上 下
4 / 4

3

しおりを挟む
朝目を覚ます。

自分の左手が見えた。

いつもだいたい定刻。
ミリオリーナの生活は規則正しい。
目が覚めるとサイドテーブルのベルを鳴らす。
するとミリオリーナ付きのメイドがやってきて、まずはベットでお茶を飲むのが習慣であった。
が、今朝はなんだかいつもと違った。
目を覚ますと、なぜ他自分の左手が見えるのだ。
なぜかしら。
ミリオリーナはひどい違和感を感じた。
見覚えのある自分の左手。
手のひらを下にして、ひらりひらりと揺れている。
なぜ顔の前に左手をあげているのかしら。
そう思うが思うように動かせないことに気がつく。
どういうことかと動揺していると、左手は握ったり開いたりいわゆるグーパーを始めた。
どういうことなのだろう。
肩からちゃんと手は繋がっているのに、ミリオリーナには動かすことができない。
手を動かすという、普段なら意識する必要すらない何気ない動作ができない。
ミリオリーナは寝たままではあったが血の気が引く気がした。
昨年大叔父様が脳梗塞を起こした時、片方の手足が自由に動かせなくなったと言っていた。
まだ子供と言ってもいい若い自分の身にももしやそんなことが起こったのだろうかと、不安になる。
そっと左足を動かしてみる。
膝を曲げて、伸ばす。
足首を曲げて、伸ばす。
ミリオリーナの動きに合わせて寝具が盛り上がる。
出来る。
動かせる。
ほっといつの間にか入っていた体の力を抜く。
だが改めて、ではどうしたことだろう。
左の方から先の感覚がない。
「ひゃっ」
変な声を出してしまった。
右手で左手を触ってみると、いきなり掴まれた。
メイドが来ないかとヒヤリとしたが、大丈夫であったようでほっとする。 
左手が右手を握り込むように動いたのだ。
ぺたぺたと右手を確認するように動く左手。
はっきりと意思を持っているように思える動きだった。
何がどうなっているの。
左手がいきなり右手を離して、頬に触れてきた。
一瞬悲鳴をあげそうになったが、なんとか飲み込んだ。
まるで顔の形を確かめるような動きで、左手が動く。
自分の手であるはずなのに、まるで違う生き物に触れられているように感じる。
何がどうなっているの。
側から見ると、朝目を覚ました令嬢が、自分の顔を触っているだけである。
だが密かにミリオリーナはパニックを起こしていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...