断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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シーラの場合 前編

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ああ、なんて茶番でしょうか。

国王陛下の名がついた学園の、創立記念日。
そのパーティーで、王族が登場する前のまだ少し緩んだ時間に予想通りそれは始まった。
「皆様に聴いていただきたいことがあります」
そう言って皆の注目を集めたのは、宰相様の子息であり王命で決まっている私の婚約者のマイク様。
その横少し後ろには彼の幼なじみの公爵令嬢エリー様。
そして少し後ろには学園の生徒会のメンバー。
見る人にはまるで生徒会あるいは生徒として参加されている生徒会長である王太子殿下のお墨付きのようにも見えなくもない。
そういえばマイク様もエリー様も生徒会役員でしたね。
そこから始まるのはくだらない茶番劇。
お父上である宰相様似のよく通る声で語られるのは身に覚えのない私の罪。
要約すると嫉妬深くて貴族としての教養や品格に欠けている、と言ったことでしょうか。
全力で私のことが嫌いだと、お金の力で爵位を買った成り上がりの卑しい一族と言いたいのですね。
エリー様がさりげなく、ドレスの揺らぎにしか見えないくらいにわずかずつ動いておられますね。
給仕からお飲み物を受け取ったていで、生徒会の方々の位置も少し動きましたね。
マイク様は気づいておられないのでしょう。
「以上をもって、私ガーネッド侯爵嫡男マイク・ガーネッドはシーラ・シーサンド男爵令嬢との婚約を今をもって破棄することを宣言する」
複数の成人貴族と学生として参加しているとはいえ歴とした王族の立ち会いの元での宣言。
ああ、王命の婚約が正式に破棄されました。
私は扇で口を隠す。
だって笑ってしまいそうだったから。
いけません。
気を引き締めて行かなくては。
おそらくここからが本番ですから。
引き際を見間違えないように。
マイク様は、言ってやったとやりきったと頬を紅潮させています。
マイク様の頭の中では、私が抵抗又は反論すると思っているのだろう。
筋書きはあくまで筋書きに過ぎないのですよ。
きちんと礼儀にのっとって、姿勢を正し真正面からマイク様を見る。
「婚約破棄、承知いたしました。」
カーデシーではしない。
周りがざわりと騒がしくなる。
素直に言った私に、マイク様はちょっと当てが外れたようだ。
「婚約破棄だぞ、わかっているのか」
「はい、わかっておりますよ」
わかっていないのはあなたの方。
出来ればこのまま穏便に、さっさと退出したい。
では、と背を向ける私に、マイク様が
「可愛げのない女だ。そんなだから捨てられるんだ」
などと言っているが無視。
話し続けるマイク様にかまってはいられません。
今が引き時。
さあ急がないと。
「そこまでだマイク。公の場でこれ以上彼女の名誉を傷つけるのは生徒会長として王子として認めてられないな」
チッと心の中で舌打ちする。
遅かった。
逃げ損ねた。
ああ、茶番劇が終わって別の茶番劇が始まった。
この次はおそらく。

私は求婚される。

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