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第七章 遠い異国への旅立ち編
第81話 アイツの母親いきなり登場!
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一時間にも及ぶ親子喧嘩の末、ようやく親父と母ちゃんが落ち着きを取り戻した。
終始聞く耳もたずな所を受け継がなくて良かったと心から思う。
それで落ち着いた今は家の中。
縮こまった親父達と机を挟んで向かい合っている。
「い、いやぁ面目ないねぇ。美人さんを一杯連れておるんで、てっきりラングが間違いを犯しちまったのかと」
「フフン、超絶美少女であるこのわらわを見たならそう思うのも仕方なかろう!」
「まぁある意味解釈は間違ってないですけどねー」
「みんなラングの事が~~~大好きれすぅ~~~」
「あ、卿は違うから。ただの付き添いだから」
ま、チェルトの言う通り解釈としては間違っていないが。
俺としちゃ、どうしてそこまで積極的なのかがわからんけどな。
愛ってのはそう、ゆっくりと育んでいくものだろう……?
『一発穴にブチ込んでしまえばそれが愛なのら』
ロリ神のくせに身も蓋も無い事言うんじゃねぇ!
少しは神らしく節操を取り戻したらどうなんだ!
「なんにせよ恥ずかしい所を見せちまってまぁすいやせんねぇ」
「良かったらゆっくりしてってねぇ」
「まぁそうもいかねーんだ」
「どういう事だいラング?」
……まぁもういいや。
さっさと説明だけして退散しちまおう。
「実はさ俺、この国から離れる事になったんだ」
「なんだって!?」
「それでいつ帰ってこられるかもわからねぇからな。二人にはちゃんと会っておこうと思ってよ」
「一体何があったんだ?」
「シャウ=リーン師匠とまた会ったんだ」
「ほお、シャウ=リーンさんとかい」
「それでな、あの人の下へと行く事になった。遠い国だ」
「そうかい……お前はあの方に憧れておったからなぁ。それなら仕方あるまい」
案の定、この名を出したら二人ともしんみりとしてしまった。
二人も師匠に世話になったからな、思い出深いんだろうよ。
「わかった。それなら迷惑かけるんじゃないよ!?」
「だがたまには帰ってこい。土産話をもってな」
「おう、任せておけ!」
しかしこう要点を話してしまえば二人ともすぐわかってくれる。
そういう意味では話の早い二人で助かるよ。
「それじゃそういう訳だから俺達は行くぜ」
「ああ、気を付けて行ってこい」
「くれぐれも体には気を付けるのよ」
「おう、二人もな」
その後は誰でもするような挨拶を交わして抱き締め合う。
これで心置きなく旅立てるってぇもんだ。
さぁて、行くとするか――
「――ちょっとバートナーさん、いらっしゃいますザマース?」
「げっ、このタイミングで嫌な人が来たわねぇ」
「マスマスってなんなのら?」
おいおい、冗談だろ?
この声ってまさか……。
「このデルヴォ夫人がやってきたのにお出迎えなしとはどういう事ザマース」
で、でたぁ! ギトスの母親だ!
しかも勝手に人の家に入ってきやがったぁ!?
つかなんなんだ、あのド派手な服装は!?
「あ、あぁどうもぉーデルヴォ夫人様ぁ」
「まったく、気が利かない一家ザマース。所詮はハーベスターの息子を持つ低俗一家ザマース」
それ俺本人がいる前で言う!?
「客人もいるザマスね。どうせ低俗な者達に決まってるザマース」
お、おいおい……。
俺はともかく、ここにいるのはA級勇者とS級勇者に神二人だぞ。
A級勇者だった息子を持つだけの農業士のおばちゃんが言える事じゃねぇんだけど!?
「さぁ早くアテクシの庭の作物を収穫するザマース。時間がもったいないザマース」
「へへぇ、よ、喜んで」
「ラング、お前はさっさと行きな」
「お、おう……」
そうか、親父も母ちゃんもギトスの母親にこき使われているのか。
俺がハーベスターになっちまったせいで。
すまねぇ二人とも……。
そんな疫病神が親二人を連れてさっさと行ってしまった。
もはや遠慮なしかよ。
「ラング、なんなら私の権限であのババァ黙らせるけど?」
「良かったら卿も手助けしようかい?」
「せっかくだからわらわが奴の家にダンジョン生成してやるのら」
「微力ながら~~~破魔光れぇ~~~土地を殺せますぅ~~~」
しかもこういう時だけ一致団結なのな!
すげえよギトスの母親、敵対心の影響力すげえ!
……でもな、そういう訳にはいかないんだ。
「悪い、それはちょっと待ってほしい」
「「「え?」」」
「あのおばちゃんな、元々はすごいイイ人だったんだよ。俺達も世話になったくらいにさ」
そうさ、悪いのはあの人じゃない。
そう変えてしまった世界のせいなんだ。
「昔、塩害が出ちまって作物が枯れて、俺達の食べられる物がなくなった事があってな。備蓄もギルドに取られてもうマズいって時に、あのおばちゃんがこっそり食料を分けてくれた事があって。だから俺達にとっちゃあの人は恩人なんだよ」
「そうなんだ……」
ギトスとの付き合いはそれからだったな。
最初は普通の友達で、俺の方が感謝していた。
いや、ずっと感謝があったからこそ、あいつがアニキ呼ばわりしても対等だと思っていたんだ。
でも人ってのは権力を得るとこうも変わるもんなんだな。
ギトスの分も含め、嫌になるくらいに思い知らされた気がするよ。
「だからこの問題は二人に任せようと思う。いつか勇者の権力がなくなって、あの人が元の恩人に戻る事を祈ってさ」
「そなたがそう言うなら免じてやるのら。だが、それでもダメな時は言うがよいぞ」
「卿も目を光らせておくとしよう。この家で何か良くない事が起きないようにね。君はディマーユ様の希望なのだから、こんな些細な事で輝きを失って欲しくはない」
「ありがとう」
エリクスがこうも言ってくれたし、もう平気だろう。
きっとあのおばちゃんも悪い事はしないはずだから。
ただ、ギトス本人がどうするかはわからんけども。
あの優しかった母親をこうも変えたギトス。
あいつは一体何を目指しているんだろうな……。
終始聞く耳もたずな所を受け継がなくて良かったと心から思う。
それで落ち着いた今は家の中。
縮こまった親父達と机を挟んで向かい合っている。
「い、いやぁ面目ないねぇ。美人さんを一杯連れておるんで、てっきりラングが間違いを犯しちまったのかと」
「フフン、超絶美少女であるこのわらわを見たならそう思うのも仕方なかろう!」
「まぁある意味解釈は間違ってないですけどねー」
「みんなラングの事が~~~大好きれすぅ~~~」
「あ、卿は違うから。ただの付き添いだから」
ま、チェルトの言う通り解釈としては間違っていないが。
俺としちゃ、どうしてそこまで積極的なのかがわからんけどな。
愛ってのはそう、ゆっくりと育んでいくものだろう……?
『一発穴にブチ込んでしまえばそれが愛なのら』
ロリ神のくせに身も蓋も無い事言うんじゃねぇ!
少しは神らしく節操を取り戻したらどうなんだ!
「なんにせよ恥ずかしい所を見せちまってまぁすいやせんねぇ」
「良かったらゆっくりしてってねぇ」
「まぁそうもいかねーんだ」
「どういう事だいラング?」
……まぁもういいや。
さっさと説明だけして退散しちまおう。
「実はさ俺、この国から離れる事になったんだ」
「なんだって!?」
「それでいつ帰ってこられるかもわからねぇからな。二人にはちゃんと会っておこうと思ってよ」
「一体何があったんだ?」
「シャウ=リーン師匠とまた会ったんだ」
「ほお、シャウ=リーンさんとかい」
「それでな、あの人の下へと行く事になった。遠い国だ」
「そうかい……お前はあの方に憧れておったからなぁ。それなら仕方あるまい」
案の定、この名を出したら二人ともしんみりとしてしまった。
二人も師匠に世話になったからな、思い出深いんだろうよ。
「わかった。それなら迷惑かけるんじゃないよ!?」
「だがたまには帰ってこい。土産話をもってな」
「おう、任せておけ!」
しかしこう要点を話してしまえば二人ともすぐわかってくれる。
そういう意味では話の早い二人で助かるよ。
「それじゃそういう訳だから俺達は行くぜ」
「ああ、気を付けて行ってこい」
「くれぐれも体には気を付けるのよ」
「おう、二人もな」
その後は誰でもするような挨拶を交わして抱き締め合う。
これで心置きなく旅立てるってぇもんだ。
さぁて、行くとするか――
「――ちょっとバートナーさん、いらっしゃいますザマース?」
「げっ、このタイミングで嫌な人が来たわねぇ」
「マスマスってなんなのら?」
おいおい、冗談だろ?
この声ってまさか……。
「このデルヴォ夫人がやってきたのにお出迎えなしとはどういう事ザマース」
で、でたぁ! ギトスの母親だ!
しかも勝手に人の家に入ってきやがったぁ!?
つかなんなんだ、あのド派手な服装は!?
「あ、あぁどうもぉーデルヴォ夫人様ぁ」
「まったく、気が利かない一家ザマース。所詮はハーベスターの息子を持つ低俗一家ザマース」
それ俺本人がいる前で言う!?
「客人もいるザマスね。どうせ低俗な者達に決まってるザマース」
お、おいおい……。
俺はともかく、ここにいるのはA級勇者とS級勇者に神二人だぞ。
A級勇者だった息子を持つだけの農業士のおばちゃんが言える事じゃねぇんだけど!?
「さぁ早くアテクシの庭の作物を収穫するザマース。時間がもったいないザマース」
「へへぇ、よ、喜んで」
「ラング、お前はさっさと行きな」
「お、おう……」
そうか、親父も母ちゃんもギトスの母親にこき使われているのか。
俺がハーベスターになっちまったせいで。
すまねぇ二人とも……。
そんな疫病神が親二人を連れてさっさと行ってしまった。
もはや遠慮なしかよ。
「ラング、なんなら私の権限であのババァ黙らせるけど?」
「良かったら卿も手助けしようかい?」
「せっかくだからわらわが奴の家にダンジョン生成してやるのら」
「微力ながら~~~破魔光れぇ~~~土地を殺せますぅ~~~」
しかもこういう時だけ一致団結なのな!
すげえよギトスの母親、敵対心の影響力すげえ!
……でもな、そういう訳にはいかないんだ。
「悪い、それはちょっと待ってほしい」
「「「え?」」」
「あのおばちゃんな、元々はすごいイイ人だったんだよ。俺達も世話になったくらいにさ」
そうさ、悪いのはあの人じゃない。
そう変えてしまった世界のせいなんだ。
「昔、塩害が出ちまって作物が枯れて、俺達の食べられる物がなくなった事があってな。備蓄もギルドに取られてもうマズいって時に、あのおばちゃんがこっそり食料を分けてくれた事があって。だから俺達にとっちゃあの人は恩人なんだよ」
「そうなんだ……」
ギトスとの付き合いはそれからだったな。
最初は普通の友達で、俺の方が感謝していた。
いや、ずっと感謝があったからこそ、あいつがアニキ呼ばわりしても対等だと思っていたんだ。
でも人ってのは権力を得るとこうも変わるもんなんだな。
ギトスの分も含め、嫌になるくらいに思い知らされた気がするよ。
「だからこの問題は二人に任せようと思う。いつか勇者の権力がなくなって、あの人が元の恩人に戻る事を祈ってさ」
「そなたがそう言うなら免じてやるのら。だが、それでもダメな時は言うがよいぞ」
「卿も目を光らせておくとしよう。この家で何か良くない事が起きないようにね。君はディマーユ様の希望なのだから、こんな些細な事で輝きを失って欲しくはない」
「ありがとう」
エリクスがこうも言ってくれたし、もう平気だろう。
きっとあのおばちゃんも悪い事はしないはずだから。
ただ、ギトス本人がどうするかはわからんけども。
あの優しかった母親をこうも変えたギトス。
あいつは一体何を目指しているんだろうな……。
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