断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

文字の大きさ
上 下
17 / 48

聖女ルシーダの場合 別ルート

しおりを挟む
先日あげた聖女ルシーダの場合の別バージョンです。
途中まで同じで、結果が変わります。



顔の痛みと肌寒さで目が覚めた。
ここは罪人を入れる塔。
ため息をついて、硬い寝床というか寝床用と思われる台に起き上がる。
胸を塞ぐ罪悪感。
ルシーダはほんの半日前までは、あらゆるわがままを許される立場だった。
 

聖女
大陸のどこかで30年から50年に一度現れるといわれ、聖女のいるところ平和と繁栄があると言われている。
それが私、ルシーダだった。
この国では300年ぶりの聖女の誕生だった。
聖女だと認定された時から、幾人もの侍女がつき、希望は何でもかなえられるようになった。
親でさえも、ルシーダに意見することはできなくなった。
10歳の子供がそんな扱いを受けるとどうなるか。
ルシーダはどんどん増長した。
わがままを言い、気まぐれで周りを振り回し、気に入らないと排除した。
そして、ある朝それは崩壊した。
新たな聖女が見つかったのだ。
しかも元々平民のルシーダと違い、由緒正しい貴族の娘に。
気に食わなかった。
いつも通りに排除しようとして、排除されたのはルシーダの方だった。
それまでの8年間の行いで、ルシーダには味方がいなかった。
あっという間に今までの行いの証拠や証言が集まり、ルシーダは断罪された。
顔に罪人の焼きごてを押され、幽閉5年の罪とされた。

塔での5年間は単調に過ぎた。
朝晩食事が差し入れられる以外に変化はなく、一人きり。
焼きごての傷が癒える頃には反省も終わっていた。
やり過ぎたなと。
面白半分に貴族の結婚を決めた。
もう孫のいる女性に息子より若い男とかその逆とか。
ルシーダには未来など読めないのに、いかにもそれが最善の選択であるかのように振る舞った。
めんどくさいからって、秋の収穫祭を取りやめさせた。
熱いお茶を出した侍女をクビにした。
仕事の遅れた侍女を一日中立たせた。
贅沢もいっぱい。
主に食べる方向で。
他にも色々。
でもね。
一通り反省したら逆に馬鹿らしくなった。
ただの小娘の言うことに何を右往左往してるのかと。
人のこと聖女だ何だと祭り上げて、何でも言うこと聞いて。
次ができたからいらないって。
馬鹿じゃないかと。
その程度の存在だと思っているなら初めから言いなりにならなきゃいいのよ。
結婚くらい自分で決めなさいよ。
わざわざ聞きに来なければいいのに。
聞きにくるからこちらも適当なこと言わないといけないのよ。

塔に閉じ込められても聖女であることは変わらないから、自身の飲食代だと護符を作る仕事を続けている。
塔の中はそこそこ広くて、寝室と居間があり、日は当たらないが中庭もある。
もちろん3食きちんと運ばれてくる。
運んでくるメイドは大体決まっていた。
黒髪の無愛想なメイドマリー、赤毛の無愛想なメイドルカ、黒髪の愛想の良いメイドハンナ。
皆神殿で私の担当だったものではない。
はじめは三人ともこちらと関わる気はなさそうで、ノックとともに入ってきて、配膳して前食の器を下げるだけだった。
ルシーダが気まぐれに労いを言う程度だったが、続けば少しずつ関わることもできてくる。
ルシーダとしてはただの暇つぶしだった。
聖女としての仕事は多岐に渡ったから、塔に閉じ込められて護符を作るだけになってかなり暇になったのだ。
一年目は愛想の良いメイドだけが一言くらい返事をしてくれるくらいだった。
5年が過ぎる頃には三人とも暇な時には雑談に来るくらいの関係になれた。

四年を過ぎた頃から、ルシーダのこれからについての話題が出るようになった。

ルシーダの刑期があと一月となった時、一人のメイドがルシーダの前に跪いた。

「聖女ルシーダ様、ここを出た暁にはどうか私と共に来てはいただけないでしょうか」



どのメイドとともに行くかによってルシーダの未来が変わります。
続きます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

その婚約破棄、本当に大丈夫ですか?

佐倉穂波
恋愛
「僕は“真実の愛”を見つけたんだ。意地悪をするような君との婚約は破棄する!」  テンプレートのような婚約破棄のセリフを聞いたフェリスの反応は?  よくある「婚約破棄」のお話。  勢いのまま書いた短い物語です。  カテゴリーを児童書にしていたのですが、投稿ガイドラインを確認したら「婚約破棄」はカテゴリーエラーと記載されていたので、恋愛に変更しました。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

堕とされた悪役令嬢

芹澤©️
恋愛
「アーリア・メリル・テレネスティ。今日を持って貴様との婚約は破棄する。今迄のレイラ・コーストへの数々の嫌がらせ、脅迫はいくら公爵令嬢と言えども見過ごす事は出来ない。」 学園の恒例行事、夏の舞踏会場の真ん中で、婚約者である筈の第二王子殿下に、そう宣言されたアーリア様。私は王子の護衛に阻まれ、彼女を庇う事が出来なかった。

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

【完】断罪イベントが始まりましたが破滅するのは私ではありません2

咲貴
恋愛
王立魔法学園の卒業パーティー。 卒業生であり、王太子ルーファスの婚約者である公爵令嬢のジェシカは、希少な光属性で『白百合の乙女』である子爵令嬢のユリアに断罪されそうになる。 身に覚えの無い罪を認めるように言われ、絶体絶命かと思われたその時……。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

処理中です...