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第31話 触手なんてごめんだわ!
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城から城下町へは二つの城壁が庭園を挟んで存在し、さらにその先には堀もある。
しかしシャウグハイの脅威の巨大さを前には無意味で、もうすぐ第二の城壁へと到達しようとしている。
防衛部隊はそんな相手と距離を盗り、庭園の端にて応戦中だ。
そんな前線へ最初に辿り着いたのはママ上叔母上コンビ。
城壁の上に降り立つと、さっそくと強力な魔導式を組み始めていた。
「姉さん! 久々にやるわよ!」
「えぇ、いつでもいいわよぉ!」
姉妹だからこそできる双紋魔導式だ。
並大抵の魔術師では扱えない、相乗効果が発生する最上位魔術である。
そんな最高峰の魔導式が今、光を放つ。
「「悦醒たりし極智の光よ!!」」
解き放たれたのはまさに光の柱。
城門の高さにも負けないほどに太い光線が撃ち放たれたのだ。
その究極の光がシャウグハイの胴体へと浴びせられる。
全体を覆い尽くさんばかりに激しく散光させながら。
――けど、これじゃダメだ……!
「ギギギ、ギュウイッ!!」
「「ッ!?」」
勢いが、それでも止まらない。
すさまじい光の波動で押されているはずなのに、物ともしていないのだ。
そう、こいつの魔耐性は私の獄炎を一切受け付けないほどに高いのだから!
「ヤ、ヤバ!」
「これは~……ダメねぇ。イーリスちゃん、逃げるわよぉ」
「格好良く出てきたのに台無しィ!」
攻撃に耐えたシャウグハイは、遂にはその勢いのまま第二城壁へ到達。
ママ上達が飛び降りて退避する中、もろくも城壁を崩し落としていく。
幸い、ママ上達も防衛部隊も無事。
橋から堀を渡り、居住区へと移って今も応戦中だ。
さらにラギュース達も合流して戦力は倍化へ。
ただシャウグハイの勢いは当然変わらない。
普通の攻撃ではもう傷を負わせる事も叶わないみたいね。
だったら、私が切り込んでやる!
元寄生型なだけに、本来なら不用意な接近は危険だ。
しかし尻込みしていてはこの状況を永遠に変えられない。
そこで私はシャウグハイの頭上へ向けて飛び上がる。
そうして上空へと跳ね上がった所でドレスギアを変形させた。
全部位を集結させて構築した、巨大な刀へと。
「〝ドレスギア・ブレード〟ッ! こいつならあッ!!」
これは薄生地を硬質化させて並べた鋭利な刃。
その強度は現存する金属の中でもトップクラスだ。
しかも峰のフリルからの魔力噴出で推進力をも生みだす事ができる。
それら全要素によって高められた切断力ならば、もはや断ち切れぬ物は無し!
「はああああーーーーーーッ!!!」
今、その巨大な刃が振り下ろされる。
シャウグハイ目掛けてまっすぐと。
たちどころに刃が奴を打ち、切り裂く。
巨大な左肩を断ち切らんばかりに。
丸々とした胴をも巻き込み、深くズルズルと。
シャウグハイが奇声の叫びを上げる中で。
「――!?」
けどその途端に視界が影で埋め尽くされて。
それで咄嗟に見上げた時、私は恐怖を感じざるを得なかった。
その影の正体はなんと大量の触手。
黒くて柔軟な触手が、傷口から伸びて私に迫っていたのだ。
そこで私はすかさずドレスギアを元に戻し、一瞬で退避する。
一旦距離を取って体勢を立て直そうと。
――だったのだが。
「触手が、追ってくるッ!?」
まったく逃げ切れていなかったのだ。
なんと触手が私にも負けない速さで追って来ていたのである。
しかも今にも捕えようと周囲へ散らばるようにして。
「うっあああっ!!?」
そしてその触手が遂に私を捕らえてしまった。
ドレスギアごと、手足に幾本も絡み付いた事によって。
途端、手足にメキメキと痛みが走る。
すさまじい締圧力だ。
ドレスギアの変形をも許さないほどの……!
「がっ、あああッ!!? この、まま、ではッ!?」
そんな触手が遂には身体にまで狙いを定め、手足から這い寄って来ている。
まずい、このままでは奴に取り込まれてしまうわ!
そんな事になったらもう……!
そう恐れを抱いた時だった。
突如として、私の身体が自由を得る。
大量の触手がはね飛び、千切れていく中で。
「ミルカは、僕が守るッ!」
なんとエルエイスが飛び込んできて、触手をまとめて断ち切っていたのだ。
しかも次々と襲いかかる相手を鋭い槍さばきでことごとく刎ねていくという。
さらには触手を柄で叩き、その勢いでさらに跳ね上がる。
まるで棒高跳びのごとく、空をも飛ぶかのように軽やかと。
その勢いはもはや触手などでは止められない。
追う触手でさえ神速の槍で細切れにしていたのだから。
それもさらなる跳躍の素にして。
――確かにエルエイスは才能に蓋をしていた。
しかしその能力までが衰えた訳では無い。
エルエイスは元よりこう出来るほどに強いのだ。
それに、あの槍さばきは機械的に変形するドレスギアよりもずっと速い。
あの大量の触手を相手にするには私よりずっと適任だろう。
きっと彼もそれに気付いて、助けた上であえて引き受けてくれたのだと思う。
「まったく、あの男は……ふふっ」
なら私はまた別の方法を模索しなければならない。
この巨体を倒す決定的な戦術を。
今この限られた戦力で成し得る最良の手段を導き出すんだ!
しかしシャウグハイの脅威の巨大さを前には無意味で、もうすぐ第二の城壁へと到達しようとしている。
防衛部隊はそんな相手と距離を盗り、庭園の端にて応戦中だ。
そんな前線へ最初に辿り着いたのはママ上叔母上コンビ。
城壁の上に降り立つと、さっそくと強力な魔導式を組み始めていた。
「姉さん! 久々にやるわよ!」
「えぇ、いつでもいいわよぉ!」
姉妹だからこそできる双紋魔導式だ。
並大抵の魔術師では扱えない、相乗効果が発生する最上位魔術である。
そんな最高峰の魔導式が今、光を放つ。
「「悦醒たりし極智の光よ!!」」
解き放たれたのはまさに光の柱。
城門の高さにも負けないほどに太い光線が撃ち放たれたのだ。
その究極の光がシャウグハイの胴体へと浴びせられる。
全体を覆い尽くさんばかりに激しく散光させながら。
――けど、これじゃダメだ……!
「ギギギ、ギュウイッ!!」
「「ッ!?」」
勢いが、それでも止まらない。
すさまじい光の波動で押されているはずなのに、物ともしていないのだ。
そう、こいつの魔耐性は私の獄炎を一切受け付けないほどに高いのだから!
「ヤ、ヤバ!」
「これは~……ダメねぇ。イーリスちゃん、逃げるわよぉ」
「格好良く出てきたのに台無しィ!」
攻撃に耐えたシャウグハイは、遂にはその勢いのまま第二城壁へ到達。
ママ上達が飛び降りて退避する中、もろくも城壁を崩し落としていく。
幸い、ママ上達も防衛部隊も無事。
橋から堀を渡り、居住区へと移って今も応戦中だ。
さらにラギュース達も合流して戦力は倍化へ。
ただシャウグハイの勢いは当然変わらない。
普通の攻撃ではもう傷を負わせる事も叶わないみたいね。
だったら、私が切り込んでやる!
元寄生型なだけに、本来なら不用意な接近は危険だ。
しかし尻込みしていてはこの状況を永遠に変えられない。
そこで私はシャウグハイの頭上へ向けて飛び上がる。
そうして上空へと跳ね上がった所でドレスギアを変形させた。
全部位を集結させて構築した、巨大な刀へと。
「〝ドレスギア・ブレード〟ッ! こいつならあッ!!」
これは薄生地を硬質化させて並べた鋭利な刃。
その強度は現存する金属の中でもトップクラスだ。
しかも峰のフリルからの魔力噴出で推進力をも生みだす事ができる。
それら全要素によって高められた切断力ならば、もはや断ち切れぬ物は無し!
「はああああーーーーーーッ!!!」
今、その巨大な刃が振り下ろされる。
シャウグハイ目掛けてまっすぐと。
たちどころに刃が奴を打ち、切り裂く。
巨大な左肩を断ち切らんばかりに。
丸々とした胴をも巻き込み、深くズルズルと。
シャウグハイが奇声の叫びを上げる中で。
「――!?」
けどその途端に視界が影で埋め尽くされて。
それで咄嗟に見上げた時、私は恐怖を感じざるを得なかった。
その影の正体はなんと大量の触手。
黒くて柔軟な触手が、傷口から伸びて私に迫っていたのだ。
そこで私はすかさずドレスギアを元に戻し、一瞬で退避する。
一旦距離を取って体勢を立て直そうと。
――だったのだが。
「触手が、追ってくるッ!?」
まったく逃げ切れていなかったのだ。
なんと触手が私にも負けない速さで追って来ていたのである。
しかも今にも捕えようと周囲へ散らばるようにして。
「うっあああっ!!?」
そしてその触手が遂に私を捕らえてしまった。
ドレスギアごと、手足に幾本も絡み付いた事によって。
途端、手足にメキメキと痛みが走る。
すさまじい締圧力だ。
ドレスギアの変形をも許さないほどの……!
「がっ、あああッ!!? この、まま、ではッ!?」
そんな触手が遂には身体にまで狙いを定め、手足から這い寄って来ている。
まずい、このままでは奴に取り込まれてしまうわ!
そんな事になったらもう……!
そう恐れを抱いた時だった。
突如として、私の身体が自由を得る。
大量の触手がはね飛び、千切れていく中で。
「ミルカは、僕が守るッ!」
なんとエルエイスが飛び込んできて、触手をまとめて断ち切っていたのだ。
しかも次々と襲いかかる相手を鋭い槍さばきでことごとく刎ねていくという。
さらには触手を柄で叩き、その勢いでさらに跳ね上がる。
まるで棒高跳びのごとく、空をも飛ぶかのように軽やかと。
その勢いはもはや触手などでは止められない。
追う触手でさえ神速の槍で細切れにしていたのだから。
それもさらなる跳躍の素にして。
――確かにエルエイスは才能に蓋をしていた。
しかしその能力までが衰えた訳では無い。
エルエイスは元よりこう出来るほどに強いのだ。
それに、あの槍さばきは機械的に変形するドレスギアよりもずっと速い。
あの大量の触手を相手にするには私よりずっと適任だろう。
きっと彼もそれに気付いて、助けた上であえて引き受けてくれたのだと思う。
「まったく、あの男は……ふふっ」
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