強くて転生わからせ魔戦王!~最強魔力を得た私は最年少で女帝を目指す。もう大人?いいえ三歳児です。ざぁこな大人どもを逆に蹴散らし屈服無双!

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
42 / 45

第42話 帝国城に降り立つ

しおりを挟む
 私はこの日までに、幾度となく帝都中心部への侵入を試みてきた。
 けれど魔物達に阻まれてそれも叶わず。
 ただ食料を投下する事しかできなかったのだ。

 けれど人が生きている事だけはわかっていた。
 遥か上空からでも彼等の営みを見る事ができたから。

 中心部は分厚い鉄壁と、魔防領域という魔力壁に守られている。
 聖護防壁に匹敵する防御を誇る代物ね。
 おかげで魔物は一切侵入できないというワケ。
 
 でも人なら侵入が可能。

 だから今、私は鉄壁を乗り越え、頂上の魔力壁をもすり抜ける事ができた。
 遂に中央部へと侵入を果たしたのである。

 で、そのままドレスギアの滑空飛行で地上へと舞い降りる。
 するとさっそく、私に気付いた民衆数人が集まって来た。

「あ、あんたは一体……?」
「私は救世連合の代表、アウスティア王国女王ミルカです。皆さんを魔物の脅威から救いに来ました」
「救世連合……もしかして、定期的に食料をここへ落としてくれた……?」
「えぇ、そうです。そして今日、ようやくここに来られました」

 どうやら着る物さえ無いようで、皆もうほとんど裸だった。
 おまけにいえば、誰しもが痩せこけて干からびそうになっていて。

 やはり食う物に困っているみたいね。
 地面にも草らしいものは一切生えていないし。
 食べれそうな物は全部食べ尽くしてしまったのだろう。

「もうすぐ魔物を殲滅し、門が開けるようになります。それまでどうか耐えてください。それと、この食料で今しばらく我慢していただけますか?」
「あ、ああ……ありがたい……!」
「ちゃんと皆で分け合ってくださいね。本隊が合流すればもっと提供できますから、決して奪い合いにならないよう」
「ああっ! ああっ……!」

 下手すればあと数日でこの人達は餓死していたかもしれない。
 本当にギリギリだったと思う。

 でも何とか間に合う事ができたんだ。

 それで私は意気揚々と背負っていた荷物を降ろし、鞄を開く。
 そうして取り出した食材と水ビンを一人、また一人と渡していった。

 本当は料理でもしてあげたい所だけど、そうも言っていられない。
 渡された人達はもうその場でかぶりつくくらいに飢えていたから。
 それでも「おいしい、おいしい!」と喜んでくれているのがまだ救いね。

「な、中にもいるんだ。食べさせたい人達が」
「でしたら残りも持って行ってあげてください。できる事なら調理して。調味料も入っていますから味わってくれると私も嬉しいです」
「本当に、ありがとう……! 貴女はまさしく救いの女神だ……!」
「その礼はぜひとも、これからやってくる私の仲間達にも伝えてあげて欲しいわ」
 
 あとは鞄ごと荷物を彼等に託し、私もまた城へと赴く。
 中がどのようになっているのか確かめるためにと。

 それでいざ足を踏み入れると、まず腐臭が鼻を突いた。

 おそらくは死者がいた、あるいはいるのだろう。
 けど弔うような体力や気力も残っていないから放置せざるを得なくて。
 結果、腐臭が染み付くほどに空気がよどんでいる。
 最悪の状態ね。

 そんな城のエントランスは居住空間になっているみたい。
 テントが点在していて、私の存在に気付いた住人が顔を覗かせている。

「皆さん、食料を持ってきました。奪い合いにならないよう分け合って食べてください!」
「食料!?」「た、食べもんだ!」「わぁぁ!」

 皆限界まで痩せこけているから性別も年齢もわからない。
 ただ子どもも大勢いるし、中にはまだ年寄りだっている。
 人数で言えば一〇〇人を越えるかどうかといった所だろうか。
 もうこれだけしか残っていなかったんだ……。

 生き残った人々が次々と外へ流れていく。
 先の者が必死に引きずる鞄の下へと向けて。
 ただただ空腹を満たしたいがために。

 そんな人々を、私は横目で眺めつつまた進み始めた。
 誰しも食料に夢中で、私の事なんて気にも留めていないようだったから。

 でも変に絡まれるよりはいいわ。
 私には他にもやりたい事があるのだし。

 そのままエントランスを抜け、螺旋階段をゆっくりと登る。
 たまった埃が舞い散る中、ほんの少しむせながら。
 遂にはたまらず袖で口と鼻を覆ったりして。

 それだけ、この上階には長いこと誰も足を踏み入れていないのだろう。
 その証拠に、中層階へと辿り着くと途端に「しん……」としてしまった。
 階下の声が届かないくらいに重厚な場所だから。

 とても広くて綺麗な大理石の通路だ。
 きっと昔はここにも兵士や貴族が歩き回っていたに違いない。
 もうその面影は微塵も残っていないけれど。

 そう想いを馳せながら道を進む。
 ただただデュランドゥの記憶に従って。
 彼の記憶が進むべき道を差し示してくれているのだ。

 これから私が赴くべき場所へと。

 ……それにしてもとても広い城ね。
 壊れる前のアウスティア王国城よりももっと。
 こう歩いているだけで飽き飽きしてしまいそう。

 けど静寂の中を歩くのがなんだか落ち着けて、気付けば目的地に着いていた。
 謁見の間のさらに奥にある〝帝位の間〟と呼ばれる部屋へと。

「誰だ」

 しかしその部屋に踏み入れた時、誰かの声がした。
 もう誰もいないと思っていたのに。

 それで咄嗟に振り向けば、その者は確かにいた。

 老人だ。
 もう骨と皮だけとなったような老人が部屋の中央にて座していたのである。

「わたくしはアウスティア王国の女王ミルカと申します」
「アウスティア……そうか、ようやく時代が変わったか……」

 ただしその声は今にも事切れそうなほどに小さい。
 それに身体も微動だにしないままで、姿はもはや彫刻品のよう。
 これではまるで即身仏じゃない。

 ――そんな死に掛けた老人の正体を、私はもう知っていた。

 その名は、現ガウリヨン皇帝テメネス。
 異界送りの魔戦王デュランドゥをもっとも間近で見送った者。

 新聞に載っていた因縁ある者の顔を、私はしっかりと覚えていたのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...