底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
84 / 148
第七章 遠い異国への旅立ち編

第84話 砂漠と海に囲まれた温帯気候の地

しおりを挟む
 俺は今、天国にいる。
 ……いわゆる地上の楽園ってやつだ。

 見ろ、歩く人々の肌露出度を。
 内地のワイスレットと違い、オール五〇%越えは驚異的だろう。

 なにせこの地は温帯気候。
 おまけに海にも面しているから実に爽やかだ。
 おかげで道行く人々の普段の服装はみんな水着と、実に開放的じゃあないかっ!

 すばらしいッ!
 エクセレントッ!
 この街に来てよかったあっ! くぅぅ~~~!

「ラングの心の声が駄々洩れね。私でもわかるわ!」
「しかし気持ちもわからんでもない。この地の文化は妙な発展しとるのう」
「無駄に~~~露出度高過ぎ~~~れすぅ~~~」

 まぁウーティリスの言う通りだな。
 正直、俺も来た時は衝撃を受けてしまったくらいだし。

 ――常夏の砂国〝ヴィンザルム〟。
 海と砂漠に囲まれ、四季が存在しない国。

 その首都である〝ザトロイ〟が俺達のやってきた街である。

 ディマーユさんいわく、昔のここは観光地だったらしい。
 海では海水浴を楽しむ人々でにぎわい、街も観光客で溢れていたという。

 しかし四千年もの年月を経た今、その様相はすっかり変わってしまった。
 観光客はほぼおらず、海には地元民の子がちらほら泳ぎに来る程度。
 かつてあった産業も軒並みなくなり、完全にギルドの制御下におかれている。

 その反動なのか、現代の一般市民の普段着はほぼ水着へ。
 皆が布面積の小さい衣類ばかりを身に纏い、街を堂々と闊歩しているのだ。

 ゆえに眼福ッ!
 ゆえに至福ッ!
 かつてこんな楽園がこの世に存在しただろうか!

 だから今回は俺も海パンとサンダルだけで外に出てみたぜッ!

「だが開放的である事に異論はない。あっはぁ~~~ん♡」
「ウーティリスは少し自重しろ。その露出度九五%のビキニで際どいポーズをキメるんじゃない。というかどこでそんな物手に入れたんだ」
「見て見てラング! 私もあっはん!」
「チェルトも無理に真似するな。でもちょっと落ち着いた水着だからセーフ。――ウッ、鼻血が!」
「ニルナナカのぉ~~~肌を見たら~~~滅殺れすぅ~~~」
「君、普段着のままで暑くない? あと俺は全裸見たから死ぬの?」

 惜しむらくはナーシェちゃんが来なかった事か。
 根が真面目だからなぁ、仕事があるって断られてしまった。
 かくいう俺もそこまで暇ではないんだがな。

 今日はいわゆる最後のバカンス。
 明日から本格的にダンジョンブレイカーとしての戦いが始まるだろうからと、ディマーユさんにお暇をもらったのだ。

「しっかし、ほんと海辺には人がいねぇなぁ」
「みんな働いてるって話だしね。遊んでる暇なんてないんだよ」
「それもすべてギルドが搾取しているからなのら」

 ただ、この惨状を見ると本当に遊んでいていいのかとさえ思う。
 街を見ればみんな必死に働いていて、遊んでいるのは本当に子どもしかいない。
 だからか、妙に後ろ指を指されている気がしてならないな。

 この国も随分とギルドの圧政がキツイようだ。
 リミュネール商会がいてもこれなのだから相当なのだろうよ。
 早く何とかしてやりたいぜ。

 そう思いながらも海で少し遊ぶ事に。

 とはいえ俺やチェルトは泳げないので海を眺める程度。
 すさまじい勢いで泳ぐウーティリスは見ていて実に楽しい。
 ニルナナカも嬉しそうに洋上を飛んでいるし、来てよかったとは思う。
 
 それで海を堪能したので、今度は街の探索だ。
 これからの拠点になる訳だしな、何があるかくらいは調べておきたい。

 そう思ったのだが。

「なんら、あそこに人だかりがあるようらぞ!」

 いざ海から街路へ戻ると、大通りで妙な騒ぎが起きていた事に気付く。
 大勢の人が集まり、通れないほどの塊を成していたのだ。

「何か起きているのかしら~~~見てきますぅ~~~」
「街中であまり高く飛ぶなよ? ルール違反になっちまうから」
「はぁい~~~」
 
 この中を突っ切るのは無理だが、飛べるニルナナカなら。
 そう理解したのか、彼女が率先して飛んでいく。

 ――と思った矢先、すぐにぐるっと旋回して戻ってきた。速い!

「どうだった?」
「面白いものが~~~見れたれすぅ~~~」
「ほほう!」

 どうやら見るものはしっかり見られたようだ。
 なら一体何が見えたのかな?

「ダンジョンブレイカーが~~~いましたぁ~~~」

 ――は?
 えっ? どういう事?
 俺は今ここにいるんだけど?

 そ、それって一体、何が起きているっていうんだ……!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ
ファンタジー
突然変異クラスのS級大地魔法使いとして生を受けた伯爵子息リーク。 彼の家では、十六歳になると他家へと奉公(修行)する決まりがあった。 奉公先のシルバリオル家の領主は、最近代替わりしたテスラという女性なのだが、彼女はドラゴンを素手で屠るほど強い上に、凄まじいカリスマを持ち合わせていた。 リークの才能を見抜いたテスラ。戦闘面でも内政面でも無理難題を押しつけてくるのでそれらを次々にこなしてみせるリーク。 テスラの町は、瞬く間に繁栄を遂げる。だが、それに嫉妬する近隣諸侯の貴族たちが彼女の躍進を妨害をするのであった。 果たして、S級大地魔法使いのリークは彼女を守ることができるのか? そもそも、守る必要があるのか? カリスマ女領主と一緒に町を反映させる物語。 バトルあり内政あり。女の子たちと一緒に領主道を突き進む! ―――――――――――――――――――――――――― 作品が面白かったらブックマークや感想、レビューをいただけると嬉しいです。 たかみが小躍りして喜びます。感想などは、お気軽にどうぞ。一言でもめっちゃ嬉しいです。 楽しい時間を過ごしていただけたら幸いです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

魔法省魔道具研究員クロエ

大森蜜柑
ファンタジー
8歳のクロエは魔物討伐で利き腕を無くした父のために、独学で「自分の意思で動かせる義手」製作に挑む。 その功績から、平民ながら貴族の通う魔法学園に入学し、卒業後は魔法省の魔道具研究所へ。 エリート街道を進むクロエにその邪魔をする人物の登場。 人生を変える大事故の後、クロエは奇跡の生還をとげる。 大好きな人のためにした事は、全て自分の幸せとして返ってくる。健気に頑張るクロエの恋と奇跡の物語りです。 本編終了ですが、おまけ話を気まぐれに追加します。 小説家になろうにも掲載してます。

劣等冒険者の成り上がり無双~現代アイテムで世界を極める~

絢乃
ファンタジー
 F級冒険者のルシアスは無能なのでPTを追放されてしまう。  彼は冒険者を引退しようか悩む。  そんな時、ルシアスは道端に落ちていた謎のアイテム拾った。  これがとんでもない能力を秘めたチートアイテムだったため、彼の人生は一変することになる。  これは、別の世界に存在するアイテム(アサルトライフル、洗濯乾燥機、DVDなど)に感動し、駆使しながら成り上がる青年の物語。  努力だけでは届かぬ絶対的な才能の差を、チートアイテムで覆す!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...