底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

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第十章 成長へと至る人の心編

第117話 リブレー復活の条件

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 まさかリブレーの悪態こそが誘いの力の源だったとは。
 たしかに奴の言葉には必要以上に感情を揺さぶられる気がしたが、それも神の力ゆえだったのかもしれないな。

「でもいいのか、あんたの心情に反する事になっちまうが」
「男に二言はない。やると言った以上は全力を尽くす、それが吾人のポリシーなのだよ」

 でもその悪態のおかげでダンタネルヴが俺達へ力を貸してくれる事に。
 それでようやく彼も落ち着いたので、俺達を建屋の外まで案内してくれた。

「協力すると決まったとはいえ、すぐにという訳にはいかない。会社もしばらく不在になるだろうからね、会議で重役と稟議を通し、色々と役割を振り分ける必要がある。それまでは少し時間を貰う事になるかもしれぬ」
「その辺りの会社っつうもんの立ち回りも教えてもらいたいな」
「ははは、ならそれはいずれ教示するとしよう」

 とはいえこのままついて来るほど単純な話ではないようだ。
 企業ってもんは本来こんな面倒なもんなんだな。まるでギルドみたいだよ。

 ……いや、ギルドが企業を真似しているのかもしれない、か。

 それで俺達はダンタネルヴといったん別れ、会社の敷地の外へ。
 しかしこの時点で総勢六人と少ない事に気付く。

「よし、では我々は一旦ザトロイへ帰還するとしよう」
「ニルナナカは? 今いないけどー?」
「飽きたら自分で勝手に戻って来るから心配はいらぬ」
「海の時もそうだったけどなんなのその謎の信頼感」

 でも扱いはやっぱり雑だった。
 ディマーユさんもウーティリスもちっとも心配していないようだ。
 まぁ前科があるからいざ仕方ないんだが。

 それにしたって海中だろうが地中だろうが置き去りにしても帰って来られるって。
 神とか超闘派である事抜きに充分すごい能力だと思う。
 前世はエリート迷い犬かな?

「神に前世などないのら」
「冗談を真に受けるなよ……」

 ウーティリスも否応なしに俺の背へ戻っているし。
 ほんと神ってのはどいつもこいつもマイペースだねぇ。まったく。

「それでディマーユさんよ、次の目的はどうするんだ?」
「ひとまずはリブレーの体探しと平行して別の神を復活させてもらう事になるだろうな。となれば我の方で前者を、ラングの方で後者を、という形が妥当だろう」

 なるほどな、そっちはそっちで考慮済みか。
 今回は特殊ケースだから仕方ないとして、次回からはもう別行動になりそうだ。

 だが、それほどにリブレーの体探しってのは面倒なのだろうか?

「我ら神の身体は元々、人間達の肉体を利用しておる」
「「「えっ……」」」
「しかし誰の物でもよいという訳ではなくてな、相性というものが存在するのら」
「それぁどんな相性なんだ?」
「元の性格が似ていたり、肉体の要求スペックが満たしていたり、あるいは神の方が肉体を好くなどらのう」
「そしてリブレーの性格を知るのは我とウーティリス、ニルナナカ、ダンタネルヴのみ。けれどニルナナカはあんな性格だし、ダンタネルヴはそこまで協力してくれんだろう?」
「なるほど、それで師匠自らが選定に走る必要があるって訳だ」

 なかなか難しいんだな、肉体を得るってのも。

「でも待って、それって肉体の持ち主はどうなっちゃうの?」

 しかしそんな話の中、チェルトが突如として話の核心を突く。
 それとなく放たれた一言だったが、とても大事な事だ。

「肉体を乗っ取られた場合、人間の方が死ぬのら」
「「「え……」」」

 でもその問いにためらいもなく答えられた俺達はつい足を止めてしまっていた。
 ラクシュでさえ動揺を抑えきれなかったようだ。

「神の魂は人間の容量よりもずっと大きい。ゆえにその強大さに敗け、自然と押し潰されて消えてしまうであろう」
「それじゃあまさか、リブレーを復活させるためには!?」
「生贄が、必要……!?」
「……そうなるのう」

 じょ、冗談じゃねぇ!
 神を復活させるために人を犠牲にするだと!?
 そんな事、到底できる訳が――

「らが元の肉体を消したのはラング、そなたぞ」
「ウッ……!?」
「それに誰も生きた肉体しか使えんとは言うておらぬ」
「「「えっ!?」」」

 じゃあまさかそれって!?

「死者の肉体を使う事も可能なのら。もちろん生前状態での相性は必須らが」
「おお!」
『ええ~~~あちし、生きたピッチピチの若い娘の肉体がい~い~! 美人で~小顔で~巨乳で~スレンダーでぇ~~~』
「後はこの我儘にどうマッチするかが問題なのら」
「そこが一番の難関かよぉぉぉ……!」

 非道な事にならずに済みそうかと思ったが、相手がリブレーだって事をすっかり忘れていた。
 クッ、生きてないといけないって制約だけどうにかならねぇの!?

『ならない。生きてる事は必須条件なのよさ。生きた肉体を使うか否かで血行の違いは大きく変わるのだから』
「こういう時だけ真面目に答えるんだなお前」
『死んだばかりでフレッシュな肉体でもよいよ。だいたい死後三〇分くらいまでの』
「そんなの滅多にいるもんじゃねぇよ……」

 とはいえ、さっき助けられたばかりだから下手に拒否もできん!
 どうすりゃいいんだこの理不尽な状況~~~!

 ……だなんて頭を抱えていたらみんなもう先に行ってやがるし。
 ちっとは悩んだらどうなんだよぉ!

 仕方ねぇ、考えるのは後にして――

「ううッ!?」
「なんだウーティリス、いきなり変な声を出して?」
「ラング! 急いでダンジョンブレイカー装備を身につけるのらッ!」
「――ッ!?」

 その途端、空気が変わった。
 地下空間だというのにヌタッとした風が俺達の肌を撫でたのだ。

 だがその理由を確かめる間も無く、俺は即座にインベントリを開放。
 手馴れた手つきで装備を選び、能力表記上で装備変更を行う。

 すると一瞬にして俺の装備がダンジョンブレイカー装備へと切り替わった。

「これは一体何のためにッ!?」
「ちぃ!? 他が間に合わぬ! 来るぞっ!!! 上なのらあっ!」
「上で何が――なッ!?」
 
 しかし尋ねる暇など無かった。
 いや、尋ねる必要など無かったのだ。
 言われたままに見上げれば、はもうすでに現れていたのだから。

 暗雲である。
 しかも天井が見えないほどにドス黒く、稲妻を放つほどに禍々しい。
 そして仲間達もが見上げる中で稲妻がほとばしり、それと共に何かが輝きながら落ちてくる……!

 あ、あれは……!?

 だけど確認する暇さえなかった。
 それは直後には仲間達の下へ落下し、衝撃波をもたらしたのだ。
 仲間達を強く弾き飛ばすほどにすさまじい突風を伴って。

「みんなあッ!?」

 とはいえ咄嗟に見回せば全員無事なようだった。
 チェルトもラクシュも言わずもがな、ドネドネも師匠に掴まれて逃げて無事らしい。

 しかしあれは一体――

「……まったく、こういうものがあるのならさっさと出せばよかったものを」

 ううっ、こ、この声は……!?

「だがまぁいい、おかげで奴らに奇襲を仕掛ける事ができるというものだ」

 なぜだ!?
 なぜ奴がここにいる!?
 どうしてここに来られる!?

 ギトス=デルヴォ……!!!

「久しぶりだなぁダンジョンブレイカァァァ……! 今日は貴様を殺しに来てやったぞッ!!!」
「悪いがここで観念してもらうぜ! 悪は必ず滅びるってなあ!」
「アンタを倒してすべてを解決させてもらうわ!」

 しかもあの強い取り巻き二人もセットときたもんだ……!
 あのアーヴェストを苦戦させるほどだったんだぞ、アイツら!? 冗談じゃねぇ!



 楽しいモーリアンの里旅行のはずがこんなとんでもない事になるなんてな。
 何を一体どうしたらこうなっちまうんだ!?

 クソッ、奴の執念をしっかり舐めきっていたぜ……!
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