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第十一章 最終決戦編
第133話 神域トア・ヴェール
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最終拠点へと辿り着いた俺達はその後、数刻だけ休息をもらった。
なにせモーリアンの里からずっと動きっぱなし戦いっぱなしだったから。
しかし商会側の動きは早く、その間にすべての準備を進めていたらしい。
俺達が召集されて会議室に行くと、有力者達がすでに全員集っていたのだ。
「きたか」
どうやらみんな待ちかねていたようだ。
俺達がやって来た途端に「ざわざわ」と声を上げて興奮を隠せないでいる。
そう、彼等は興奮しているんだ。
ある者は歓喜で、ある者は義憤に駆られて。
もしかしたら商会の長い歴史で積み重なった想いもあるのかもしれない。
それほどの意味がこの最終拠点には込められているのだろうとわかる。
ただ、俺達にはその理由がわからない。
なぜ最終拠点へと赴く事になったのかが。
リブレーの復活がどうして彼等をそこまで掻き立てたのかと。
そんな光景を見て驚く俺達に、ディマーユさんが椅子へ座るよう催促してきた。
それなので戸惑いながらも席に着く事に。
「ラクシュは現在、鋭意修理中だ。肉体部は無事でも魔動機部分の破損はエリクサーでは治らないからな。だが事までには済ませる予定だよ」
「ラクシュに関しては任せます。しかしその〝事〟ってやつですよディマーユさん。俺達にはそれがなんなのかわからねぇ」
「そうだな、まずはそこから話し始める必要があるだろう」
するとディマーユさんの一言で一挙に場が静まり返る。
むしろ静かになり過ぎて、照明で輝く円卓が怖く見えるくらいだ。
「……実はだな、リブレーを復活させたかった真の目的は神捜索とはまた別にあったのだ」
そんな中でディマーユさんが淡々と語り始める。
まるで全員に言い聞かせるように誰にも向かず、円卓に肘と顎を預けながら。
「その目的とはすなわち――ゲールトの本拠地の所在を見つける事にある」
「「「ッ!?」」」
どうやら知らないのは俺達だけではなかったらしい。
一部の有力者もこの話を前に眉を動かして動揺を見せている。
……いや、オプライエンさんやフーラさんといった年季の入った人しかわかっていないといった感じだな、これは。
「そんなの商会の力をもってすりゃ簡単に見つけられるんじゃないですかい?」
「いや、それがそうもいかないのだ」
「……えっ?」
「なぜならゲールトの本拠地は……この地上のどこにも存在しないのだよ」
「「「ッ!?」」」
これには驚かされた。
まるで冗談みたいな話なもので。
だがこれは決して嘘ではないのだろう。
つまりディマーユさんはこう言いたいのだ。
〝ゲールトは普通の手段では見つける事は叶わない〟と。
「なるほどのう、そういう事か」
「チッ、ゲールトどもめが面倒な所にいやがるのよさ」
「ふむ、なかなかの狼藉極まりなさじゃあないか」
「おいたが~~~過ぎるれすぅ~~~」
しかし神達はといえば合点がいったかのように声を合わせている。
まるでゲールトのいる場所がわかっているかのように。
……わかっている?
そ、それってまさかッ!?
「そのゲールトの本拠地とはすなわち――〝神域、トア・ヴェール〟!」
「「「!!?」」」
「そこはかつて神達が住み、地上を見守っていた場所である。そんな場所へ奴らは図々しくも居座り、今なお神の真似事をしているという訳なのだ」
そうか、そういう事かよ……!
たしかゲールトは神を排した後、理を書き換えたとも教えてもらった。
それはつまりゲールトがその神域って所で操作したって事なんだ。
神域が世界のすべてを操れる場所だからこそ。
「だが察しの通り、神域は歩いて行けるような場所ではない」
「うむ。かの地はこの世界からでは見る事も叶わず、存在すら検知できぬゆえな」
「そう。しかもそれは神とて例外ではないのだ」
「だからウーティリス達も自分では帰れない?」
「そういう事だ。正式な帰還手段は〝灯台神プレメーデ〟による送迎のみ。しかしそのプレメーデは封神計画の折、ゲールトの一味を神域へ誘った後に殺害された」
「ひでぇ……」
「あとはその一味が神域よりポータルを繋ぎ、自分達だけで移動できるようにしたという訳だ。ただその移動手段も奴らが神域に籠った事で除去されてしまったが」
「じゃあ神域に行く方法は皆無!?」
「そういう事になるな」
冗談じゃねぇぞ!?
それじゃあ詰みじゃねぇか!
いくらゲールトに対する戦力が揃ってたって、攻める事ができないんじゃ――
「しかしそれは一般的な話だ」
「――え?」
「実は下法な手段があってな。とある神がその象徴の力を使い、神域への道を切り拓く事ができる」
「まさかそれがっ!?」
「そう、それを可能とするのがリブレーによる誘いの力という訳だ」
ああ、そういう事だったんだな。
だからディマーユさんはリブレーをずっと復活させたがっていたんだ。
ゲールトの本拠地に攻め入る隠れた手段を得るために。
「なかなか良い所に目を付けるのよさ。そうよ、このキスティこそが神域を自在に行き来できる至高神という事――」
「そうらったな。たしか〝神域にいるだけなんて息が詰まってやーやーなのぉ!〟とか我儘いうて地上に勝手に行き来していたのう」
「うむ。その我儘に付き合わされる吾人の苦労はもっと知られても良い」
「テメェラそこはあちしを褒め称える所やろがいぃッ!!!!!」
……こんなのに任せるのはちょっと心配だが。
ただ、これですべて合点がいった。
リブレーの力があれば神域に行く事ができ、ゲールトを討つ事ができるだろう。
それでもってゲールトもその事を予期している。
だけど奴らは神域から動く事ができない。
失う訳にはいかない最重要拠点だから。
よって事実上の最終決戦の幕開けって訳だな。
「神域は特殊な場所で、人間の侵入は神の許可がなければほぼ不可能だ。加えてゲールトの超秘匿主義により、その仕組みは変わっていないと思っていい」
「それってつまり?」
「すなわち、ゲールト自身に対外戦力はほぼ存在しない。神域にいるのはゲールトの元締めである七賢者と呼ばれし者達のみなのだ」
「「「おお!!!」」」
「ただしそれは奴らが今でも生きていれば、の話だが。奴らも人間で、ダンジョンの恩恵があれどただ不死身ではないだろうから。とはいえ、もし生きていた場合は生半可な者では太刀打ちできまい。奴らは各々が神域でも活動できるほどの実力者なのだからな」
「「「う……」」」
しかしだからといって「後はすべて上手くいく」とはいかないらしい。
そりゃそうだよな、神殺しの剣を得られるくらいの勇者だったってんなら普通に戦って勝つ事なんざ叶わないだろうよ。
ならどうするつもりだ?
力だけなら俺達の方がずっと分が悪いぜ?
そんな訴えるような視線がディマーユさんに集まる。
だがディマーユさんはその中で「フッ」と笑みを零しゆっくりと立ち上がった。
「まぁそう悲観的になるな。可能性は決してゼロではない。むしろ相応に高いと言える」
「「「おお!?」」」
「実はみんなが集まるまでに、我は今の戦力を見て振り返り、改めて侵攻計画を練った。そしてその結果、我らには勝利に必要なピースがすべて揃っていると結論付けたのだ」
そうだったな、この人はそう簡単に諦める人じゃない。
常に何かを考え、最良の道を選択し、人を導いてくれた。
だから俺達はその期待以上の事をしたくなる。
そんな人にただ従うんじゃなく、一歩先に行ってみたいって思わせてくれるから。
「そしてその鍵は、ダンジョンブレイク工業にこそあるのだとな」
しかもそのディマーユさんは俺達にみんなの期待を集めさせるつもりらしい。
どうやらさっきの逃走劇を通して、俺達に託す覚悟を受け入れたようだ。
……ならいいぜ、乗せられてやる。
その上で期待以上の成果をもたらしてやる。
最低限の目標はゲールトの壊滅!
それを越える結果がどんなもんかはまだわからねぇが、絶対に戦いの中で導きだしてやるぜ!
「そこでみんなには一部有力者を除き、各地でギルドへ反乱を起こしてもらいたい。少しでも奴らを混乱させ、力を削いでほしいのだ」
「その間に俺らが神域に攻め入るという訳か」
「うむ。もちろん追加戦力としてエリクスを始め、クリンなどの知った顔も侵攻チームに加えさせる予定だ」
「陽動側の戦力に問題は?」
「問題はない。今あるすべての物資、アイテムを使い切るつもりで戦えばそこらのギルドを壊滅するなど容易かろうからなっ! フハハハハッ!!!!!」
陽動側も問題ないようだ。
それどころか決戦に使うつもりだっただけに随分と物騒な物言いだぜ。
だったら後は俺達がしっかりやれるかどうかだな。
「ならば神域組の装備は吾人が鍛えてやろう。時間がないゆえに今の君達でも扱える最低限の性能しか与えられぬが」
「具体的にはどれくらい?」
「そうさなぁ、星滅級でちょびっとだけ戦えるくらいの能力なら?」
「上級武器を星滅級に……それを気軽に言えるダンタネルヴが素直にすごいと思うぜ……」
「ふははは! なれば新作の鎧も試しに――」
「あ、それはいいです」
「ギリィ!!!!!!!!!!」
戦力の方は申し分ない。
さすがに箱鎧は動きづらそうだしデザインがアレだから、すごくてもお断りだが。
すなわち、俺達側の準備はほぼ整っていると思っていい。
後は決戦開始の時が来るのを待つだけって訳だ。
――いいぜ、いつでも来やがれ。
この戦いを期にゲールト支配を終わらせてやる。
人が再び世界に発展をもたらすためにも。
そして普通に暮らすだけの人が安心できる未来のためにも。
こうして俺達の会議は終わり、有力者達も即座に行動を開始。
一日も経てばその成果もすぐに情報が上がり、大勝報告が俺達の頬を緩ませた。
さらには一部ギルドが無条件降伏、協力依頼を提示して来たという話も。
どうやらワイスレットギルドマスターの言った話は嘘じゃなかったようだ。
しかもその戦力でギルド本部を攻める算段ができたらしい。
陽動にしては随分と一方的な展開だ。
世界が今、そうなる事を望んでいるのだろう。
ようやく理不尽に気付き、正しい形になろうとしているのだと。
それなら俺達も負けてはいられない。
ゲールトを滅ぼさねば彼等の努力はすべて水泡に帰してしまうからこそ。
だからやるんだ! 俺達が!
今の世界を包む悪夢を終わらせるためにも……!
なにせモーリアンの里からずっと動きっぱなし戦いっぱなしだったから。
しかし商会側の動きは早く、その間にすべての準備を進めていたらしい。
俺達が召集されて会議室に行くと、有力者達がすでに全員集っていたのだ。
「きたか」
どうやらみんな待ちかねていたようだ。
俺達がやって来た途端に「ざわざわ」と声を上げて興奮を隠せないでいる。
そう、彼等は興奮しているんだ。
ある者は歓喜で、ある者は義憤に駆られて。
もしかしたら商会の長い歴史で積み重なった想いもあるのかもしれない。
それほどの意味がこの最終拠点には込められているのだろうとわかる。
ただ、俺達にはその理由がわからない。
なぜ最終拠点へと赴く事になったのかが。
リブレーの復活がどうして彼等をそこまで掻き立てたのかと。
そんな光景を見て驚く俺達に、ディマーユさんが椅子へ座るよう催促してきた。
それなので戸惑いながらも席に着く事に。
「ラクシュは現在、鋭意修理中だ。肉体部は無事でも魔動機部分の破損はエリクサーでは治らないからな。だが事までには済ませる予定だよ」
「ラクシュに関しては任せます。しかしその〝事〟ってやつですよディマーユさん。俺達にはそれがなんなのかわからねぇ」
「そうだな、まずはそこから話し始める必要があるだろう」
するとディマーユさんの一言で一挙に場が静まり返る。
むしろ静かになり過ぎて、照明で輝く円卓が怖く見えるくらいだ。
「……実はだな、リブレーを復活させたかった真の目的は神捜索とはまた別にあったのだ」
そんな中でディマーユさんが淡々と語り始める。
まるで全員に言い聞かせるように誰にも向かず、円卓に肘と顎を預けながら。
「その目的とはすなわち――ゲールトの本拠地の所在を見つける事にある」
「「「ッ!?」」」
どうやら知らないのは俺達だけではなかったらしい。
一部の有力者もこの話を前に眉を動かして動揺を見せている。
……いや、オプライエンさんやフーラさんといった年季の入った人しかわかっていないといった感じだな、これは。
「そんなの商会の力をもってすりゃ簡単に見つけられるんじゃないですかい?」
「いや、それがそうもいかないのだ」
「……えっ?」
「なぜならゲールトの本拠地は……この地上のどこにも存在しないのだよ」
「「「ッ!?」」」
これには驚かされた。
まるで冗談みたいな話なもので。
だがこれは決して嘘ではないのだろう。
つまりディマーユさんはこう言いたいのだ。
〝ゲールトは普通の手段では見つける事は叶わない〟と。
「なるほどのう、そういう事か」
「チッ、ゲールトどもめが面倒な所にいやがるのよさ」
「ふむ、なかなかの狼藉極まりなさじゃあないか」
「おいたが~~~過ぎるれすぅ~~~」
しかし神達はといえば合点がいったかのように声を合わせている。
まるでゲールトのいる場所がわかっているかのように。
……わかっている?
そ、それってまさかッ!?
「そのゲールトの本拠地とはすなわち――〝神域、トア・ヴェール〟!」
「「「!!?」」」
「そこはかつて神達が住み、地上を見守っていた場所である。そんな場所へ奴らは図々しくも居座り、今なお神の真似事をしているという訳なのだ」
そうか、そういう事かよ……!
たしかゲールトは神を排した後、理を書き換えたとも教えてもらった。
それはつまりゲールトがその神域って所で操作したって事なんだ。
神域が世界のすべてを操れる場所だからこそ。
「だが察しの通り、神域は歩いて行けるような場所ではない」
「うむ。かの地はこの世界からでは見る事も叶わず、存在すら検知できぬゆえな」
「そう。しかもそれは神とて例外ではないのだ」
「だからウーティリス達も自分では帰れない?」
「そういう事だ。正式な帰還手段は〝灯台神プレメーデ〟による送迎のみ。しかしそのプレメーデは封神計画の折、ゲールトの一味を神域へ誘った後に殺害された」
「ひでぇ……」
「あとはその一味が神域よりポータルを繋ぎ、自分達だけで移動できるようにしたという訳だ。ただその移動手段も奴らが神域に籠った事で除去されてしまったが」
「じゃあ神域に行く方法は皆無!?」
「そういう事になるな」
冗談じゃねぇぞ!?
それじゃあ詰みじゃねぇか!
いくらゲールトに対する戦力が揃ってたって、攻める事ができないんじゃ――
「しかしそれは一般的な話だ」
「――え?」
「実は下法な手段があってな。とある神がその象徴の力を使い、神域への道を切り拓く事ができる」
「まさかそれがっ!?」
「そう、それを可能とするのがリブレーによる誘いの力という訳だ」
ああ、そういう事だったんだな。
だからディマーユさんはリブレーをずっと復活させたがっていたんだ。
ゲールトの本拠地に攻め入る隠れた手段を得るために。
「なかなか良い所に目を付けるのよさ。そうよ、このキスティこそが神域を自在に行き来できる至高神という事――」
「そうらったな。たしか〝神域にいるだけなんて息が詰まってやーやーなのぉ!〟とか我儘いうて地上に勝手に行き来していたのう」
「うむ。その我儘に付き合わされる吾人の苦労はもっと知られても良い」
「テメェラそこはあちしを褒め称える所やろがいぃッ!!!!!」
……こんなのに任せるのはちょっと心配だが。
ただ、これですべて合点がいった。
リブレーの力があれば神域に行く事ができ、ゲールトを討つ事ができるだろう。
それでもってゲールトもその事を予期している。
だけど奴らは神域から動く事ができない。
失う訳にはいかない最重要拠点だから。
よって事実上の最終決戦の幕開けって訳だな。
「神域は特殊な場所で、人間の侵入は神の許可がなければほぼ不可能だ。加えてゲールトの超秘匿主義により、その仕組みは変わっていないと思っていい」
「それってつまり?」
「すなわち、ゲールト自身に対外戦力はほぼ存在しない。神域にいるのはゲールトの元締めである七賢者と呼ばれし者達のみなのだ」
「「「おお!!!」」」
「ただしそれは奴らが今でも生きていれば、の話だが。奴らも人間で、ダンジョンの恩恵があれどただ不死身ではないだろうから。とはいえ、もし生きていた場合は生半可な者では太刀打ちできまい。奴らは各々が神域でも活動できるほどの実力者なのだからな」
「「「う……」」」
しかしだからといって「後はすべて上手くいく」とはいかないらしい。
そりゃそうだよな、神殺しの剣を得られるくらいの勇者だったってんなら普通に戦って勝つ事なんざ叶わないだろうよ。
ならどうするつもりだ?
力だけなら俺達の方がずっと分が悪いぜ?
そんな訴えるような視線がディマーユさんに集まる。
だがディマーユさんはその中で「フッ」と笑みを零しゆっくりと立ち上がった。
「まぁそう悲観的になるな。可能性は決してゼロではない。むしろ相応に高いと言える」
「「「おお!?」」」
「実はみんなが集まるまでに、我は今の戦力を見て振り返り、改めて侵攻計画を練った。そしてその結果、我らには勝利に必要なピースがすべて揃っていると結論付けたのだ」
そうだったな、この人はそう簡単に諦める人じゃない。
常に何かを考え、最良の道を選択し、人を導いてくれた。
だから俺達はその期待以上の事をしたくなる。
そんな人にただ従うんじゃなく、一歩先に行ってみたいって思わせてくれるから。
「そしてその鍵は、ダンジョンブレイク工業にこそあるのだとな」
しかもそのディマーユさんは俺達にみんなの期待を集めさせるつもりらしい。
どうやらさっきの逃走劇を通して、俺達に託す覚悟を受け入れたようだ。
……ならいいぜ、乗せられてやる。
その上で期待以上の成果をもたらしてやる。
最低限の目標はゲールトの壊滅!
それを越える結果がどんなもんかはまだわからねぇが、絶対に戦いの中で導きだしてやるぜ!
「そこでみんなには一部有力者を除き、各地でギルドへ反乱を起こしてもらいたい。少しでも奴らを混乱させ、力を削いでほしいのだ」
「その間に俺らが神域に攻め入るという訳か」
「うむ。もちろん追加戦力としてエリクスを始め、クリンなどの知った顔も侵攻チームに加えさせる予定だ」
「陽動側の戦力に問題は?」
「問題はない。今あるすべての物資、アイテムを使い切るつもりで戦えばそこらのギルドを壊滅するなど容易かろうからなっ! フハハハハッ!!!!!」
陽動側も問題ないようだ。
それどころか決戦に使うつもりだっただけに随分と物騒な物言いだぜ。
だったら後は俺達がしっかりやれるかどうかだな。
「ならば神域組の装備は吾人が鍛えてやろう。時間がないゆえに今の君達でも扱える最低限の性能しか与えられぬが」
「具体的にはどれくらい?」
「そうさなぁ、星滅級でちょびっとだけ戦えるくらいの能力なら?」
「上級武器を星滅級に……それを気軽に言えるダンタネルヴが素直にすごいと思うぜ……」
「ふははは! なれば新作の鎧も試しに――」
「あ、それはいいです」
「ギリィ!!!!!!!!!!」
戦力の方は申し分ない。
さすがに箱鎧は動きづらそうだしデザインがアレだから、すごくてもお断りだが。
すなわち、俺達側の準備はほぼ整っていると思っていい。
後は決戦開始の時が来るのを待つだけって訳だ。
――いいぜ、いつでも来やがれ。
この戦いを期にゲールト支配を終わらせてやる。
人が再び世界に発展をもたらすためにも。
そして普通に暮らすだけの人が安心できる未来のためにも。
こうして俺達の会議は終わり、有力者達も即座に行動を開始。
一日も経てばその成果もすぐに情報が上がり、大勝報告が俺達の頬を緩ませた。
さらには一部ギルドが無条件降伏、協力依頼を提示して来たという話も。
どうやらワイスレットギルドマスターの言った話は嘘じゃなかったようだ。
しかもその戦力でギルド本部を攻める算段ができたらしい。
陽動にしては随分と一方的な展開だ。
世界が今、そうなる事を望んでいるのだろう。
ようやく理不尽に気付き、正しい形になろうとしているのだと。
それなら俺達も負けてはいられない。
ゲールトを滅ぼさねば彼等の努力はすべて水泡に帰してしまうからこそ。
だからやるんだ! 俺達が!
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