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~第一章~

治癒師としての道

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  あれから目が覚めたギルマスと話し合い、いくつかの事が決まった。

  まず私の身分証として冒険者カードを作ってくれた。
  ギルマスとは治癒師として何度か会ってたから私の実力は知っている。だからそこは結構スムーズに手続きが終わった。
  何故かトロイアスも冒険者カードを作っていたけど……
  しかも私が改名したのなら自分も新たな名前にするとか言い出した。

  S級冒険者 アクア  治癒師 魔法使い
  S級冒険者 トロイ  魔法剣士

  これが私達の新しい肩書きだ。

  実力があるとはいえ、私達がS級冒険者になるとわかった時のオリヴァーさん達のギョッとした表情は凄かった。

「え、え、えふ、S級っ!?」

「い、いきなりありなのか!?」

  ギルマスいわく、私達の実力は冒険者も知っているから下手なランクはつけられないそうだ。

  まぁ魔力を増やし続け、王城の魔法書を全て読み漁って会得した元王女と騎士団最強の騎士だからね……
  そこは普通ではないと自覚済みです。

  それにギルマスは私達を冒険者ギルドに引き入れたかったみたいだし。

「これだけの能力があるんだ。欲しがって何が悪い!」

「ざけんじゃねぇぞ、クソジジィ!  この方は物じゃねぇんだよ!  おめぇごときが手に入れられるなんて思うんじゃねぇ!」

  堂々と言ってのけた姿はなんとも潔かった。
  トロイの怒りはともかく……

  誰かに必要とされるのは悪くない気分だ。

  トロイの怒りをさらりと交わしたギルマスは私をギルドの治癒師として在中してほしいと言ってきた。
  専用のブースを作るからそこで治癒魔法を使ってほしいんだって。

  でもな……孤児院や神殿も気になるんだけどーー。

「国から独立した冒険者ギルドなら貴族からも少しは守ってやれるぞ。」

「では、よろしくお願いします。」

  その言葉に惹かれた私は冒険者ギルドで働く事に決めた。

  私に恨みを持った貴族が私以外の人にも絡んでこないとも限らないし。子供達やシスター達に危険な目にはあってほしくない。
   
  孤児院には仕事のない日に遊びに行こう。
  美味しいお菓子を持って行こう。そう決めた。

  6日間で1日休み。
  給金は怪我のランクで料金が変わるシステムにするらしく金額リストを冒険者ギルドの事務員として働いているジュディアさんが作ってくれる事になった。

  しかもトロイまで冒険者ギルドに雇われる事になった。治癒師の護衛としてーー。

  いや、いるかな?  S級冒険者に護衛……

「アクア様の護衛以外はやらん。」

「…………護衛になるのなら、アクアに仕事として命じた任務はお前もこなす事になるが、それでもか?」

「そこにアクア様がいるのなら俺も行く。」

「任務はきちんとすんのか?」

「アクア様が命じればな。」

「……わかった。お前は今日からS級冒険者アクアの護衛だ。面倒事は起こすんじゃねぇぞ!」

「ああ……」

  そんなゆるーい感じで決めちゃっていいの!?
  
  私が口を挟む間もないほどあっさりと簡単に決まった。

  そんな仕事しなくていいと言う私にトロイは「自分の人生なので自分で決めます。」とか言いやがるんだよ!?

  何が私の命令なら何でも従うよ!
  自分に都合の悪い命令はシレーっと無視する癖に!

  こうして私の第二の人生、治癒師としての道は始まった。
 

△▽△▽


「ねぇ、一体何処までついてくるのよ。」

  冒険者ギルドを後にしてオリヴァーさん達と家に帰る筈だったのだが、背後には当然の如くトロイがついてくる。

  チラチラと背後を気にしながら気まずそうに歩いているオリヴァーさん達の様子も気になる。
  さっきから元気がないみたいだし……

  一先ずトロイをこの場から追い払おうと思った。
  どうせ冒険者ギルドでは毎日会う事になるんだし、今日はオリヴァーさん達を優先しようと思ったのだ。

「騎士団辞めた話やお父様達の伝言は気になるけど、トロイも住む所とか決めたり、必要な物の買い出しとかもあるでしょ?  だから送ったりはしなくていいよ。もう王女じゃないし、今日はオリヴァーさん達もいるから……」

  優しく言ったがトロイには私の真意が伝わった筈だ。

  ーー問い詰めるのは後日にするから今日の所はさっさとどっか行って!

  だがトロイはめげなかった。
  ニコニコと胡散臭そうな笑顔で微笑みながら……

「ああ、お気になさらず。護衛の意味もありますが、私の家もこっちなので……」

「はぁ?  え……トロイ家あるの?」

「これでも第三師団長でしたから金はあるんですよ。」

「でも、え?  家?」

  どうなっているのかわからずに歩き続けていた。
  どんどんとオリヴァーさんの家に近づきながら……

「いや、何処なの?  トロイの家って!」

  嫌な予感がして、痺れを切らせた私が叫ぶと「あ、此処ですよ、此処……」といって指差した場所はオリヴァーさんの隣の家だった。

「は、は?  え……此処に住んでた人達は?」

「あ、何か息子さんの精神状態を改善したいとか言って引っ越しされましたよ。」

「精神状態……って!  え!?  」

  咄嗟に思い浮かんだのはさっきの男達だった。  
  ジェイクに確認しようと顔を見たら、気まずそうな表情で頷いていた。

「護衛にもちょうどいいと思いまして、即金で買っちゃいました。」

  楽しそうに笑っている筈なのにギラついた瞳で見つめてくる姿は凶悪な肉食動物そのもので、私は狙われた獲物になった気分だった。

  オリヴァーさん、ジェイク……そしてリエラさん。
  私のせいで隣人がとても危険な奴になったみたいです。
  


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