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覚醒
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「……、ぃ……っ……起きてください」
「ん……な…に……」
優しい声に眠りから起こされた私は見覚えのある白い空間にいた。
「ぇ……此処って天界?」
転生前に神様や天使様と会った場所にそっくりな不思議空間が現れた事に、私はまさか…と自分の目を疑った。
雲とも雪とも違う。
スライムを固くしたような柔らかさの地面。
清らかで心地よい空気が漂う癒やしの空間。
そこに居るだけで疲れが吹き飛び、汚れた気持ちや心が洗われていく気持ちになる不思議な処。まぁ、前回はその清らかさや癒やしをふっ飛ばして暴れ騒いだから結構呆れられてしまったけど。
うん、まさかとは思ったけど全部同じだ。
此処は天界だ。
「はい、その通りです。此処は天界でございます」
記憶を頼りにこの状況を考えていると、白金ロン毛の男性が朗らかな笑みを浮かべて話しかけてきた。
背後に神々しい光を背負った白い衣の人物。
──うん、神様だね。絶対に!
前回会った神様とは違うが、その背中に背負った神々しさは一度見たら忘れられない。見覚えがありすぎる姿に思わず天を仰いだ私はニコニコと笑って此方を見ている神様にへらりと笑ってみせた。
「えっと……本日はいったい何の用でしょうか? まさか私って死んじゃいましたか?」
「いえ貴女は死んでいません。今回は緊急事態でしたので神の権限で呼ばせていただきました。……誠に勝手ながら時間がありません。まずはこれを見てください」
神様がそう言って左側の白い空間に手をかざすと、液晶画面のような物が二つ現れた。
「なっ!?」
一つ目は六年前に会ったきりだった私の母親レティシア……というか又もあの王太子夫妻が言い争ってる場面がそこにはあった。
二つ目は森の木とは比べ物にならないほど大きな大樹が映っていた。
「このまま此方の争いを見ていただけるとわかりやすいのですが、先に結論を申しますと彼等の争いで世界の安寧や均衡を保ってきた世界樹が破壊されました」
「……はい?」
神様の意味不明な言葉に首を傾げるが、それ以上説明するつもりはないようだったので、映像に集中する事にした。
すると彼等はもう本当に呆れ返るほどの面倒くさい修羅場を繰り広げていた。勘弁してよ。
見るからに冷めきった夫婦関係の王太子夫妻。
レティシアがまるで高級ホテルのような豪奢な部屋で見た目麗しい男性達を侍らせる中、ライナスが金髪青目の可愛らしい女性の腰を抱いて対峙していた。
女性の腕の中にはライナスそっくりの男の子がいて、年齢はまだ二、三歳くらいだった。
ライナスはなんとか部屋から連れ出そうとする周囲の静止を振り切り、「フィアナとアルバートを王家に迎え入れたい。フィアナは側妃で構わないと言ってる。だからアルバートを私の後継として育ててもいいだろうか」と言い出しやがった。
えっ、フィアナってあの元婚約者だよね?
あの一件後も別れずに子供まで作っちゃったの!?
戦争が起きるだの、レティシアの意志に従うだの、あれはどうなったの!? また勝手に破っちゃったの!!?
ライナスのあまりにも身勝手で厚顔無恥な行いに絶句した。
「いやよ。どうして? 貴方は結婚時に誓ったわ。そこの女とは縁を切ると。私はその代わりに緑の乙女として役目を果たすと誓い……今は私だけがその誓いを守らされてるのよ。それに六年前の約束は? 貴方って本当に自分勝手よね。自分さえ良ければ国も民も蔑ろに出来ちゃうんだから」
「別に蔑ろになどしていない。あの時はああいってたけど、結果お前は何もしなかったじゃないか。戦争も起きてないし、ウルテミア王国だって何も言ってこない。フィアナと子を作ったのは後継の為だ。お前だって今更私からの愛なんて求めてないんだから良いだろう。どうせ私達の間には子は生まれんのだ。アルバートを迎え入れる為にもフィアナを側妃にしなくては……そうだろ?」
国の為に何が正しいか考えてくれと言うライナスに周囲の表情が引き攣る。どう見てもライナスの行いが国を混乱に導いている気がする。……それに穿った見方かもしれないけどフィアナを側妃にする為にわざと子供を生ませたんじゃないかって思える。王家の血を引く後継者がいればフィアナを母親として王家に迎え入れる理由が出来るもの。
でもそれを本当にしたのならライナスって……最低。
レティシアが本気で国を巻き込む覚悟があったのなら、この国は戦禍に巻き込まれてたんだよ。それをわかってるの?
「ふふっ、本当に馬鹿ね。私がそれを許すと思っているの? 私を受け入れることも離縁することもなくただ飼い殺しにしてるくせに貴方は全て望み通りになるなんて嫌に決まってるじゃない。……しかも私の娘は幽閉されてるのに貴方とあの女の息子は王族になるの?」
「どうしたら許してくれる。君の娘を王族するのは無理だが一緒に暮らせるよう手配することは可能だ」
「っ……本当に馬鹿にしてくれるわね。それってあれかしら……私も塔に幽閉してしまおうって話よね。これまで国の為、世界の為に力を使ってきた私を切り捨てて自分の女を表舞台に返り咲かせようって魂胆じゃない。……相変わらず嘘と裏切りばっかり!」
「……これが国にとって一番なんだ」
「国にじゃなくて貴方にとってよね。この卑怯者!」
悲しみに暮れた微笑みから一変して憎悪に顔を歪ませたレティシアは小さな声で「もう疲れたわ」と言った。
そしてゆっくりと瞳を閉じて身体中からあの禍々しい黒いモヤのような霧のような物を放出させた。
「な、なんだそれは!」
「きゃあ!」
「六年前は覚悟が足りなかったけど、今は違うわ。私の命や周囲を犠牲にしても復讐したい。ライナスに絶望を味あわせたい!」
レティシアの側にいた男達が慌てて逃げ出し、ライナス達がその光景に腰を抜かす中、レティシアは心の叫びを吐き出して涙を一滴零す。そして小さな声で「貴方に恋なんてしなければよかった」と呟き悲しそうに微笑んだ。
レティシアの身体から放出された黒いモヤは窓を突き破り空へと広がった。意思を持ったように方向を定め、一直線に空を駆け抜けていった。
黒いモヤはどんどん城から離れ、海を越えて、大地を越えて、また海を越えて、そして辿り着いた。あの大樹の元に。
もう一方の液晶画面に視線を移すと、そこには黒いモヤに包まれた大樹の姿があり、神様が言うにはこれが世界を平和にしていた世界樹という存在だった。
黒いモヤに包まれた世界樹は数秒前まで青々と生い茂っていた葉が黒ずんで塵と化した。一枚、また一枚……とものすごい早さで枝から葉が消滅していき、最後は太い幹や枝からも中の養分っぽい物を吸い取られミイラのような痩せ細った大樹が残されていた。
葉を失いミイラとなった世界樹。
今にもポキっと折れてしまいそうな弱々しい姿だ。
素人の私でも見てわかる。
もうこの木はダメだと。
次の瞬間──
画面の中のレティシアに天から降り注ぐ神々しい光の雷が落ちた。脳天から全身へと流れていき、光が消えた後には見るも無惨な黒焦げ姿がそこにはあった。
「世界樹の守護者であった緑の乙女が禁忌を犯したので天罰が下りました」
神様がいうにはレティシアは世界樹を癒やし守護する為に生まれた "緑の乙女" という存在で世界を守るという誓約の下、特別な力を神様より授けられていた。それなのにその力を世界樹を滅ぼすという最低最悪の悪事に力を使用してしまった為、罰が下ってしまった。
世界樹は世界の要。
世界樹を害することは世界滅亡させることと同義らしい。
えっ!!? 世界滅びるの?
「世界樹が失われた今、世界は非常に不安定です。天候は荒れ、山は火を吹き、大地は割れるでしょう」
「何か手立てはないんですか? 時間を戻すとか、神様の力でなんとか……」
「時間を戻したとしても緑の乙女の心は既に闇に囚われていました。一度世界樹を救った所でまた同じ事が起きるかと」
レティシアがライナスに恋する前まで戻して、別の人に恋するように仕向けて……ああ~どの瞬間かわかんない!
「それよりもこういった世界の重要人物には必ずスペアを用意しておくのが天界の掟なのです。……ですから母親の代わりに緑の乙女になっていただけますか?」
神様が真っ直ぐな瞳で私を見て手を差し伸べてくる。
その瞳は私がそのスペアだと告げていた。
「……え?」
「貴方が世界を救ってください」
「うぇい!?」
「貴方が受け入れてくれないと世界は滅びます」
「っ……!?」
「今回は世界樹が破壊されるという緊急事態ですので、猶予はあと三分です。三分以内にスペア覚醒に同意して頂けませんと世界滅亡が開始されます」
「は、はああああ!!?」
う、う、ううう嘘でしょ!!?
私が三分以内に決断しないと世界が滅びちゃうの!?
理不尽! めっちゃ理不尽!
もはやこれ脅しだから!
「どうぞ世界をよろしくお願いします」
神様は恭しく頭を下げて、再度手を差し伸べてくる。
早く手を取れとグッ、グッと手を伸ばしてくる。
えっ、えっっ、えっっっ!!?
聞こえる筈のない時計の秒針の音が頭に響いてる。
──チクタク、チクタク、チクタク、チクタク……
幻聴だとわかっていても残り時間が気になる。
あああもうっ……
「ふ、ふ、不束者ですがよろしくお願いしますううううううう!!!」
勢いに押されて神様の手を取ってしまった私に神様は満面の笑みを浮かべて「では詳細は後程お知らせ致しますので地上へお戻りください」と言い、手を振られた。
そして行きとは違い優しい光に包まれて旅立ち、地上へと戻ってきた。
清らかな笑みの筈なのにどうしてだろう。
騙されたと感じてしまう。
あああ、なんか早まったかもおおおお!!!
「ん……な…に……」
優しい声に眠りから起こされた私は見覚えのある白い空間にいた。
「ぇ……此処って天界?」
転生前に神様や天使様と会った場所にそっくりな不思議空間が現れた事に、私はまさか…と自分の目を疑った。
雲とも雪とも違う。
スライムを固くしたような柔らかさの地面。
清らかで心地よい空気が漂う癒やしの空間。
そこに居るだけで疲れが吹き飛び、汚れた気持ちや心が洗われていく気持ちになる不思議な処。まぁ、前回はその清らかさや癒やしをふっ飛ばして暴れ騒いだから結構呆れられてしまったけど。
うん、まさかとは思ったけど全部同じだ。
此処は天界だ。
「はい、その通りです。此処は天界でございます」
記憶を頼りにこの状況を考えていると、白金ロン毛の男性が朗らかな笑みを浮かべて話しかけてきた。
背後に神々しい光を背負った白い衣の人物。
──うん、神様だね。絶対に!
前回会った神様とは違うが、その背中に背負った神々しさは一度見たら忘れられない。見覚えがありすぎる姿に思わず天を仰いだ私はニコニコと笑って此方を見ている神様にへらりと笑ってみせた。
「えっと……本日はいったい何の用でしょうか? まさか私って死んじゃいましたか?」
「いえ貴女は死んでいません。今回は緊急事態でしたので神の権限で呼ばせていただきました。……誠に勝手ながら時間がありません。まずはこれを見てください」
神様がそう言って左側の白い空間に手をかざすと、液晶画面のような物が二つ現れた。
「なっ!?」
一つ目は六年前に会ったきりだった私の母親レティシア……というか又もあの王太子夫妻が言い争ってる場面がそこにはあった。
二つ目は森の木とは比べ物にならないほど大きな大樹が映っていた。
「このまま此方の争いを見ていただけるとわかりやすいのですが、先に結論を申しますと彼等の争いで世界の安寧や均衡を保ってきた世界樹が破壊されました」
「……はい?」
神様の意味不明な言葉に首を傾げるが、それ以上説明するつもりはないようだったので、映像に集中する事にした。
すると彼等はもう本当に呆れ返るほどの面倒くさい修羅場を繰り広げていた。勘弁してよ。
見るからに冷めきった夫婦関係の王太子夫妻。
レティシアがまるで高級ホテルのような豪奢な部屋で見た目麗しい男性達を侍らせる中、ライナスが金髪青目の可愛らしい女性の腰を抱いて対峙していた。
女性の腕の中にはライナスそっくりの男の子がいて、年齢はまだ二、三歳くらいだった。
ライナスはなんとか部屋から連れ出そうとする周囲の静止を振り切り、「フィアナとアルバートを王家に迎え入れたい。フィアナは側妃で構わないと言ってる。だからアルバートを私の後継として育ててもいいだろうか」と言い出しやがった。
えっ、フィアナってあの元婚約者だよね?
あの一件後も別れずに子供まで作っちゃったの!?
戦争が起きるだの、レティシアの意志に従うだの、あれはどうなったの!? また勝手に破っちゃったの!!?
ライナスのあまりにも身勝手で厚顔無恥な行いに絶句した。
「いやよ。どうして? 貴方は結婚時に誓ったわ。そこの女とは縁を切ると。私はその代わりに緑の乙女として役目を果たすと誓い……今は私だけがその誓いを守らされてるのよ。それに六年前の約束は? 貴方って本当に自分勝手よね。自分さえ良ければ国も民も蔑ろに出来ちゃうんだから」
「別に蔑ろになどしていない。あの時はああいってたけど、結果お前は何もしなかったじゃないか。戦争も起きてないし、ウルテミア王国だって何も言ってこない。フィアナと子を作ったのは後継の為だ。お前だって今更私からの愛なんて求めてないんだから良いだろう。どうせ私達の間には子は生まれんのだ。アルバートを迎え入れる為にもフィアナを側妃にしなくては……そうだろ?」
国の為に何が正しいか考えてくれと言うライナスに周囲の表情が引き攣る。どう見てもライナスの行いが国を混乱に導いている気がする。……それに穿った見方かもしれないけどフィアナを側妃にする為にわざと子供を生ませたんじゃないかって思える。王家の血を引く後継者がいればフィアナを母親として王家に迎え入れる理由が出来るもの。
でもそれを本当にしたのならライナスって……最低。
レティシアが本気で国を巻き込む覚悟があったのなら、この国は戦禍に巻き込まれてたんだよ。それをわかってるの?
「ふふっ、本当に馬鹿ね。私がそれを許すと思っているの? 私を受け入れることも離縁することもなくただ飼い殺しにしてるくせに貴方は全て望み通りになるなんて嫌に決まってるじゃない。……しかも私の娘は幽閉されてるのに貴方とあの女の息子は王族になるの?」
「どうしたら許してくれる。君の娘を王族するのは無理だが一緒に暮らせるよう手配することは可能だ」
「っ……本当に馬鹿にしてくれるわね。それってあれかしら……私も塔に幽閉してしまおうって話よね。これまで国の為、世界の為に力を使ってきた私を切り捨てて自分の女を表舞台に返り咲かせようって魂胆じゃない。……相変わらず嘘と裏切りばっかり!」
「……これが国にとって一番なんだ」
「国にじゃなくて貴方にとってよね。この卑怯者!」
悲しみに暮れた微笑みから一変して憎悪に顔を歪ませたレティシアは小さな声で「もう疲れたわ」と言った。
そしてゆっくりと瞳を閉じて身体中からあの禍々しい黒いモヤのような霧のような物を放出させた。
「な、なんだそれは!」
「きゃあ!」
「六年前は覚悟が足りなかったけど、今は違うわ。私の命や周囲を犠牲にしても復讐したい。ライナスに絶望を味あわせたい!」
レティシアの側にいた男達が慌てて逃げ出し、ライナス達がその光景に腰を抜かす中、レティシアは心の叫びを吐き出して涙を一滴零す。そして小さな声で「貴方に恋なんてしなければよかった」と呟き悲しそうに微笑んだ。
レティシアの身体から放出された黒いモヤは窓を突き破り空へと広がった。意思を持ったように方向を定め、一直線に空を駆け抜けていった。
黒いモヤはどんどん城から離れ、海を越えて、大地を越えて、また海を越えて、そして辿り着いた。あの大樹の元に。
もう一方の液晶画面に視線を移すと、そこには黒いモヤに包まれた大樹の姿があり、神様が言うにはこれが世界を平和にしていた世界樹という存在だった。
黒いモヤに包まれた世界樹は数秒前まで青々と生い茂っていた葉が黒ずんで塵と化した。一枚、また一枚……とものすごい早さで枝から葉が消滅していき、最後は太い幹や枝からも中の養分っぽい物を吸い取られミイラのような痩せ細った大樹が残されていた。
葉を失いミイラとなった世界樹。
今にもポキっと折れてしまいそうな弱々しい姿だ。
素人の私でも見てわかる。
もうこの木はダメだと。
次の瞬間──
画面の中のレティシアに天から降り注ぐ神々しい光の雷が落ちた。脳天から全身へと流れていき、光が消えた後には見るも無惨な黒焦げ姿がそこにはあった。
「世界樹の守護者であった緑の乙女が禁忌を犯したので天罰が下りました」
神様がいうにはレティシアは世界樹を癒やし守護する為に生まれた "緑の乙女" という存在で世界を守るという誓約の下、特別な力を神様より授けられていた。それなのにその力を世界樹を滅ぼすという最低最悪の悪事に力を使用してしまった為、罰が下ってしまった。
世界樹は世界の要。
世界樹を害することは世界滅亡させることと同義らしい。
えっ!!? 世界滅びるの?
「世界樹が失われた今、世界は非常に不安定です。天候は荒れ、山は火を吹き、大地は割れるでしょう」
「何か手立てはないんですか? 時間を戻すとか、神様の力でなんとか……」
「時間を戻したとしても緑の乙女の心は既に闇に囚われていました。一度世界樹を救った所でまた同じ事が起きるかと」
レティシアがライナスに恋する前まで戻して、別の人に恋するように仕向けて……ああ~どの瞬間かわかんない!
「それよりもこういった世界の重要人物には必ずスペアを用意しておくのが天界の掟なのです。……ですから母親の代わりに緑の乙女になっていただけますか?」
神様が真っ直ぐな瞳で私を見て手を差し伸べてくる。
その瞳は私がそのスペアだと告げていた。
「……え?」
「貴方が世界を救ってください」
「うぇい!?」
「貴方が受け入れてくれないと世界は滅びます」
「っ……!?」
「今回は世界樹が破壊されるという緊急事態ですので、猶予はあと三分です。三分以内にスペア覚醒に同意して頂けませんと世界滅亡が開始されます」
「は、はああああ!!?」
う、う、ううう嘘でしょ!!?
私が三分以内に決断しないと世界が滅びちゃうの!?
理不尽! めっちゃ理不尽!
もはやこれ脅しだから!
「どうぞ世界をよろしくお願いします」
神様は恭しく頭を下げて、再度手を差し伸べてくる。
早く手を取れとグッ、グッと手を伸ばしてくる。
えっ、えっっ、えっっっ!!?
聞こえる筈のない時計の秒針の音が頭に響いてる。
──チクタク、チクタク、チクタク、チクタク……
幻聴だとわかっていても残り時間が気になる。
あああもうっ……
「ふ、ふ、不束者ですがよろしくお願いしますううううううう!!!」
勢いに押されて神様の手を取ってしまった私に神様は満面の笑みを浮かべて「では詳細は後程お知らせ致しますので地上へお戻りください」と言い、手を振られた。
そして行きとは違い優しい光に包まれて旅立ち、地上へと戻ってきた。
清らかな笑みの筈なのにどうしてだろう。
騙されたと感じてしまう。
あああ、なんか早まったかもおおおお!!!
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