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聖女ルシーダの場合 別ルート ルカ
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ひどい話だ。
聖女の行状。
もう一人聖女が現れて、もとの聖女を断罪。
それはいい。
聖女の行状は本当に良くなかった。
死人こそいないものの人生を狂わされた人が多すぎる。
でも、聖女とは非常に珍しい存在である。
そして与えられる恩恵の莫大なこと。
もともと強い風と乾いた空気のこの国が、ここ10年以上穏やかな四季のある国となっているのはひとえに聖女の加護である。
だから国王ですら手出しができなかった。
それが同時期に同じ国に現れるなど前例がない。
ありえるのだろうか。
そう考えた周辺のとある国から遣わされたのが私、ルカである。
まあカラクリは簡単。
一年もかからず真相を突き止めた。
聖女を断罪して閉じ込める。
国に変わらぬ加護が与えられていれば不安に思うものもない。
表向きには新しい聖女の加護とする。
もちろん新しい聖女は聖女ではない。
加護は断罪されたはずの聖女のもの。
聖女はいるだけで周りに加護を与える存在なのだ。
呆れたことに、新しい聖女は王子の婚約者だった。
なんて分かりやすくてくだらない企みなことか。
刑期を終えても、聖女を言いくるめて教会に閉じ込めるつもりらしい。
性格が悪くても世間知らずな聖女のことだ、丸め込まれてしまうのだろう。
まあ、飢えることもなく悪い選択ではない。
ただ、私の任務は探るだけではない。
うまく潜り込んで、聖女付きのメイドになれた。
聖女の人となりはすぐ知れた。
ちょっと世間知らずで調子に乗った普通の娘。
性格はちょっと短期だけれど案外素直で、断罪されたことを受け止めていた。
ただ、教養はない。
文字が何とか読める程度の教育しか受けていない。
刑期いっぱい使って、少しずつ距離を詰めていった。
一年目。目を合わせることもなく過ごす。
2年目。たまに目が合う。
3年目。わざとお茶をこぼして、一度だけ言葉を交わす。
4年目。挨拶を交わすようになる。
5年目。ぽつりぽつりと話をする。
この時間を使って、聖女の周辺の調査は終わっていた。
聖女によって結婚させられた年配女性と青年。
それなりにうまく行ったようだ。
年配女性の援助で青年の実家は栄えた。
夫婦仲は睦まじかったらしい。
妻は夫の人としての成長を導き、夫は妻を敬愛していたそうだ。
妻の家族も妻の人生の最後を良きものとした夫に感謝し、妻亡き後も夫はそのまま婚家に留まったらしい。
年配男性と結婚させられた若い女性。
若い女性は問題を抱えていた。
実家の借金であった。
四女であった女性は売り飛ばされる直前であった。
それが相手は歳の差があるとはいえ貴族としての結婚ができたことを喜んでいた。
数年で夫が亡くなると未亡人として夫の年金を受け取り悠々自適の生活を手に入れた。
今は趣味であったバラの品種改良に取り組んでいるのだという。
ほかにも、聖女曰く『適当』にやったことはことごとく悪くない結末を迎えていた。
聖女の癇癪で首にされたメイドが、実家に帰される道で蹴飛ばした石をきっかけに人気の芸人ギルドを立ち上げたなどということまで起こっていた。
本国に送ったこの調査結果によって下された新しい任務は、聖女を我が国にお迎えすること。
この国はもう聖女のことは忘れている。
連れ出すことは簡単だ。
あと必要なのは聖女の同意だけ。
我が国は聖女を閉じ込めたりしない。
きちんと教育や衣食住を保証するし、なにより聖女の意思を尊重する。
だから攫うこともしない。
あと一押し。
聖女の気持ちを我が国に向ける。
マリーとハンナの二人のメイドも思うところはあったようだ。
それぞれが聖女に働きかけている。
だがまあ素人、私の敵ではない。
さて、もう少し予定を詰めなくては。
聖女の住居は王宮ではなく専用の離宮を作ったほうがいいだろう。
あまり大きすぎないように。
でも人では多めに。
聖女の行状。
もう一人聖女が現れて、もとの聖女を断罪。
それはいい。
聖女の行状は本当に良くなかった。
死人こそいないものの人生を狂わされた人が多すぎる。
でも、聖女とは非常に珍しい存在である。
そして与えられる恩恵の莫大なこと。
もともと強い風と乾いた空気のこの国が、ここ10年以上穏やかな四季のある国となっているのはひとえに聖女の加護である。
だから国王ですら手出しができなかった。
それが同時期に同じ国に現れるなど前例がない。
ありえるのだろうか。
そう考えた周辺のとある国から遣わされたのが私、ルカである。
まあカラクリは簡単。
一年もかからず真相を突き止めた。
聖女を断罪して閉じ込める。
国に変わらぬ加護が与えられていれば不安に思うものもない。
表向きには新しい聖女の加護とする。
もちろん新しい聖女は聖女ではない。
加護は断罪されたはずの聖女のもの。
聖女はいるだけで周りに加護を与える存在なのだ。
呆れたことに、新しい聖女は王子の婚約者だった。
なんて分かりやすくてくだらない企みなことか。
刑期を終えても、聖女を言いくるめて教会に閉じ込めるつもりらしい。
性格が悪くても世間知らずな聖女のことだ、丸め込まれてしまうのだろう。
まあ、飢えることもなく悪い選択ではない。
ただ、私の任務は探るだけではない。
うまく潜り込んで、聖女付きのメイドになれた。
聖女の人となりはすぐ知れた。
ちょっと世間知らずで調子に乗った普通の娘。
性格はちょっと短期だけれど案外素直で、断罪されたことを受け止めていた。
ただ、教養はない。
文字が何とか読める程度の教育しか受けていない。
刑期いっぱい使って、少しずつ距離を詰めていった。
一年目。目を合わせることもなく過ごす。
2年目。たまに目が合う。
3年目。わざとお茶をこぼして、一度だけ言葉を交わす。
4年目。挨拶を交わすようになる。
5年目。ぽつりぽつりと話をする。
この時間を使って、聖女の周辺の調査は終わっていた。
聖女によって結婚させられた年配女性と青年。
それなりにうまく行ったようだ。
年配女性の援助で青年の実家は栄えた。
夫婦仲は睦まじかったらしい。
妻は夫の人としての成長を導き、夫は妻を敬愛していたそうだ。
妻の家族も妻の人生の最後を良きものとした夫に感謝し、妻亡き後も夫はそのまま婚家に留まったらしい。
年配男性と結婚させられた若い女性。
若い女性は問題を抱えていた。
実家の借金であった。
四女であった女性は売り飛ばされる直前であった。
それが相手は歳の差があるとはいえ貴族としての結婚ができたことを喜んでいた。
数年で夫が亡くなると未亡人として夫の年金を受け取り悠々自適の生活を手に入れた。
今は趣味であったバラの品種改良に取り組んでいるのだという。
ほかにも、聖女曰く『適当』にやったことはことごとく悪くない結末を迎えていた。
聖女の癇癪で首にされたメイドが、実家に帰される道で蹴飛ばした石をきっかけに人気の芸人ギルドを立ち上げたなどということまで起こっていた。
本国に送ったこの調査結果によって下された新しい任務は、聖女を我が国にお迎えすること。
この国はもう聖女のことは忘れている。
連れ出すことは簡単だ。
あと必要なのは聖女の同意だけ。
我が国は聖女を閉じ込めたりしない。
きちんと教育や衣食住を保証するし、なにより聖女の意思を尊重する。
だから攫うこともしない。
あと一押し。
聖女の気持ちを我が国に向ける。
マリーとハンナの二人のメイドも思うところはあったようだ。
それぞれが聖女に働きかけている。
だがまあ素人、私の敵ではない。
さて、もう少し予定を詰めなくては。
聖女の住居は王宮ではなく専用の離宮を作ったほうがいいだろう。
あまり大きすぎないように。
でも人では多めに。
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