上 下
24 / 34
幼少期編

遠い昔の話

しおりを挟む
ドラゴンは治癒魔法が効いてきたのか、呼吸が安定してきた。

『痛いの治ってきた・・・ありがとう。』

・・・よかったね。安静にしてるんだよ? 

『心配しなくても大丈夫だ!!!
そいつはドラゴンだ!角さえ抜ければあとは勝手に治っていく。図太い生命力なんだよ!ドラゴンって奴は・・・』

え?ヴォルフ、ドラゴン知ってるの?

『あぁ・・・知ってる。恐らくそいつの母親もな。』

『母上を知ってるの?・・・あのね、ずっと眠ってるの・・・助けて・・・どうしても起きないの』

ドラゴンは瞳からボタボタと涙を溢した・・・

『はぁ・・・心配しなくていい。俺が起こしに行ってやる・・・少し話さなくてはいけないようだしな。』

ヴォルフは怒っているようで・・・身にまとっている雰囲気がすごく重たい。
息をするのも苦しくなるような圧力だ・・・

私の事を心配そうに見ているレクスとモーガン隊長達に事情を説明した。

「この子の母親がずっと起きないんだって、それでヴォルフが知り合いだから起こしに行くって言ってるの・・・。」

・・・グイッ。後ろにいたドラゴンが私の背中をつついた・・・

『あのね、一緒に母上の所に行ってくれる?』

目をウルウルさせながら私を見つめる・・・

うッ・・・ドラゴンってモフモフとは違うのにその目やツルツルした鱗が好きになってきた。
うふふ~。可愛いなー。
お母様の所か・・・うん。良いよ~。一緒に行こうか!!!

私は安心したのか一気に魔獣愛が出てこようとしていた。

・・・トントン。肩が後ろから叩かれた。

「リーナー?一緒に行くの・・・?説明は?」

あ!また怖い顔をしてる・・・。

「・・・あのね、ドラゴンが・・・」

・・・・・・キーーンッ・・・・・・・・・

え?何か頭がグラグラする・・・

「ッ!リーナッ!!!」

レクスが私を引き寄せて抱き締めた・・・

何か周りの風景が歪んで見える・・・足も地面についているかわからない。

「リーナ・・・捕まってて・・・」

レクスも苦しそうに話ながら力を強めた・・・

私はレクスにしがみつきながら、訳のわからない気持ち悪さにたえた・・・

・・・・・・キーーンッ・・・・・・・・・

はぁ・・・頭が痛いのが治った・・・

「大丈夫?リーナ・・・痛い所はない?」

「・・・大丈夫・・・レクスは?・・・」

互いにケガをしていないのを確認して、とりあえずはホッとした・・・

周囲を見てみると岩のような物に囲まれていて、見た目や雰囲気は洞窟だ・・・
そして、今いる所には道があり、その先には光が見えるが、あれが外へ続いている道なのかもしれない。


『突然連れてきて悪かった。どうしても他の者達はここに連れて来る訳には行かなくて・・お前達なら問題ないかと思って無理矢理連れてきてしまった。巻き込んですまない・・・』

突然後ろから申し訳なさそうな声が聞こえてきたと思ったらヴォルフが話しかけていた・・・
側にはドラゴンもいて、キョロキョロを辺りを見回してる・・・

え?今のこの状況はヴォルフがやった事なの?連れてきたってここはどこ?!

私がこの状況に混乱していると側にいるレクスが、「え?!声が聞こえる・・・」と言ってる

『それは俺の声だ・・・。そいつの母親が作った特別な空間だから話せるのだろう・・・
貴重な事だぞ・・・・・・まあ、俺と契約を交わせば、俺とだけは話せるようになるだろうけどな。』

え?ヴォルフの声がレクスに聞こえてるの?!

ヴォルフは言うには・・・ここはドラゴンの母親が作った聖域で、その母親の寝床だそうです。

ドラゴンって凄いんだな~と感心していた私に
ドラゴンの母親とヴォルフについて教えてくれた・・・

遠い、遠い昔、この世界が創世された時、創造主はこの地に魔獣や獣達を作った・・・
魔獣達は魔力は持っているが元は獣の為、普段から食べる事と寝る事だけを繰り返す生活を送っていた。
それは自分達の生活に興味は無かった為であり、そのせいなのか文明が発達せずに、この世界は何の成長もしなかった・・・
その様子を嘆いた、創造主が、魔獣達の生活を向上させる為にある生き物を創造した。それが人間だった・・・人間は知能を持った生き物で好奇心と知識欲にあふれていた。
そのお陰か、凄い勢いで成長し文明を作り上げていった。しかし人間は支配欲も強く・・・人間同士の争いに加えて、魔獣達を支配する事を考えるようになった・・・。
人間の文明の発達は凄まじく、従属させる魔道具を作るようになってしまった。そして、いつの間にか人間が魔獣を奴隷のように扱い虐げるようになっていった。
その事に怒った創造主は三体の神獣を作り出し、魔獣が安心できるまで守護するように命じた・・・。(あと、従属させる魔道具は全て破壊するように・・・言われてるんだって。)
そして、創造主は魔獣と人間が本当に心が通じあった時だけ一緒に生きていけるように契約をという力を作った。

その三体の内の二体がヴォルフとドラゴンの母親なんだって!!
でもこの話は遠い昔の話で、今は創造主からも、問題が起きなければ、自由に過ごしていいと言われている(後継者を作る事を条件に。)から気にするなって言われた・・・。

いや!無理だよね?だって神獣様だよ?!

『でもお前いつの間にか敬語とれたよな・・』

ハッ!本当だ・・・いつの間に・・・。
気づかなかった・・・


因みに三体の神獣のは・・・

・黄金のドラゴン
(力を持った常識を知らないアホ)

・白銀のヴォルフ

・緋色のフェンリル
(夢みがちで猪突猛進な馬鹿犬?)

力関係は魔力の色と同じで、金→銀→赤

ヴォルフはずっと個性の強い神獣達に囲まれて毎日尻拭いの日々だったそうです。
よって本来なら関わりたくは無いとの事!

・・・けど、ほっておけないんだろな~フフフ

ヴォルフは今まで迷いの森の入り口付近で他のヴォルフ達に紛れて普通に暮らしていた・・・
(100年前に後継者も育て終わっていて今は、自由気ままな生活なんだって!)
でも、「黄金のドラゴンには常識が無い!!!きっとこの事態もあいつが何かやらかしたに決まってる!」とヴォルフは憤慨している。

ヴォルフとドラゴンに導かれるまま洞窟の内部を歩いていると・・・

『この先だよ!母上がいるの!・・・・・・』

ドラゴンが凄いスピードで走り出していった。

『はぁ・・・いいか。覚悟しておけ・・・この先にいるのは常識を知らないアホだ。何が起こるかわからないぞ・・・』

「え?!それは大丈夫なのでしょうか?」

1番力を持っている方が常識を知らないアホって・・・怖ッ!
一体何が起こるって言うの?!
脅さないでよ・・・

私達は不安で少し足取りが重くなりながらも歩き続けて洞窟の最奥までたどり着いた・・・
そこにはドラゴンとその母親らしき眠っているドラゴンがいた。

うわあ~、ドラゴンも大きいと思ったけど、お母様はその倍だねー。
金色の鱗もお母様の方が濃いな・・・

私とレクスが神獣・黄金のドラゴンに圧倒されてぼけ~ッとしていると・・・ヴォルフが、

『起きろーーーーー!!!!!
一体何しやがったーーーーーーーーー!!!』

といきなりドラゴンの母親へ飛びかかって行った・・・


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

結婚二年目、愛情は欠片もありません。

ララ
恋愛
最愛の人との結婚。 二年が経ち、彼は平然と浮気をした。 そして離婚を切り出され……

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...