妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.

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~第一章~

男達の事情

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「何やってるんだ!」

「止めろっ!」

  トロイアスを止めようとしていたら遠くから慌てて駆け寄ってくるオリヴァーさん達の姿があった。

  息を切らしながら私の元へやって来た。

「はぁ、はぁ、はぁ、……何の騒ぎだ。これは……」

「はぁ、はぁ、怪我してない?  アクア」

  私の前に立つオリヴァーさんと、私の横にやって来たジェイクはトロイアスを睨みつけていた。

  あ、怪しいけど違うの!  
  明らかに加害者っぽい感じだけど……

「あ、あのすみません、騒ぎを起こして……あの人は私の知り合いです。」

「知り合い!?」

  信じられないと怪訝そうな表情で見つめてくる二人にこっそりと伝えた。彼はアクリアーナの護衛騎士だと。

「……え。騎士……?」

  騎士がこんな街中で民に脅しをかけてるのか?

  彼等の目がそう言っていた。
  気まずくて目を反らしたかったがトロイアスの名誉回復の為、先に突っかかってきたのは向こうだと伝えた。

「酔っぱらいはわかるけど……何であの人がアクアに突っかかるの?」

「ケビン一体何やってんだ、お前……」

  すると知り合いなのか、オリヴァーさん達は腰を抜かしていた男達に話しかけた。

「な、何って、俺達はあんた達の家が心配で!」

「サマンサちゃんが居なくなったと思ったら、変な小娘が住み着いてるみたいだったから……ちょっと問い詰めてやろうと思って……」

「ああ゛!  だと?  アクア様に何しようって言った?  もう一辺言ってみろよ!」

  怒りに任せてチンピラの如く絡んでいくトロイアス。

  口悪ッ……!
  きっと騎士団抜けてトロイアスも箍が外れたんだね。

  だけどそれだと話が進まない為「下がってて、トロイアス。」と言った。

  涙目でへたりこんでいる男達が少し憐れになったのだ。
  オリヴァーさん達の知り合いみたいだし。

「承知いたしました、アクア様!」

  後ろに下がったトロイアスを確認して、私達は話し出した。

「で、何でアクアに絡んだんだ。サマンサは勝手に家を出ていったんだ。アクアは悪くない。」

「そうだぞ。むしろアクアは姉ちゃんが引き起こした問題の被害者だ。」  

  オリヴァーさんは彼等がオリヴァーさんの家の近所に住む家の息子達だと説明してくれた。
  サマンサに恋い焦がれていた男達だと……

  呆れたような申し訳なさそうなジェイクの表情を見る限り、あの人達は誑かされて捨てられたって所かな?

「だが!  サマンサが俺に何も言わず居なくなるなんてありえない!」

「そうだ!  サマンサちゃんは俺の……俺達の…………」

  俺達の……何!?  その先は?
  気になるでしょ!  言ってよ!

  するとジェイクが言葉のつまった男の変わりに喋った。

「俺達はサマンサの恋人だって言いたいのか?  それは違うよな。……あいつにはそういう奴沢山居たもんな。デートすらまともにしない癖に欲しい物を貢がせるだけの男。……お前らもそうだよな。」

「うっ……ち、違っ……」

「サマンサちゃんは優しいから一人に決められなかったんだ!」

「妄想もここまで行くとどうしようもないな。」

  サマンサは良い子だ。そう言い続ける男達。

  そして娘のそんな一面を知らなかったオリヴァーさんは「み、貢がせるだけの男?」と声を震わせて息子の顔を見た。冗談だと言ってほしくて……

  だがジェイクは容赦なく真実を告げた。

「現実を見ろって言ったろ!  あいつは子供の時から自分の見た目の良さをわかってた。どうすれば相手が自分の言う通りに動くのか、どんな仕草や行動が効果的か。ここ二、三年は本当にタチ悪くて本当、詐欺師みたいな真似してたよ。」  

「さ、詐欺師……?」

「騙せる奴なら誰でも……取れる物なら容赦なく奪ってたよ。俺も何回被害者の知り合いに相談されたり、文句言われたか。」

  信じられないのか、青白い顔をしながら無言で首を横に振っていた。

  ……因みに私は婚約者と身分を奪われましたが。
  まぁ、それに関しては元々あの子の物だったみたいだし、私に文句を言う権利はないか。

  オリヴァーさんもこれ以上は聞けないだろうし。
  そう思って黙っていると、側に控えていたトロイアスが憎しみのこもった低音の声で怒りを告げた。

「お前の娘は最低最悪のクズだ。アクリアーナ様の婚約者を寝取った上で夜会に乗り込んでアクリアーナ様に恥をかかせた。真実なのかもしれないが、人前で話すべきではない事を告げた。自分が優位に立つ為だけに……人を操る為だけに……アクリアーナ様の存在を利用した。」

「…………ッ!」

「俺はあの女を決して許さない。俺の主を傷つける人間は必ず排除する。」

  あの日の事を知ってるかのように怒るトロイアスの態度に驚いた。

「トロイアス…………知ってたの?  私がーー」

「陛下より連絡を受け、直ぐに戻って参りました。伝言も預かっております。あの日は側におらず申し訳ございませんでした。……私が側に居ればそんな小娘ども惨殺致しましたのに……」  
    
  私があの日の事を説明しなくてもいいように、言葉を過った。

  お父様がトロイアスに連絡を取ったの?  それも伝言って何?  私には何も言ってくれなかったのに……

  …………いやいや惨殺って。それはまずいから。
  そもそもトロイアス夜会に参加した事ないよね!
  平民だし、ダンス踊れないからっていつも断ってたよね!

  ジト目でトロイアスを眺めると、平然とした顔で「夜会中は毎回会場の外の警備を担当しておりました。アクリアーナ様の危機には必ず駆けつけられる位置でございます。」と言ってのけた。

  ちょっと自慢気なのがムカつくな。
  どうせなら会場内で護衛してくれたら良かったのに……

「まだまだ未熟者故、夜会でアクリアーナ様がご婚約者様抹殺対象No.1のクソ餓鬼とダンスする姿を見るのが心苦しかったのです。思わず剣を手に取りそうなほど……なので会場内は出入り禁止と陛下がお決めになられました。」

  堂々と言う事じゃないよね。
  隣国の王子相手に不敬すぎだから!  というより隣国から危険人物としてリストアップされるよ!  

  護衛騎士が出入り禁止なんて聞いた事がないよ。

  ニコニコと楽しそうに笑うトロイアスを呆れて眺めていた。


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