強くて転生わからせ魔戦王!~最強魔力を得た私は最年少で女帝を目指す。もう大人?いいえ三歳児です。ざぁこな大人どもを逆に蹴散らし屈服無双!

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
45 / 45

第45話 ゆえあって私、世界女帝とあいなりました

しおりを挟む
 二年間にも渡る大遠征が遂に終わった。
 世界三大陸の魔物すべてを駆逐し尽くした事によって。
 まだ孤島や山岳部、未踏地のダンジョンは残っているけれど、その攻略ももう時間の問題だろう。
 各地に防衛戦力も残してきたし、私達がいなくても充分にやれるはず。

 そこで私達精鋭部隊はひとまずの帰還を果たした。
 懐かしき故郷アウスティア王国への凱旋帰国である。

 そんな祖国も、二年も経てば大きく変わる。
 農業大国として生まれ変わったという事で、少し内地へ進めば農地ばかりとなっていて皆の驚きを誘ったわ。
 王都グランマルスなんて周囲の畑の方が規模が大きくなっていたし。
 それどころか、街中や城周りの庭園にさえ畑が作られていたんだからもうビックリよね。

 そんな街に帰れば、多くの市民が大きな声援で迎えてくれた。
 政治を任せていたトゥルディーヨも随分と老けていたわ。相当苦労したみたい。
 ま、彼にはこれからも頑張ってもらわないといけないのだけど。

 ちなみにそのトゥルディーヨはこうも呟いていたわ。「あと二~三年は掛かると思っていました」ってね。
 私達の事を見くびり過ぎよ。
 でもまだ完全に終わった訳では無いから、しばらくはこの国を農業大国として引っ張ってもらうとしましょうか。

 ――で、女王の私はと言えば。

「本当、見ない間にこんなに大きくなっちゃってぇ。もう完全にレディになっちゃったわねぇ~、もう可愛いっていうより綺麗って言った方がいいかしらぁ」
「そさなぁ、もうずいぶんとママに似てきたっぺのぉ!」
「ふふ、まぁ見た目だけだけどね。マルルちゃんも大きくなっててびっくりしたわ」
「ごめんねミルカちゃん、最初、誰だかわからなくて」
「ううん、仕方ないよー。二年も会えなかったし、別れた時はまだ四歳だったし」

 こうして久しぶりの故郷シルス村に帰って来ていた。
 凱旋も済ませたし、グランマルスに居すわる理由も無いしね。
 それで家族と久々の対面に華を咲かせていたってワケ。

 パパ上もママ上もあいかわらずだ。
 今では以前の倍の農地を管理しているらしく、忙しい日々を送っているそう。
 でも実は今、ママ上のお腹の中には新しい命が宿っているんだって。
 弟か妹か……産まれる時が待ち遠しいー!

 マルルちゃんは大きくなって、ちょっと奥ゆかしくなっていた。
 久しぶりに会ったらママ上の後ろに隠れたりしてね。
 ひかえめで、でも優しい所は変わらない可愛い女の子に成長したみたい。
 それはそれでとても可愛らしいのでグッドよ、グッド。

 そんな再会も果たして、今は仲良く昼食中。
 本当に久しぶりな家族との団らんで、なんだか妙に感動してしまった。

「あら、ミルカちゃん泣いてるの?」
「ご、ごめん、なんだか本当に懐かしくっでぇ……」
「あらあら、世界最強の女王様がこんな所で泣いちゃうなんてねぇ~ふふっ」
「泣かないで、ミルカちゃん」
「うん、ごべんねぇマルルぢゃあん……フグッ、うぇぇ~……」

 ここまで色んな事がありすぎた。
 自分が女の子だって気付いてから、何もかもがあっという間で。
 でも今ではそんな思い出が全部遠い過去のように思えて、とても懐かしい。

 あの時に過ごしていた日々がまた戻って来た。
 そう思えたらもう、涙が止まらなかったんだ。

 だからこそ、戦いに行って良かったとも思う。
 もう私の生活を邪魔するような脅威は全て取り払えたから。
 こうして胸を張って帰ってこられたから、堂々と泣く事ができるんだって。
 
「ミルカ様! やはりここでしたか!」
「――トゥルディーヨォォォ!! やはり貴様はここで滅殺する!」
「うおあああーーーッ!!?」

 しかし世界はそんな泣き崩れる暇さえも与えてはくれない。
 まぁたこのタイミングで奴が来たのである。
 なので存分に殺意を籠めたナイフを投げつけてやった。

 ただ幸か不幸か、ナイフはトゥルディーヨの頬を掠め、家を削り取って彼方へ飛び去って行ったが。

「我がプレザンモーニンとファミリーズディナーのみならず、今度はクライングランチもかァ! 朝昼晩コンプで汚すなど罪は重いッ! もはや万死に値するッ!」
「おおおお待ちください女王陛下! お気持ちはわかりますがお伝えせねばならぬ事が――」
「問答無用! 死ねッ! 死ねえッ! 私の涙を見た以上、生きては帰さんッ!」
「うッおおおォォォ!!!??」

 だが無数の魔物を殲滅してきた私がこの程度で諦めると思うな!

 ゆえに玄関にありったけの食器や食材がズドドドンと突き刺さる。
 ナイフやフォークのみならず、スプーンや皿、トマトやレタスさえ私の手により刃物と化したのだ。

 ――とそんな時、私の頭にゴツンと衝撃が。

「あいたっ!?」
「だめよぉ、ミルカちゃん。それ以上やったら家が壊れちゃうわぁ」
「は、はぁい……」

 さすがにやり過ぎてしまったらしい。
 ママ上からのオタマ一撃による制裁が下され、ようやく冷静さを取り戻す。
 いけないわね、戦いに明け暮れすぎたせいで怒りの沸点が落ちたかしら。

「た、助かりましたメーネス殿」
「いえいえ~。でもここは〝謁見の間〟ですからねぇ、ちゃんと礼儀は通しましょうねぇ?」
「えっ、それは一体どういう意味で……」
「外に看板を立てておいたでしょ?〝真ミルカ城はここです〟って」
「さ、さようでございましたか。それは失礼いたしました!」

 まぁいいわ、ママ上に免じてここは許してあげましょう。
 わざわざトゥルディーヨ自身が訪れたという事は、なにか大事な用事があるって訳でしょうしね。

 そこで私達はいつかの時と同様に、机を挟んでトゥルディーヨと対面する。
 なんだかこのシチュエーション、とても不安しか感じないけども。

「それでですな……実は先日、各国の首脳と話し合いがあったのです」
「その流れならもういい、帰って」
「いいえそうはいきませぬ。で、話し合いの結果、〝国家統一連合体〟という組織を設立する事が決まりました。つまる所の、各国の監視を執り行う組織ですな」
「ほーら、きたよ。その流れ」

 で、不安はみごと的中。
 トゥルディーヨが自慢げに微笑み、私にウィンクと視線を送ってくる。
 この男、どうやらこの二年間で随分とあか抜けたみたいね。とてもウザいわ。

「そこで我々はその組織の代表としてミルカ様を選んだという訳なのです」
「嫌よ。私はもう農民に戻るの。シルス村で静かに暮らすの」
「そうはいきませぬ。確かに英雄が増えて貴女様が戦う必要はなくなりましたが、貴女以上の象徴はまだいませぬゆえ!」
「絶対に嫌! もうマルルちゃんと離れ離れになるのは嫌なのォ!! もう忘れられるのは絶対に嫌なのォォォーーー!!!」
「あっミルカちゃあん、どこ行くのぉ~~~!?」
「やっぱり気にしてたんだミルカちゃん……」

 けどもう私の役目は終わったわ!
 戦う必要もなくなったんだからほっといて!

 そう訴えんばかりに私は家を飛び出した。
 そりゃもう全速力で畑をぶち抜くくらいパワフルに。

 そうしたらなんとトゥルディーヨが必死にシュバって追いかけてきていたのだ。
 なんなのコイツ!? なんでそんな足速いのよ!? 戦いに来なかったクセにィ!

「いつかこんな日が来ると思いましてェェェ! 脚力だけは鍛えておきましたァァァ!」
「なんで無駄にそこだけ鍛えてるのよォォォーーー!!!」
「女王陛下が逃げる事などォ! 私にはお見通しでしたからねェェェ! はぁい捕まえまっしたァァァ!! では今日からミルカ様は世界女帝に決定でェ!」
「ア"ーーーーーーッ!!?」

 ――そう、たった二年で人はこうも変わる。
 だったら世界も、国も、風習だって。

 そうして変わり始めれば、いつか意識だって変わっていくだろう。
 もしかしたその先には、人同士で争う事の無くなった真の平和が待っているかもしれない。

 私はそんな世界が訪れるのを楽しみにしながら生きていきたいと思う。
 きっと誰よりも世界を見つめ続ける立場となるのだろうし。
 テメネス皇帝からもその役目を託されたから、きっと責任重大ね。

 ならデュランドゥにもトコトン付き合ってもらいましょうか。
 その責任を押し付けてくれた以上は否が応でもね。

 それで彼の望んでいた未来に辿り着けるなら、私にとっても本望なのだから。



 だから私は受け入れる。
 デュランドゥ達の想いも、世界の願いも。
 人々が真に望む未来へと、正しく導けるように。

 そして唯一無二の女帝となって、これからも世界を守り続けるとしよう。
 誰かが私にそう望み続ける限り。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

あきさけ
2023.01.10 あきさけ

第10話で叔母上の肩書きが第一級国家錬金術師になっておるでごわす
錬成術師だったのでは?

日奈 うさぎ
2023.01.10 日奈 うさぎ

おや……!指摘ありがとうございまする!
時々間違えてしまうこの名前……_(:3 」∠)_

解除

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。