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第一章 理不尽の始まり

13:グミダンジョン2

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 通路を戻ってクマ吾郎と合流する。
 周囲の安全確認をした上で、ステータスを開いてみた。


 名前:ユウ
 種族:森の民
 性別:男性
 年齢:15歳
 カルマ:30

 レベル:4
 腕力:4
 耐久:3
 敏捷:4
 器用:3
 知恵:1
 魔力:3
 魅力:1

 スキル
 剣術:0.5
 盾術:0.4
 瞑想:1
 投擲:0.2
 木登り:0.9
 魔道具:1


 おぉ? この短期間で腕力や敏捷が上がっている。
 やはり魔物と戦うのは、効率的なレベルアップとステータスアップになるらしい。
 何匹ものグミに剣でトドメを刺したせいか、剣術もけっこう上がっている。
 この調子でいくぜ。

 さっきの戦闘で消費したのは毒薬と麻痺薬だけだ。
 どっちのポーションも地下一階で拾っていたので、ダンジョンに入る前と比べて手持ちは減っていない。
 一応、まだ未鑑定状態の麻痺ポーションに『マヒ』とメモ書きをつけておく。

 アイテムを駆使すれば弱い俺でも戦えると分かった。
 できればもっとアイテムの種類を知って、さらに生かしたい。
 しかし鑑定手段がまだない。ジレンマである。

 そんなことを考えながら、地下二階の探索を進めた。
 地形を利用できる場所は利用して、広い部屋の中などどうしようもない場所はクマ吾郎の力を借りる。
 地下一階のときよりもクマ吾郎に負担をかけず、グミを殲滅できた。

 落ちていたアイテムは変わらず、ポーションと巻物が多い。杖は一本だけ拾った。
 装備品は一個もない。ちぇ。

「さて……。地下三階に行く前に、アイテムの整理をしておくか」

 俺は荷物袋からアイテムを取り出し、床に並べてみる。
 地下一階と二階で拾った分がずいぶん増えているな。
 うち、鑑定の巻物と推定したのと同じ種類の巻物が、二本増えていた。

 ちょっとした露店のようになったアイテム類を、クマ吾郎が興味深そうな目で見ている。

「一本は推定用として残すとして、二本は読んでみよう」

 問題はどのアイテムを鑑定するかだ。
 地下一階で拾った靴や杖も気になるが、やはりここはポーションだろうか。
 巻物は最悪、サザ村の広場でやったように試しに読んで効果を推測してもいい。
 けどポーションは駄目だ。しれっと毒薬だの硫酸だのがまじっていて、恐ろしくて試し飲みはできないっての。

「これとこれにしよう」

 白色と青色のポーションを手に取った。
 この二種類はたまたま複数個を拾えたので、三本ずつある。
 鑑定の巻物を読むと――

『戦いのポーション。数分間、飲んだ者の能力を向上させる。腕力、器用にボーナス』

『混乱のポーション。数分間、飲んだ者を混乱させる』

「へぇ~!」

 戦いのポーションは味方が飲んでパワーアップするやつ。
 で、混乱のポーションは麻痺と同じように敵に投げつけるやつだな。
 どっちも上手に使えば戦力アップ間違いなしだ。鑑定して良かった。

「よし。じゃあ地下三階へ行くぞ」

「ガウ!」






 地下三階へ降りると、今までと空気が違うことに気づいた。
 上手く言葉にできないが……張り詰めた緊張感が漂っている。

 そういえば、ライラばあさんが言っていた。「ダンジョンはボスがいる」と。
 この階にボスがいる可能性が高い。

「クマ吾郎、慎重に行こう。敵を見つけても突撃はやめろ」

「ガウ」

 クマ吾郎の肩をぽんと叩いて、俺も気を引き締めた。
 部屋にいるグミを片付けて次の場所に行く。
 そうして何個か部屋を確認していると、とうとう見つけた。

 通路の中からそっと覗いてみる。
 何匹もの白と赤グミを取り巻きにして、黄色……いや金色か。金色に輝くグミが部屋にいる。

「どうするか……」

 俺は考えを巡らせた。
 クマ吾郎と二人とはいえ、正面切って殴り合うには敵の数が多い。それに金色グミの強さも未知数だ。
 できるだけ安全策を取って、万が一の場合は撤退も視野に入れながら戦おう。死んでしまったら人生終了だからな。

 なら、やることは地下二階と同じだ。
 通路に引き込んで毒薬や硫酸を投げつけ、グミどもの体力を削る。
 金色だけは俺では攻撃を受け止めきれない可能性があるので、クマ吾郎と一緒に戦う。

「よし。これで行こう」

 クマ吾郎に作戦を伝えて手前の部屋で待機してもらう。
 俺はボスがいる場所へと踏み込んだ。






 金色グミのいる部屋に踏み込んだ途端、ヤツは俺に気づいた。
 取り巻きを引き連れて一直線にこちらに跳ねてくる。
 危ねえ! さっきはそっと通路から見ただけだったから、何とか気づかれないで済んだんだな。
 俺は慌てて通路に引っ込んだ。

 グミどもが押し合いへし合いしながら通路に殺到した。
 ボスの金色グミの前に五匹、後ろに二匹ってとこか。
 ここまで来た以上は総力戦だ。ポーションを惜しむつもりはない。
 俺はありったけの毒薬と硫酸を投げつけた。

「ピギャ!」

「ピキー!」

 一番弱い白グミたちは、硫酸をかぶったらそれだけで溶けて死ぬ。
 生き残った赤グミもかなり弱っているので、剣で斬ってトドメを刺す。
 わずかだが剣術スキルが上がっているおかげで、剣の動きが前よりスムーズだ。

 それを何度か繰り返しながら、俺は少しずつ通路を下がっていく。
 こういう戦い方をするなら飛び道具がほしいところだが、今はないので諦めよう。

 通路を下がりきって手前の部屋に出た。

「クマ吾郎、これを飲め」

 クマ吾郎に戦いのポーションを飲ませて、自分でも飲んだ。
 カッと腹が熱くなり、力が湧いてくる。

 金色グミが通路から出てきた。
 俺とクマ吾郎を見ると、弾丸のような勢いで体当たりをかましてくる。赤グミの比ではない威力だ。

「ぐっ……!」

 俺はかろうじて盾で受け止めたが、尻もちをついてしまった。
 金色グミがまたしても飛びかかってくる。
 その体の一部が伸びて、爪のように鋭くなっている。
 まずい、やられる――!

「ガオ――ッ!!」

 俺の前にクマ吾郎が立ちふさがった。
 クマ吾郎は後足で立ち上がって、飛びかかってきた金色グミを叩き落とした。

「助かった!」

 俺はその間に立ち上がって、ポーションを取り出した。

「さあ、クマ吾郎。反撃するぞ!」

「ガウッ!」
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