本気ですか?お義姉さま

たかはし はしたか

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とある夜の小話

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子供の頃のわたしについて知りたいって。
セナがそんなことを言うのは珍しいね。
普通よ普通。
下町で生まれ育った平凡な平民だったわ。
なんでもいいって言われても、うーんそうねぇ。
わたしの一番最初の記憶は斜め下からお店のキッチンに立つ母を見ているものね。
トントンって包丁で何かを切っているの。
赤ちゃんカゴの中にいるわたしは野菜の屑とか、落ちてきたら嫌だなーって思ってるの。
ほんとよ。
それが最初の記憶。
あそこはね、母の最初のお店。
本当に狭くて小さくて、カウンターを潜って入るキッチンとカウンターしかないの。
椅子なんてないの、立ち食いのお店。
元々母は実家が小さな商売をしていたの。
主に糸を扱う商売だったの。
母は12になるまで一人っ子で、後継だからって学校に通いながら商売を手伝ってたんだって。
あのね、知ってると思うけど平民はだいたい基礎の読み書きだけ教わったら働き始める。
学校に通って習うものもいるし、家族に教わるものもいる、あと働き先で教わることもあるわね。
だけど、13になる直前に弟が生まれたの。
それで自分で商売を始めようと思ったんだって。
でもほら、子供ってなかなか無事に成長しないでしょ。
だから3年待ったんだって。
トーマスおじさんが3歳になったときにちょうどわたしを出産して、それまで貯めたお金でお店を出したってわけ。
だから実はお店は実家のその頃使わなくなってた倉庫の一部を間借りしたんだって。
だからわたし子供の頃はトーマスおじさんとよく遊んでたの。
まあ、遊んでもらってたとも言うけど。
えっとね、鬼ごっことか、かくれんぼとか。
商売の倉庫とかあるから、隠れるところいっぱいあるのよ。
かくれんぼは大抵、ご飯だよってどちらかの親が探しに来るまで終わらなかったな。
だって、見つからないんだもの。
えっとね、かくれんぼしてるといろんなものが見られたの。
あ、この話はなし、セナにはちょっとまだ早いから。
えっと、えっと、平民は結婚なんてないから、いろいろと、ね。
以上この話は終わり。
終わり。
えっとね、友達はいっぱいいたの。
ローイでしょ。
アマンダでしょ。
マリー、マイン、マーサ、マギーの姉妹とか。
ジャスティン、サマンサ、サミー。
他にもいっぱい。
そうそう絶対外せないのがロカ。
器用になんでもこなすんだよ。
どんな子って、そうね、みんなの憧れの子かな。
男の子と女の子がいるの。
二人ともロカなの。
目が綺麗なの。
光の加減で色が変わるんだ。
日暮れに見るオレンジ色の瞳が大好きだったな。
みんなそれぞれ家も色々だからいっぺんに集まって遊んだりはしないけど、逆に必ず誰かは居たから。
そうそう木登り。
これはわたしの周りではできない子はいなかったわ。
季節が来たら、木の実を取ったり果物をとっておやつにしたの。
もちろん、よそのお家の庭の木よ。
だから取り尽くさないとか、その季節最初の実はとらないとか、その場で食べ切れるだけとか、ルールはあるの。
怒られることもあったけど。
そうそう、今でも木登りは得意よ。

あらもうこんな時間。
だめよ寝ないと。
またいつでも話してあげるから。

おやすみなさい。


大丈夫よ、ずっと、朝になるまでここにいるから。
ふふふ、そんなことないわ熱が出てちょっと気が弱くなっているだけ。
熱が出ると誰でも心細くなるものだもの。
安心して眠りなさい。
いいのよ、私はセナのお姉さんなんだから。
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