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第9話 とても美味しい話があったのです
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実は数日前、領主一行が視察のためにシルス村へとやってきていた。
それも若い息子を連れて。
やはり聖護防壁があると農作業も容易だからな。
おまけに魔物由来の疫病も流行らない。
おかげでこの地で採れる作物は安定していて信頼も厚いという。
それで領主自らが年貢徴収のついでに顔を出したという訳だ。
辺境伯という位も持っているだけに、自身も相当な武の心得があるらしい。
その過程で私は領主ラギュース=ディオ=エルピオスの息子ジアンと出会った。
相手もまだ私の肉体年齢と同じ、あるいは少し年上といった所。
しかしもう恋というものを知っているようで、私に一輪の花を差し出してきたのだ。
なので目の前で食べてあげた。とても美味しかったです。
更にはその翌日、手紙を一枚よこしてきて。
その文面を前にして私はとある計画を閃いたのである。
「まずはこれを読んで」
その手紙は今、手元に。
叔母上へ説明するためにと持ってきたのだ。
そこで、その手紙を早速と差し出し読ませてみる。
「これは――三叉龍紋の蝋印ッ!? 読んでいいんです!?」
「いいからーどうぞー」
「では失礼して……『親愛なるミルカ様へ。花々が風に揺られてそよぐ季節がやってまいりました。我が屋敷にも美しき舞いの香りが漂い、心を穏やかにさせてくれます。しかしその花々も、黄金の野を妖精の如く歩く貴女の前には霞みのよう』――クッサ! もうクッサぁ!!!」
でもどうやら美しい文面とやらが相当に苦手らしい。
半分も読むまでも無く手紙を左右に振ってギブアップだ。
叔母上、すごいガサツだもんね。
男っ気とかまったくなさそうだもの。
「……まぁ何が書いてあるかというと、プロポーズです」
「そうでしょうね。でなければこんな大層な封なんてしませんし」
「えーミルカちゃん、ぷろぽーず、されたのー?」
「「キャーッ!」」
外野は大興奮だが、個人的にはまったく嬉しくありません。
まだ男だった頃の精神が強く、男性に興味を持てないのでね。
それに私は結婚して落ち着くつもりなど毛頭ない。
まだまだやりたい事は多いし、そもそもが自由人だから。
少なくとも力を取り戻し、落ち着きたいと思うまでは好きにさせてもらいたい。
「でも私は興味無いので断るつもり」
「もったいない……領主様の息子ですよ? 貴族なんですよ!?」
「だから叔母上に譲ってあげるの」
「うっ……」
だがこのチャンスだけはモノにせねばならない。
信頼にたる後見人を得られる又とない機会だからな。
なら私の願いを叶えるためにも、叔母上には生贄の羊ちゃんとなってもらおう。
「計画はこう。まず私と叔母上で領主様の息子に会います」
「はい」
「その後、二人きりになった所で洗脳します」
「いきなりやる事えげつなッ!」
「次に魅了魔法で叔母上を好きになってもらい、そのまま婚姻届けに調印します」
「アンタ間違いなく姉さんの娘だよ! 見紛うことなき実の娘だよ!」
やはり、すべてはこの美貌の成せるワザか。
罪深いな、美しきママ上の血を引く者というのは。フフン。
言われた通り、あの方の娘だからこそ成し得た計画だろう。
容姿に限らず性格も少しはこの身体に引っ張られているかもしれん。
私はこの性格、嫌いじゃないがな。
「あとは私が機を見て領主も洗脳あるいは懐柔するので、叔母上は楽しい貴族ライフを満喫してください」
「それ、ワタクシが結婚する意味あります?」
「あまり無いけど、した方が確実じゃない?」
「そうっすね……」
この際、叔母上には貞操を諦めてもらうとしよう。
まぁ相手もまだ成人前だからすぐに情事が起きるとも限らないけどな。
「ところで叔母上、男性経験は?」
「聞いてはいけませんそれだけは」
「うん、知ってた」
「おおお男なんて不要なのですよ。ワタクシは仕事一筋ですから!」
「ふかいトラウマを、かんじざるを、えなーい」
「「キャーッ!」」
叔母上が男性嫌いなのも承知の上だ。
パパ上を非難していた時もなんか怨恨を感じたからな。
けどそんなの関係無い。主従関係がある以上は従ってもらおう。
あとマルルちゃん、そんな台詞を一体いつ覚えたの。
「という訳で叔母上、明日領主の家に行きますのでそのおつもりで」
「クッ、これもご主人様にメス犬ドールを造ってもらうため……覚悟を決めろイーリス! アタシは! もう! 身も心も! ご主人様のモノなのだとォウ!」
「いや、そこまでの関係じゃなくてもいいんだけど?」
叔母上もこうして覚悟をキメてくれたし、心配はいらないだろう。
あとはうまく計画が遂行できるか、だな。
精々がんばってくれよ叔母上、私の築く輝かしい未来のために。
こうして私達は翌日、領主後見人化計画を遂行。
その結果、叔母上はみごと貴族へと嫁がれましたとさ。
さすが私、すべて読み通り……!
それも若い息子を連れて。
やはり聖護防壁があると農作業も容易だからな。
おまけに魔物由来の疫病も流行らない。
おかげでこの地で採れる作物は安定していて信頼も厚いという。
それで領主自らが年貢徴収のついでに顔を出したという訳だ。
辺境伯という位も持っているだけに、自身も相当な武の心得があるらしい。
その過程で私は領主ラギュース=ディオ=エルピオスの息子ジアンと出会った。
相手もまだ私の肉体年齢と同じ、あるいは少し年上といった所。
しかしもう恋というものを知っているようで、私に一輪の花を差し出してきたのだ。
なので目の前で食べてあげた。とても美味しかったです。
更にはその翌日、手紙を一枚よこしてきて。
その文面を前にして私はとある計画を閃いたのである。
「まずはこれを読んで」
その手紙は今、手元に。
叔母上へ説明するためにと持ってきたのだ。
そこで、その手紙を早速と差し出し読ませてみる。
「これは――三叉龍紋の蝋印ッ!? 読んでいいんです!?」
「いいからーどうぞー」
「では失礼して……『親愛なるミルカ様へ。花々が風に揺られてそよぐ季節がやってまいりました。我が屋敷にも美しき舞いの香りが漂い、心を穏やかにさせてくれます。しかしその花々も、黄金の野を妖精の如く歩く貴女の前には霞みのよう』――クッサ! もうクッサぁ!!!」
でもどうやら美しい文面とやらが相当に苦手らしい。
半分も読むまでも無く手紙を左右に振ってギブアップだ。
叔母上、すごいガサツだもんね。
男っ気とかまったくなさそうだもの。
「……まぁ何が書いてあるかというと、プロポーズです」
「そうでしょうね。でなければこんな大層な封なんてしませんし」
「えーミルカちゃん、ぷろぽーず、されたのー?」
「「キャーッ!」」
外野は大興奮だが、個人的にはまったく嬉しくありません。
まだ男だった頃の精神が強く、男性に興味を持てないのでね。
それに私は結婚して落ち着くつもりなど毛頭ない。
まだまだやりたい事は多いし、そもそもが自由人だから。
少なくとも力を取り戻し、落ち着きたいと思うまでは好きにさせてもらいたい。
「でも私は興味無いので断るつもり」
「もったいない……領主様の息子ですよ? 貴族なんですよ!?」
「だから叔母上に譲ってあげるの」
「うっ……」
だがこのチャンスだけはモノにせねばならない。
信頼にたる後見人を得られる又とない機会だからな。
なら私の願いを叶えるためにも、叔母上には生贄の羊ちゃんとなってもらおう。
「計画はこう。まず私と叔母上で領主様の息子に会います」
「はい」
「その後、二人きりになった所で洗脳します」
「いきなりやる事えげつなッ!」
「次に魅了魔法で叔母上を好きになってもらい、そのまま婚姻届けに調印します」
「アンタ間違いなく姉さんの娘だよ! 見紛うことなき実の娘だよ!」
やはり、すべてはこの美貌の成せるワザか。
罪深いな、美しきママ上の血を引く者というのは。フフン。
言われた通り、あの方の娘だからこそ成し得た計画だろう。
容姿に限らず性格も少しはこの身体に引っ張られているかもしれん。
私はこの性格、嫌いじゃないがな。
「あとは私が機を見て領主も洗脳あるいは懐柔するので、叔母上は楽しい貴族ライフを満喫してください」
「それ、ワタクシが結婚する意味あります?」
「あまり無いけど、した方が確実じゃない?」
「そうっすね……」
この際、叔母上には貞操を諦めてもらうとしよう。
まぁ相手もまだ成人前だからすぐに情事が起きるとも限らないけどな。
「ところで叔母上、男性経験は?」
「聞いてはいけませんそれだけは」
「うん、知ってた」
「おおお男なんて不要なのですよ。ワタクシは仕事一筋ですから!」
「ふかいトラウマを、かんじざるを、えなーい」
「「キャーッ!」」
叔母上が男性嫌いなのも承知の上だ。
パパ上を非難していた時もなんか怨恨を感じたからな。
けどそんなの関係無い。主従関係がある以上は従ってもらおう。
あとマルルちゃん、そんな台詞を一体いつ覚えたの。
「という訳で叔母上、明日領主の家に行きますのでそのおつもりで」
「クッ、これもご主人様にメス犬ドールを造ってもらうため……覚悟を決めろイーリス! アタシは! もう! 身も心も! ご主人様のモノなのだとォウ!」
「いや、そこまでの関係じゃなくてもいいんだけど?」
叔母上もこうして覚悟をキメてくれたし、心配はいらないだろう。
あとはうまく計画が遂行できるか、だな。
精々がんばってくれよ叔母上、私の築く輝かしい未来のために。
こうして私達は翌日、領主後見人化計画を遂行。
その結果、叔母上はみごと貴族へと嫁がれましたとさ。
さすが私、すべて読み通り……!
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