底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
85 / 148
第七章 遠い異国への旅立ち編

第85話 本物よりもずっとヒロイック

しおりを挟む
 街で大騒ぎが起きていた。
 それでその原因が何かをニルナナカが飛んで見てきたらしいのだが。

 その中心には、なんとダンジョンブレイカーがいたらしい。

 それは一体どういう事だ!?
 俺は今ここにいるんだぞ!?
 じゃあまさか俺を騙った偽物……!?

 でもなんでこの地に?
 俺はまだヴィンザルムで活動していないから誰も知らないはずなのに。

「よし、意地でもここを潜り抜けて見に行くぞ」
「わかったのら!」
「ウーちゃんは私が守るからラングは先行して!」
「おう!」

 だから確かめねばならん。
 ダンジョンブレイカーの装いをした誰が、何の目的で騒いでいるのか。

 場合によっちゃ、タダでは済まさねぇぞ!(チェルトが)

 そんな想いで野次馬を掻き分け進む。
 文句を言われようがおかまいなしだ。

 それで肉の壁を乗り越え、ついに中心部へと到達したのだが。

「――この野郎ッ!」
「ハッハッハーその程度か! 目を瞑っていても避けられるぞ!」
「チクショウがあっ!」
「それでも君達は勇者なのかな? ハッ!」
「うっげぇ!?」

 なんか本当にいた。
 しかも勇者と思われる相手達に囲まれながらも圧倒している。

 青いマフラーにトレードマークの仮面。
 そしてなぜか際どいブーメランパンツ一丁。

 おまけに細くとも筋肉質でもう完全に変態じゃねぇかこれェ!

 ニルナナカ、お前もしかして……俺が同じように見えてたの?
 お前にはこれがダンジョンブレイカーに見えたの???

「その程度ではこのダンジョンブレイカーを倒す事はできないっ!」

 うわぁマジで名乗りやがったアイツ!
 無駄に爽やかだし、一体なんなの!?

「チクショウ! こうなったら……!」
「キツロッゴさん! 頼みますぅ!」
「ククク、どうやらこの俺、A級勇者キツロッゴの出番が来たようだな……!」

 ウッ、なんだ、勇者どものを親玉が出てきた!?
 A級勇者……そんなのを相手にして勝てるのかよアイツ!?

「今すぐキサマを血祭りにあげてぇ!」
「御託はいい、かかって来るんだ! 私は悪に屈しない!」

 あ、でもなんかカッコよく見えてきたぞ、あの偽物。
 スマートに立って腕を組みながら人差し指を差すポーズ、あれは見習いたい。

 つぅか本物よりヒロイックってどういう事なんだよ!?

「このヤロォ……ブッ殺してやるッ!」

 だが相手は筋骨隆々ですさまじい殺気を放っている。
 あんな奴が相手じゃあの偽物でも――

 ――え?

「私はたとえ強敵であろうと立ち向かう。それが正義であり、勇者であり、人々を守りたいと願う信念なのだから……! ハァァァァァァ!!!」

 ば、バカな、あの偽物……命波を放っている!?
 あの緑色の輝きは間違いない!

 それをなぜ俺の偽物が!?

「ハァーーーーーーッ!!!!!」

 そんな偽物がすさまじい速さで飛び跳ね、空中でクルリと一回転。
 直後、伸ばした片足を相手へと向け、一気に急降下。

 そして直撃。
 すさまじい衝撃波と共に、あのA級勇者がブッ飛ばされた!

「うっぎゃああああああ!!?」
「ば、バカなっ!? あのキツロッゴさんが!?」
「奴は化け物だ! 逃げろォーっ!」

 圧倒的だ。
 あの強さ、間違いなくディーフさんに匹敵する。
 いや、命波が使えるならそれ以上かもしれん。

 なら奴は一体、何者なんだ……!?

「すげえぞアンタ! あの横暴勇者どもをよくやってくれたあ!」
「ありがとう! ありがとう!」
「たしかダンジョンブレイカーとか名乗ってたよな!?」
「ありがとう、俺達の英雄ダンジョンブレイカー!」
「あっはっは、皆さん落ち着いて! これからは私が皆さんをお守りしますから安心してください! 私は皆さんの生活の味方です!」

 締めにはこうして民衆に讃えられている。
 俺が活躍するよりも先に。

 奴の目的は一体……。
 まさか俺をおとしめるためのギルドの罠?
 いや、それならなぜ勇者どもを蹴散らした?
 もしかしてディマーユさんの作戦の内なのか?

 ダメだわからん!

「おや、君は……ハーベスターのラング君じゃあないか!」
「――え?」
「いやぁまさかこんな所で会うなんて奇遇だなぁ」
「は!?」

 だが今、奴の目が俺を捉えていた。
 それどころか名前まで呼び、ズンズンと近づいて来るんだが?

「あの明るい姪さんや、おお、チェルト君までいるじゃないか。もしかして新婚旅行だったりするのかい? ふふっ」
「え、ちょ」
「あっはっは! なぁに怖がる必要はないよ! 私もワイスレットから来たからね!」
「ぇええっ!?」
「ここで話すのもなんだから茶屋に行こう! せっかくだから色々話を聞きたいと思っていたんだ!」

 な、なんなんだこの偽物!?
 妙に馴れ馴れしいけど俺の知り合いなの!?
 俺の事をよく知ってる風なんだけど!?

 なのに俺、コイツの事まったくわかんないんだけどォォォーーー!?



 だけど偽物とはいえ親切そうだったから無碍にはできず。
 そこで俺達は彼に連れられ、ひと気の少ない喫茶店へと足を運んだのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕
ファンタジー
 不慮の事故で死んだ俺は、女神の力によって転生することになった。 「どんな感じで転生しますか?」 「モテモテな人生を送りたい! あとイケメンになりたい!」  そうして俺が転生したのは――  え、ここBLゲームの世界やん!?  タチがタチじゃなくてネコはネコじゃない!? オネェ担任にヤンキー保健医、双子の兄弟と巨人後輩。俺は男にモテたくない!  女神から「クリアすればもう一度転生出来ますよ」という暴言にも近い助言を信じ、俺は誰とも結ばれないバッドエンドをクリアしてみせる! 俺の操は誰にも奪わせはしない!  このお話は小説家になろうでも掲載しています。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...