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第三章 最強への道

40:お店

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 店を出す場所はもう決めてある。
 王都パルティアから街道を東に二日程度進んだ場所だ。

 王都が近いせいで人の往来が活発。
 加えて、その周辺はダンジョンがよく出現する。
 なので冒険者の客がやって来ると見込めた。

 俺が作りたいのはダンジョン攻略に役立つアイテムや武具だ。
 生産スキルの練習がてら余ったものを売るには、冒険者相手が一番いい。
 中級以上の冒険者はそれなりにお金を持っている。金払いのいい客になってくれるだろう。

「よし。建物はこんなもんだな」

 夏の青空の下、できたての小屋の前で俺は腕組みをする。
 王都の大工に頼んで建ててもらった家だ。
 ほとんど小屋レベルの小ささだが、街道に面した部分が店になっている造り。

 ついに俺も家持ちになった。小さいながら我が家だ!

 家はリビング・ダイニングの他にベッドルームが一部屋、それに店のスペースしかない。
 狭いのでベッドルームに三段ベッドを設置してみた。
 はみ出た人はリビングで寝てもらおう。
 男女の過ちとかは、まあ、奴隷契約があるので起こらんだろ。

 狭すぎると文句を言われるかと思ったが、この小さな家は好評だった。

「わたしたちのお家ができるなんて、素敵です!」

 エリーゼが言えば、

「いい家だ。雨風がしのげて、雨漏りもしない」

 農業スキルのイザクが続ける。

「わたくしどもにはもったいないですよ」

「ここに住むの? 怖い人、来ない?」

 錬金スキルのレナと少年のエミルも口々に言った。

「ベッドで寝られるだけ、老骨には大助かりじゃのー」

 宝石加工のバドじいさんは、お気楽な口調である。

「ガウ!」

 最後にクマ吾郎が楽しげに鳴けば、みんなが笑った。
 俺は声を張り上げる。

「みんな、これから改めてよろしく頼む。しっかり働いてしっかり稼いでいこう。頑張りには報いるつもりだ」

「はい!」






 それから各自の仕事分担を決めた。
 家の裏手は平地になっている。
 農業スキル持ちのイザクはそこを耕して畑にしてもらう。
 今すぐは無理でも、今年の後半や来年に収穫ができればいいと思う。
 子供のエミルは畑の手伝いだな。

 他の生産スキルの奴隷たちはどんどん腕を磨いてもらう。
 今までのダンジョン攻略で集めた素材がすでに溜まっている。
 素材は家の横の物置に入れた。
 それらを使ってアイテムを作ってもらうつもりだ。

 エリーゼは裁縫スキルを高めながら、奴隷たちの仕事の管理をしてもらうことにした。
 彼女はコミュニケーション力が高くて、奴隷たちから信頼されている。
 俺のスケジュール管理をしてくれていたので、そっち系の仕事も得意なのだ。
 店の販売や帳簿付けも彼女が中心になって進める。
 メイド姿で有能に働くエリーゼは、本当に素晴らしい。メイド万歳。

 あとは食材の買い出しや料理、その他の家事などは手分けしてやってもらうことで話がついた。

 俺とクマ吾郎は今まで通りダンジョンの攻略に精を出す。
 これまでは金策メインだったが、これからは素材採集をもっと積極的にやるつもりだ。

 鍛冶スキルは習得したものの、実際に手を出すのはもう少し先になる。
 というのも、鍛冶はハンマーやら金床やら溶鉱炉やら、設備が必要になるからだ。
 今の家じゃ狭くて置き場がない。
 いずれ鍛冶場を作らないといけないな。






 そうして回り始めた新しい生活は、順調なスタートを切った。
 俺とクマ吾郎がダンジョンで採集してきた素材は、レナが錬金術でポーションに、バドじいさんが宝石加工で護符やアクセサリーにしてくれる。
 どちらもまだそんなに品質は高くない。
 が、冒険者が多く行き来する場所に店を出したのが当たりだった。
 ダンジョン攻略の前後に立ち寄る冒険者が予想以上に多くて、ポーション類はいつも売り切れ。
 護符とアクセサリーも上々の売上を記録している。
 護符とかアクセサリーは魔法の力を込めて作るんだが、壊れやすい。半消耗品なのだ。

 作れば作るほど売れるとあって、レナとバドじいさんのやる気がアップした。
 毎日たくさんの生産をこなして、腕もぐんぐん上がっている。

 そんなある日、俺がダンジョンから帰るとエリーゼが話しかけてきた。

「ご主人様。盗賊ギルドのバルトさんから手紙が届いています」

「バルトから?」

 久々に聞いた名前に首をかしげながら、手紙を開いた。

『親愛なるユウへ。

 きみが店を持ったこと、たいそう繁盛している話を聞いたよ。
 もうならず者の町に戻る気はないのかな。
 盗賊ギルドの宝石納入のノルマが滞っていて、このままじゃ追放扱いになってしまうから、心配になって手紙を出した。
 もし盗賊ギルドに席を残す気であれば、小包でいいからノルマを納めるように。

 優しい先輩のバルトより。

 追伸。店の警備はしっかりやったほうがいいよ。
 人里離れた場所の戦闘員がいない金庫なんて、狙ってくれと言っているようなものだから』

「内容はいかがでした?」

 エリーゼが心配そうにしているので、俺は笑ってみせた。

「盗賊ギルドのノルマの確認だったよ。小包で宝石を送れってさ。手配してくれるか?」

「はい、ただちに」

 エリーゼはメイドスカートのすそをひるがえして準備に行った。

 宝石類はバドじいさんの宝石加工スキルでよく使うので、それなりの数をストックしている。
 滞納してしまったノルマ分を納入しても特に問題ない。

 それよりも気になったのは追伸の部分だ。
 確かにこの家の奴隷は戦える人が少ない。
 エリーゼが弓を、イザクが斧をちょっと使える程度だ。
 俺とクマ吾郎の留守中に、強盗に襲われたらかなり危ない。
 この店も徐々に有名になって、客足が増えたからな。

 バルトの言い草はいやみったらしいが、助言は適切だった。感謝しておこう。

 そうして俺は再び王都の奴隷市場に行って、女戦士奴隷のルクレツィアを買ってきたのだった。
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