた。
パンケーキもミモナの果実水も美味しかった。
何故かトロイも含めて5人で食べる朝食の雰囲気はこの家に来てから一番楽しかった。
それから何故か……本当に何でなのか! 私よりもオリヴァー家に馴染んでいて毎食一緒に食事を取るようになったトロイ。
しかもリエラさんに紹介してもらったルベンス商会で販売ルートと生産ルートを確保した私は『医療用コルセット』の販売を開始できた。
……『医療用コルセット』の売れ域は凄く良いんだって! 腰痛の患者さんにも喜ばれるから嬉しいは嬉しいんだけど……何か釈然としないのは何でかな?
トロイの笑顔が胡散臭いせいかな?
「ねぇ知ってる? この医療コルセットって治癒師のアクア様が腰痛持ちの平民の為に考え出してくれたんだって!」
「知ってる! 知ってる! わざわざ試作品を作って何度も使い心地を確認した上で完成したんでしょ!」
「青果店のライラや宿屋のフラビーもこの件に関わってたんだって! アクア様が凄い良い人だって皆に言ってたよね。」
「でも凄いよね。これ着けてると本当に少しだけ動くのが楽になるんだから。」
「しかも最近だと貴族達も買ってくんだろ? ルベンス商会に貴族の使用人達がやって来てるって噂だぞ!」
「うへー。彼奴等も買ってんのかよ!」
「貴族連中の間でも流行ってるらしいぞ。特に男が付けてるんだと。」
こうしてアクアの知らない内に『医療用コルセット』とアクアの功績は平民だけでなく、王族貴族にまで広まりっていった。
夜も更にふけていきトロイから寝るように言われ、ジェイクからの悪の親玉疑惑を晴らせず先に寝ることになった。
ジェイクの疑うようなジト目に見送られて私は自分の部屋へと戻り眠りについた。
そして次の日、目覚めるとオリヴァー家はトロイの配下に置かれていた。
「アクア様は朝は果実水を好んで飲む。ここにあるミモナがお気に入りだ!」
「あ、ミモナ! 買ってこられたんですね。わかりました! ミモナの果実水とパンケーキを作りますね。」
黄色のラグビーボール型、甘酸っぱくて爽やかな味の柑橘系っぽい果実のミモナ。恐らく市場で買ってきたのだろう。紙袋いっぱいに入っているミモナをトロイは得意気に差し出し、それを嬉しそうに受け取って調理場へと移動するリエラさん。
え……私、まだリエラさんに笑いかけてもらった事ないのに何か仲良くなってる。
「おーい! 終わったぞ! リビングの掃除!」
ゴミ袋と雑巾片手にやってきたオリヴァーさんは額に光る汗を袖で拭いながら大声を出していた。
「こうやって朝から掃除っていうのも悪くないな!」
ゴミ袋の中には昨日出た酒瓶やつまみのゴミが入っていた。
「そうか。ならこれから掃除は毎朝しとけよ。アクア様に汚い場所は似合わないからな!」
「わかった。任せとけっ!」
トロイはリビングを小姑の如く見て回り、ゴミや汚れが無いかチェックしていた。
ちょっと! 私、ただの居候なんだけど!
家主に何命令してんのっ!?
「トロイ様! 朝の素振り5000回終わりました!」
外から木刀を持って汗だくのジェイクが爽やかに現れた。
え……トロイ様? 素振り5000回?
「終わったんならそのまま帰って来んな! 外で水浴びして汗と汚れを落としてこい! 部屋が汚れんだろ!」
「あ、失礼致しました!」
トロイの横暴な命令に何故かジェイクはきびきびと返事して外へ駆け出していった。
その後もあれやこれやと皆に指示を出していた。
あれ? 昨日のは夢だったのかな?
トロイが情報収集と称してオリヴァーさんとリエラさんを酔わせたり、念書書かせたり。そのせいでジェイクからの信頼が失墜してたような……
何でこんなに打ち解け……いや、第三師団みたいの騎士達みたいな部下になってんの?
隊長の命令は絶対っ! みたいな……。
1日経っただけで何でこんな事なってんのよ。
一体どんな事をしたらこんな……
現実から目を反らしたかった。
もう一度ベットに戻ろうかとさえ思ったが、階段の所に居るのをトロイに見つかり逃げ出すのは失敗した。
「おはようございます、アクア様! よく眠れましたか?」
「何したのよ、これ……」
私がこんなにも困惑して動揺しているのに、いつも通りに笑うトロイの笑顔が無性に腹が立った。
むっすーとした不貞腐れた顔で問い詰めるとーー
「ああ、この状況ですか? ジェイクは昨日の夜ちょっと男同士の話をしてわかりあった感じですかね? 俺に意見したいなら倒してみろって言ってやったんですよ。それに昨日も見た通り、ジェイクの親はちょっと頼りなさそうでしたので、本気でサマンサと縁を切って両親を守りたいなら強くなれ。と言ったら……まぁ何ていうか、私が鍛える事になりました。」
無理ーー! 15歳の少年に騎士団最強の男を倒せなんて不可能でしょ!
それに鍛える事になった。って何よ!
何で、オリヴァー家で部下? 弟子? 作ってんの!?
お願いだから子供相手に物理的なマウント取らないでよ?
将来ある若者なんだからね!
「しかもオリヴァーとリエラは昨日の事を覚えているらしく、自分の中に隠れていたサマンサへの恨みや憎しみを自覚したらしいです。それとアクア様への罪悪感もあるみたいで……あんな娘を育ててしまったという。」
「そ、それは……」
「だから罪悪感があるのなら罪滅ぼしになるよう、アクア様が幸せになれる手伝いをすればいいと言いましたら、このような結果になりました。」
「…………。」
「まぁ、結果オーライですかね。」
…………そう。結果オーライ……なわけ無いでしょー!
何で罪悪感からそんな事になるわけ!?
しかもオリヴァーさんとリエラさんね!
さん付けを忘れんな! 歳上だし! 私の居候先の家主だよ!
「ちょっと早めに手を打っておかなければならなかったので、これであの者達はあの女への情は断ち切れましたし、今後あの女の手先になる事は無さそうです。それにアクア様の生活環境もよくなられましたから安心致しました。」
「……腹黒っ。」
どう見ても計画的犯行なこの事態にせめてもの抵抗に小声で悪口を言うとトロイは「アクリアーナ様が苦手な腹の探りあいを担う内に鍛えられんですかね?」と言ってきやがった!
わかってるわよ!
私には貴族達との腹の探りあいや言葉の裏を読むのが苦手だって事は!
家族からもそれだけは成長しないって言われてたし!
王族なのに社交の基礎が出来ないなんて致命的だよ!
でもしょうがないじゃん!
優しくしてくれる人は親切な人だって思っちゃうし!
笑ってくれる人は好意的な人だって信じたいんだもん!
まぁそんな危なっかしい私をトロイがフォローしてたのは知ってるけど、私まで手玉に取られたみたいでムカつく!
「……だってアクア様、嘘つくの苦手ですよね?」
むーかーつーくー!!!
何その上から目線! 何なのよーー!
そして不満たらたらのまま朝食をとって仕事に向かった。
……リエラさん、私にも凄い優しくしてくれたし、笑ってくれた。
パンケーキもミモナの果実水も美味しかった。
何故かトロイも含めて5人で食べる朝食の雰囲気はこの家に来てから一番楽しかった。
それから何故か……本当に何でなのか! 私よりもオリヴァー家に馴染んでいて毎食一緒に食事を取るようになったトロイ。
しかもリエラさんに紹介してもらったルベンス商会で販売ルートと生産ルートを確保した私は『医療用コルセット』の販売を開始できた。
……『医療用コルセット』の売れ域は凄く良いんだって! 腰痛の患者さんにも喜ばれるから嬉しいは嬉しいんだけど……何か釈然としないのは何でかな?
トロイの笑顔が胡散臭いせいかな?
「ねぇ知ってる? この医療コルセットって治癒師のアクア様が腰痛持ちの平民の為に考え出してくれたんだって!」
「知ってる! 知ってる! わざわざ試作品を作って何度も使い心地を確認した上で完成したんでしょ!」
「青果店のライラや宿屋のフラビーもこの件に関わってたんだって! アクア様が凄い良い人だって皆に言ってたよね。」
「でも凄いよね。これ着けてると本当に少しだけ動くのが楽になるんだから。」
「しかも最近だと貴族達も買ってくんだろ? ルベンス商会に貴族の使用人達がやって来てるって噂だぞ!」
「うへー。彼奴等も買ってんのかよ!」
「貴族連中の間でも流行ってるらしいぞ。特に男が付けてるんだと。」
こうしてアクアの知らない内に『医療用コルセット』とアクアの功績は平民だけでなく、王族貴族にまで広まりっていった。
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