底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
81 / 148
第七章 遠い異国への旅立ち編

第81話 アイツの母親いきなり登場!

しおりを挟む
 一時間にも及ぶ親子喧嘩の末、ようやく親父と母ちゃんが落ち着きを取り戻した。
 終始聞く耳もたずな所を受け継がなくて良かったと心から思う。

 それで落ち着いた今は家の中。
 縮こまった親父達と机を挟んで向かい合っている。

「い、いやぁ面目ないねぇ。美人さんを一杯連れておるんで、てっきりラングが間違いを犯しちまったのかと」
「フフン、超絶美少女であるこのわらわを見たならそう思うのも仕方なかろう!」
「まぁある意味解釈は間違ってないですけどねー」
「みんなラングの事が~~~大好きれすぅ~~~」
「あ、卿は違うから。ただの付き添いだから」

 ま、チェルトの言う通り解釈としては間違っていないが。
 俺としちゃ、どうしてそこまで積極的なのかがわからんけどな。
 愛ってのはそう、ゆっくりと育んでいくものだろう……?

『一発穴にブチ込んでしまえばそれが愛なのら』

 ロリ神のくせに身も蓋も無い事言うんじゃねぇ!
 少しは神らしく節操を取り戻したらどうなんだ!

「なんにせよ恥ずかしい所を見せちまってまぁすいやせんねぇ」
「良かったらゆっくりしてってねぇ」
「まぁそうもいかねーんだ」
「どういう事だいラング?」

 ……まぁもういいや。
 さっさと説明だけして退散しちまおう。

「実はさ俺、この国から離れる事になったんだ」
「なんだって!?」
「それでいつ帰ってこられるかもわからねぇからな。二人にはちゃんと会っておこうと思ってよ」
「一体何があったんだ?」
「シャウ=リーン師匠とまた会ったんだ」
「ほお、シャウ=リーンさんとかい」
「それでな、あの人の下へと行く事になった。遠い国だ」
「そうかい……お前はあの方に憧れておったからなぁ。それなら仕方あるまい」

 案の定、この名を出したら二人ともしんみりとしてしまった。
 二人も師匠に世話になったからな、思い出深いんだろうよ。

「わかった。それなら迷惑かけるんじゃないよ!?」
「だがたまには帰ってこい。土産話をもってな」
「おう、任せておけ!」

 しかしこう要点を話してしまえば二人ともすぐわかってくれる。
 そういう意味では話の早い二人で助かるよ。

「それじゃそういう訳だから俺達は行くぜ」
「ああ、気を付けて行ってこい」
「くれぐれも体には気を付けるのよ」
「おう、二人もな」

 その後は誰でもするような挨拶を交わして抱き締め合う。
 これで心置きなく旅立てるってぇもんだ。

 さぁて、行くとするか――

「――ちょっとバートナーさん、いらっしゃいますザマース?」
「げっ、このタイミングで嫌な人が来たわねぇ」
「マスマスってなんなのら?」

 おいおい、冗談だろ?
 この声ってまさか……。

「このデルヴォ夫人がやってきたのにお出迎えなしとはどういう事ザマース」

 で、でたぁ! ギトスの母親だ!
 しかも勝手に人の家に入ってきやがったぁ!?

 つかなんなんだ、あのド派手な服装は!?

「あ、あぁどうもぉーデルヴォ夫人様ぁ」
「まったく、気が利かない一家ザマース。所詮はハーベスターの息子を持つ低俗一家ザマース」

 それ俺本人がいる前で言う!?

「客人もいるザマスね。どうせ低俗な者達に決まってるザマース」

 お、おいおい……。
 俺はともかく、ここにいるのはA級勇者とS級勇者に神二人だぞ。
 A級勇者息子を持つだけの農業士のおばちゃんが言える事じゃねぇんだけど!?

「さぁ早くアテクシの庭の作物を収穫するザマース。時間がもったいないザマース」
「へへぇ、よ、喜んで」
「ラング、お前はさっさと行きな」
「お、おう……」

 そうか、親父も母ちゃんもギトスの母親にこき使われているのか。
 俺がハーベスターになっちまったせいで。

 すまねぇ二人とも……。

 そんな疫病神が親二人を連れてさっさと行ってしまった。
 もはや遠慮なしかよ。

「ラング、なんなら私の権限であのババァ黙らせるけど?」
「良かったら卿も手助けしようかい?」
「せっかくだからわらわが奴の家にダンジョン生成してやるのら」
「微力ながら~~~破魔光れぇ~~~土地を殺せますぅ~~~」

 しかもこういう時だけ一致団結なのな!
 すげえよギトスの母親、敵対心の影響力すげえ!

 ……でもな、そういう訳にはいかないんだ。

「悪い、それはちょっと待ってほしい」
「「「え?」」」
「あのおばちゃんな、元々はすごいイイ人だったんだよ。俺達も世話になったくらいにさ」

 そうさ、悪いのはあの人じゃない。
 そう変えてしまった世界のせいなんだ。

「昔、塩害が出ちまって作物が枯れて、俺達の食べられる物がなくなった事があってな。備蓄もギルドに取られてもうマズいって時に、あのおばちゃんがこっそり食料を分けてくれた事があって。だから俺達にとっちゃあの人は恩人なんだよ」
「そうなんだ……」

 ギトスとの付き合いはそれからだったな。
 最初は普通の友達で、俺の方が感謝していた。
 いや、ずっと感謝があったからこそ、あいつがアニキ呼ばわりしても対等だと思っていたんだ。

 でも人ってのは権力を得るとこうも変わるもんなんだな。
 ギトスの分も含め、嫌になるくらいに思い知らされた気がするよ。

「だからこの問題は二人に任せようと思う。いつか勇者の権力がなくなって、あの人が元の恩人に戻る事を祈ってさ」
「そなたがそう言うなら免じてやるのら。だが、それでもダメな時は言うがよいぞ」
「卿も目を光らせておくとしよう。この家で何か良くない事が起きないようにね。君はディマーユ様の希望なのだから、こんな些細な事で輝きを失って欲しくはない」
「ありがとう」

 エリクスがこうも言ってくれたし、もう平気だろう。
 きっとあのおばちゃんも悪い事はしないはずだから。

 ただ、ギトス本人がどうするかはわからんけども。

 あの優しかった母親をこうも変えたギトス。
 あいつは一体何を目指しているんだろうな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...