断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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ミラの場合 (後)

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母の言った通りだった。
夜会はいつも通り粛々と進行した。
ミラと母ナリヤは誰に止められることもなかった。
思えば、婚約破棄と追放を言われた時は夜会は始まる前で、ほとんど人がいなかった。
だから、一連のことはほぼ知られていないのだと気がついた。
母はいつも通り、知り合いのご婦人と歓談している。
いつも通りのその姿に、おどおどしているの自分がおかしく感じられてくる。
少し肩の力が抜けて、飲み物を受け取ったところで父の姿が見えた。
ミラと母に気がついた父と兄と婚約者いえ、元婚約者のケヴィン第二王子だけが驚いてこちらにこようとした。
顔が怖い。
怒ってる、でも焦ってもいるような。
でも、結局何も起こらなかったし何も言われなかった。
すぐに国王陛下ご夫妻が入場されたから。
ケヴィン様は国王陛下の後ろに第一王子様の横に並ばれた。
いつも通り、国王ご夫妻が貴族からの挨拶を受けられる。
国王ご夫妻にはよくしていただいた。
一介の公爵令嬢が個人的にご夫妻にお話しする機会などそうない。もしかしたら公爵令嬢でさえなくなるかもしれない。
きちんと今までの礼を伝えなくては。
母にそう伝えると
「90点」
点がぐんと上がった。
「夜会に出た時点で、私たちの勝利は確定なのよ」
そう言った母の言葉が何だか心強かった。

帰りの馬車では誰もが無言だった。

第二王子派の父。
私を婚約者とすることで後ろ盾として第二王子を支えて自身も地位を上げていこうとした。
もちろん第二王子は王位を狙っていた。
ところが隣国の王女が第一王子の婚約者として浮上した。
大国の後ろ盾がつけば第一王子の王位継承は揺るがないものとなる。
そこで、私との婚約を破棄、乗り換えようとしたのだ。
父にとっては第二王子に恩がうれて若くて言いなりになる愛人を家に入れられる。
そんなところだったらしい。
らしいというのは、全て母に聞いたことだからだ。
母は伯爵家の出である。
特別な技能もコネもない。
貴族として普通のレベルの教養を持って、公爵夫人として正しく社交して、そこで知り得た情報からたくさんのことを見て知って考えてきた。
それだけのこと、だそうだ。

ケヴィン様と私の婚約は破棄された。
ケヴィン様有責のため、かなりの額の慰謝料が支払われた。
そしてケヴィン様は国王陛下ご夫妻にかなりの叱責を受けたのち謹慎。
将来は侯爵となることが決まった。


結局何も変わらなかった。

家族全員いつも通りに過ごしている。
窓を開ければ心地よい風が吹いている。
行こうと思えば茶会でも夜会でも観劇でも、領地の視察でもできる。
婚約者がいなくなったことで釣書もずいぶん来ているらしい。
兄が王宮に勤めているから私が公爵家の後継者となる可能性もあるが、これからどうすればいいのかはゆっくり考える。
まずはあのときの70点について考えてみようと思っている。
どうすれば100点だったのだろうか。
結局足りなかった10点はどうやったら埋められたのかな。
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