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ナナーシュの場合2
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学園の講義の中で、ダンスは花形である。
表情や姿勢、歩き方振る舞い。
場の格や季節を意識したドレスや小物の選び方。
そして、誰となにを踊るか。
ダンスは話術と並んで貴族の社交の中心であり、教養の集大成といえる。
だから、マリナールイースは困っている。
「どうしよう、どうしたらいいのかしら」
来週から始まるダンスの授業を前にパートナーが決まらないのだ。
基本的にパートナーは婚約者がつとめる。
だが、わたしマリナールイースにはまだ婚約者がいない。
貴族は早い者では10歳になる頃から婚約が成立する。
基本的に学園に入る16歳を前に婚約することが多い。
そのため学園にパートナーのいない男性は本当に少ない。
そして私マリナールイースの婚約は難しい。
王族以外では最高位となる公爵家の娘であるという立場は微妙に難しい。
父が積極的に動いていないというだけではなく、現在王家には王子ばかりで王女がいないため、実質国内最高位の未婚女性なのだ。
茶会等でも気が抜けない。
さいわい、知り合った同年代の少女たちが皆マリナールイースに敬意を持って接してくれる。
そんななか親しくなる令嬢も出来た。
伯爵家のアリアンナ、侯爵家のフールなどだ。
学園に入っても交流は続いていて、マリナールイースに様々な情報をもたらしてくれる。
たとえば下位貴族のクラスは全員パートナー決まった、とか。
つまりはナナーシュも。
放課後、寮の裁縫室で刺繍をしていた。
なんということもない雑談の中でアリアンナが教えてくれた。
「チェレン様のダンスパートナーはナナーシュ男爵令嬢になったんですね」
ちらりとこちらをみるアリアンナ。
彼女はなかなか規律に厳しいところがあるので、マリナールイースがどう考えているのか探っているようだった。
なんとナナーシュのパートナーは隣国からの留学生として我が国に来ていた隣国の王族。
ガツンと頭を殴られたような衝撃を感じました。
公爵令嬢のプライドにかけて気取らせないよう振る舞いましたが、そのあとどんなはなしをしたか覚えていません。
正直、マリナールイースとしてはいとこのマイルスルかその留学生チェレンのどちらかをパートナーにするつもりだった。
だが、マリナールイースの家の使用人の娘が王族のパートナーであるならば、マリナールイースのパートナーが従兄弟とはいえ伯爵家のマイルスルであるわけにはいかない。
パートナーはいればいいというものではないのだ。
貴族である以上、そんなことはあってはいけないのだ。
だが、パートナーがいないというのはそれ以前の論外。
時間もないどうすればいいのか。
行き詰まったマリナールイースは手紙を書いた。
使用人に発送を言いつけようとしてふと、気分転換に散歩をしようと思った。
寮の中庭に今見事な木蓮が咲いているのだ。
手紙は寮の管理人に発送をお願いすればいい。
そう思って寮の入り口に来ると、見慣れた馬車が目の前を通って行った。
女子寮の前の道は行き止まり。
馬車の行き先は女子寮か、向かいの男子寮しかない。
表情や姿勢、歩き方振る舞い。
場の格や季節を意識したドレスや小物の選び方。
そして、誰となにを踊るか。
ダンスは話術と並んで貴族の社交の中心であり、教養の集大成といえる。
だから、マリナールイースは困っている。
「どうしよう、どうしたらいいのかしら」
来週から始まるダンスの授業を前にパートナーが決まらないのだ。
基本的にパートナーは婚約者がつとめる。
だが、わたしマリナールイースにはまだ婚約者がいない。
貴族は早い者では10歳になる頃から婚約が成立する。
基本的に学園に入る16歳を前に婚約することが多い。
そのため学園にパートナーのいない男性は本当に少ない。
そして私マリナールイースの婚約は難しい。
王族以外では最高位となる公爵家の娘であるという立場は微妙に難しい。
父が積極的に動いていないというだけではなく、現在王家には王子ばかりで王女がいないため、実質国内最高位の未婚女性なのだ。
茶会等でも気が抜けない。
さいわい、知り合った同年代の少女たちが皆マリナールイースに敬意を持って接してくれる。
そんななか親しくなる令嬢も出来た。
伯爵家のアリアンナ、侯爵家のフールなどだ。
学園に入っても交流は続いていて、マリナールイースに様々な情報をもたらしてくれる。
たとえば下位貴族のクラスは全員パートナー決まった、とか。
つまりはナナーシュも。
放課後、寮の裁縫室で刺繍をしていた。
なんということもない雑談の中でアリアンナが教えてくれた。
「チェレン様のダンスパートナーはナナーシュ男爵令嬢になったんですね」
ちらりとこちらをみるアリアンナ。
彼女はなかなか規律に厳しいところがあるので、マリナールイースがどう考えているのか探っているようだった。
なんとナナーシュのパートナーは隣国からの留学生として我が国に来ていた隣国の王族。
ガツンと頭を殴られたような衝撃を感じました。
公爵令嬢のプライドにかけて気取らせないよう振る舞いましたが、そのあとどんなはなしをしたか覚えていません。
正直、マリナールイースとしてはいとこのマイルスルかその留学生チェレンのどちらかをパートナーにするつもりだった。
だが、マリナールイースの家の使用人の娘が王族のパートナーであるならば、マリナールイースのパートナーが従兄弟とはいえ伯爵家のマイルスルであるわけにはいかない。
パートナーはいればいいというものではないのだ。
貴族である以上、そんなことはあってはいけないのだ。
だが、パートナーがいないというのはそれ以前の論外。
時間もないどうすればいいのか。
行き詰まったマリナールイースは手紙を書いた。
使用人に発送を言いつけようとしてふと、気分転換に散歩をしようと思った。
寮の中庭に今見事な木蓮が咲いているのだ。
手紙は寮の管理人に発送をお願いすればいい。
そう思って寮の入り口に来ると、見慣れた馬車が目の前を通って行った。
女子寮の前の道は行き止まり。
馬車の行き先は女子寮か、向かいの男子寮しかない。
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