強くて転生わからせ魔戦王!~最強魔力を得た私は最年少で女帝を目指す。もう大人?いいえ三歳児です。ざぁこな大人どもを逆に蹴散らし屈服無双!

日奈 うさぎ

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第1話 屈強最強の俺、転生先はなんと美少女でした

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「これより各国同意の下、罪人デュランドゥを世界より追放する」

 俺はこれから、処刑される。
 これまでこの世界を守り続けてきたにもかかわらず。

 罪状は――〝強すぎるから〟。
 俺はあまりにも強くなりすぎてしまったのかもしれない。
 それも人々が恐怖へと転じるほどに。

「……これが英雄に対する仕打ちか?」
「残念だが……貴様がこの世から消えるのは民の総意なのだ」

 ああ、知っているとも。
 この結末が民衆の望んだ事ならば、と敢えて自ら四肢の拘束を願い、処刑も受け入れたのだから。
 これでも曲りなりに英雄としての誇りはある。

「ならこの選択、後悔などしてくれるなよ?」
「するものか。ではさらばだ〝魔戦王〟よ」

 軽口を叩いた瞬間、身体が浮遊感に包まれた。
 ひざまずいていた体が宙へ浮き、空中にぽっかりと開いた〝口〟へと飲み込まれていく。

 空間転移魔術によって形成された亜空間ゲートか。
 俺を始末するためだけにこんな大層な禁術にまで手を出すとは、笑わせる話だ。

「戦闘狂の化け物め、永遠の闇に消えるがよい」

 あいにくだが俺は恐れてなどいない。
 それゆえに、目前の最も気に食わない古狸をににやりと笑って見せる。
 破界神討滅を教唆きょうさし、この処刑まで決行したガウリヨン帝国のクソッタレ皇帝陛下を。

 異界――〝霊界道〟へと投げ出された俺の目の前で、ゆっくりとゲートが閉じていく。

 霊界道とはいわば精神世界。
 死者だけが通る事を許された、物理物質が存在し得ない魂の通り道である。

 きっと奴等はこの世界へと放り込めば俺でも死ぬと思ったのだろう。
 まったく、ものを知らぬ浅はかな連中の思い付きそうな奇策だ。

「――ゲートは閉じられたな。よし……問題はなさそうだ」

 実はこの処刑方法について予想はしていた。
 なので俺はあらかじめ自身の体に霊子をまとわせ、霊体とほぼ同位になっておいたのだ。

 その目論見は見事成功。身体がしっかりと霊界道に順応できている。

「にしても奴等のうろたえていた顔が目に浮かぶようだよ。強気で脅してやった甲斐があったってモンだ」

 あとはこの肉体そのものを魂へと変換すればいい。
 俺の推測が正しければ、これで転生さえも可能となるはずだ。
 それも己の心・能力・知識・経験をすべて受け継いだ状態で。

「……別れを望むならば受け入れよう。だが滅びまでは受け入れられないな。せいぜい新たな人生で好きに生きさせてもらうさ」

 実のところ、最初からこれが狙いだった。
 世界が平和になったと宣うなら、英雄はもう必要あるまい。
 ならば死ぬまでもなく〝魔戦王〟という痕跡だけを消し去ればいいのだ。

「すべては計画通り。では、あとは星の意思に任せるとしようか」

 静かに流れ行く霊界道に身をゆだねつつ、俺は魂への回帰を開始する。
 破界神すら屠った最強の肉体が、ゆっくりとほどけて意識の内側へと流れ込んでいく――その心地良い感覚を味わいながら、俺は新たなる人生への期待を抱いて目を閉じたのだった。





 ――そして気付けば、俺は二人の男女を見上げていた。
 霊界道を巡った時の記憶は曖昧で、本当に一瞬とも思えたものだ。

「ほれ見ろ! この子もうこっち見とるで!」
「まぁ泣きもしないで……あなた、とっても賢いのねぇ」

 しかしどうやら無事に転生できたらしい。
 ふと自身を確かめてみると、赤子らしき小さな手が見えた。

 こんな弱々しい肉体だが、既に魔力の一部は使用可能だ。
 おそらくは今すぐこの両親を滅殺する事さえ可能だろう。

 ……でもその必要は無い。
 幼少期の世話はこの両親に託した方が気楽だろうから。
 それに前世は親の愛を知らずに育った身だし、今くらいは甘えてもいいよな。

「もう名前は決めてあンだ! お前の名前はミルカだぞぉ!」
「よろしくね、私達の可愛い子……」

 本来の名にも今さらこだわるつもりは無い。
 だから俺はあえてこの名前を受け入れて生きていく事にした。

 よし、今日から俺はミルカだ。
 よろしく頼むぞ、父上、母上――





 ――それで転生してから三年。

 どうやら俺は帝国から星の反対側にある素朴な農村で産まれたらしい。
 決して裕福ではないが、とても穏やかな毎日だった。

 そしてこの三年で、俺は誰よりも速く大きく成長していた。
 魔術を駆使して肉体の成長を促進させた事によって。

 おかげで今や肉体は十二~三歳ほどといった所。
 精神も転生前の意思があるおかげで、むしろ大人らしいと思われるくらいだ。
 成長だけに注視していたから、ここまでの記憶はあいまいだけどな。

 けど人生そのものは順調そのもの。
 今は友達もできたし。

 特に、お隣の幼馴染マルルちゃんは俺の一番のお気に入りだ。

「やーいやーい、マルルのノロマ~!」
「やめろ! マルルちゃんをイジめるのはよせ! 消されたいのかあッ!?」
「げっ、ミルカの奴がきた! 逃げろー!」

 しかしマルルちゃんはいつもぽやぽやしていてイジめられやすい。
 なので都度こうして俺が立ち塞がって守ってあげるのだ。
 もはや日課とも言えるイベントである。

「ミルカのバーカ! 巨乳~!」
「デカいのは身体と胸だけにしとけよな~~~!」

 まったく悪ガキどもめ、毎日懲りないな。
 巨乳などと、一体誰からそんな卑猥な悪口を学んだのだ。
 見ろ、このたゆんたゆんでふっくらな大胸筋を! これで貴様等を挟み潰してやろうかァ!?

 ――大胸、筋?

「ミルカちゃあん、今日も、ありがとねぇ~」
「ううん、いいよ! マルルちゃんをイジめる奴は俺が全て消し去ってあげるから!」

 ……やはり子どもならマルルちゃんのような可愛い子がいい。
 この「見上げふんわり笑顔」がある限り、俺は何度でも彼女の盾となれるだろう。
 前世では得られなかった最高の癒しがここにはあるのだ。

 なれば新たな人生にもはや憂い無し。

「あのね、あのね」
「うん? どうしたのマルルちゃん?」
「マルルね、おっきくなったら、ミルカちゃんと、おっきなおっぱい持った女の子になるー!」
「おっきな、おっぱ――い"ィッ!?」

 だが皮肉にも、そんなマルルちゃんの無垢な一言で俺は初めて気付く事となる。
 今までまるで気にしていなかった身体の特徴にやっと。

「えっ……お、俺、女の子だったのォォォーーーーーーーーーーーー!!!??」

 ゆえにこの日、俺は絶望した。
 かつてないほどの後悔にさいなまれて。
 膝を突いた地面をひずませ、畑を巻き込んでクレーターと化させてしまうまでに。

 屈強最強の魔戦王だった俺、転生先はなんと美少女でした……ッ!
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