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第六章 反逆の狼煙編

第75話 宣戦布告完了!

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「ふぃー最後でちと焦ったが、うまく誤魔化せてよかったぜぇ」

 ついにギルドと勇者に宣戦布告してやった。

 奴らの驚く顔が今でも目に浮かぶかのようだ。
 ギトスの奴も相当に怒り狂ってるみたいだしな、かなり効いている証拠だろう。

「ちと最後で気が緩んでしもうた。すまぬ……」
「まぁ誰も気付いていないみたいだし? いいんじゃないかなー」
「ああ。今もこうして直下にいる俺達に気付かず咆え散らかしてるしな」

 なお俺達が逃げたのは魔王の死骸のすぐ下。
 あらかじめ掘ってあった逃げ場の下穴だ。
 おかげでギトスの叫び声がガンガンに響いてくるぜ。

「という訳でおつかれさん、ブレイクナイトさん」
「もぉーオフなんだからチェルたんって呼んでよぉ!」
「いやー勇ましくて俺ぁもうそんな可愛く呼べないぜ。呼んだ事無いけど」
「じゃあラブリーナイトに改名するから」
「それは企業イメージに反するからやめておこう?」

 チェルトは最高にいい演技をしていたな。
 今まで巷で伝説装備を着なかったおかげで、奴らにゃいい偽装装備になった。
 ま、表ではまだA級になりたてで着れないし、丁度いい使い道だ。

「ディーフさんもお疲れ様でさぁ」
「ククク、なかなかに名演技であったろう?」
「そりゃあもう! まさかあのデネルをぶっ飛ばすとは思いませんでしたがね」
「フンッ、あの程度などゴロゴロおるわ。所詮は粋がるだけの若造に過ぎぬ」
「さっすが三〇年A級してるだけの事はある……」

 ディーフさんもノリノリだったな!
 相談したら仲間になってくれるって一つ返事だったし、とても助かる。
 お歳ゆえに参加機会はそこまで多くはないだろうが、クラウース共和国の事でなら大いに力となってくれるだろうさ。

 そして最後のこのブレイクソーサラー。
 まさかこいつが生きて俺の下に参じるとは思わなかった。

「さっきは助かったよラクシュ。おかげで無事で済んだ」
「いえ、これがわたくしの使命なれば。主様の力になれて光栄にございます」
「お、おい、なにもひざまずかなくても」
「これが我が忠誠の証なれば」
「こ、こんな扱いにくい奴だったっけ、お前」

 あのゼンデルと共にワイスレットを追放されたラクシュ。
 彼女がエリクスに連れてこられた時はもう驚いたものだ。

 とはいえ、彼女はもうラクシュであってラクシュではないらしいが。

「わたくしはひとえにあなた様のために。そのために生きながらえる事を望み、体に改造を施されたのです」
「そ、そう。ゼンデルはどうなったのやら」
「あの男は最後にわたくしを置いて逃げ、そして先に魔物に喰われて死にました」
「おう……」
「ですがわたくしは生き残った。すべてはあなた様のおかげにございます」

 ……俺は何もしてないんだけど。

 ただ、そう思い込んでいるって話だったな。
 改造を施して、俺への忠誠心が最高にまで引き上げられたとかなんとか。
 よくわからんが、俺達以外の人の言う事は聞かないらしい。

 だが、ギルドに反するならこれ以上に適した人材はいないだろう。
 ギルドから追放された身だからな、復讐という名目なら妥当だ。
 唯一素顔を晒せる人物だと言えるだろうよ。

 ま、この鉄筒メガネは実に奇怪だが。
 赤く丸いレンズがとても怖いし、小さく「チュイイン」とか音が鳴るし。

「しかしこれでもう後戻りはできんぞラング。あとは奴らギルドと勇者を追い込むまでそなたの戦いは続く」
「わかってる。やるなら徹底的に、だ。これから忙しくなるぜ?」
「うむ。とことんまで付きおうてやるわ! 存分に頼るがよい!」
「次はもう吹き替えしくじるなよ?」
「ウッ……気を付けるのら」

 そして世間での俺の声役となったウーティリスの調子も上々だ。
 まだ言葉遣いに違和感はあるが、その内なれるだろうさ。

 さてと。

 正直、企業というモンがこういうものなのかはわからん。
 ディマーユさんもウーティリスも詳しくは覚えていないらしいしな。
 だがやる事は変わらないのだから存分に利用してやろう。

 ディマーユさんの宿敵、反神組織ゲールトをあぶりだすためにな。

 あの人いわく、まだゲールトはどこかに残っているという。
 ギルドの裏で巧妙に隠れているだけで、まだ暗躍しているらしい。
 だからこそ奴らを見つけるために「企業」という名を餌にしようというのだ。

 ゲールトが古より続く団体なら、その名を知っているハズ。
 そうしたら奴らはきっと誘われてくるだろうとな。

 もしかして神が復活したか――そう疑わせる事によって。

 その餌はもう蒔かれた。
 あとは奴らが釣り針にかかるのを待つだけだ。
 それまでは今まで通りにやらせてもらうだけさ。

「それじゃそろそろ帰るとしますかねぇ。あ、お宝は山分けで」
「いや、ワシにその必要はない。かの方に再会させてもろうた礼もあるしの」
「そうっすか……なら恵まれない子ども達への資金にさせてもらうぜ」
「うむ、それでよい。もはや役目を終えたシーリシス家の資産とて存在価値はないのだ。なれば真に世のため人のために使われるのが良かろう」

 ディーフさんもこうして身の振り方を変えようとしているみたいだしな。
 武具コレクターとして家を守るのではなく、久しぶりに戦士として復帰する事を。

 ディマーユさんに教えられた志の下に、きっとこの国を立て直す力となってくれるだろう。

 それでチェルトは俺の普段の付き人として。
 ラクシュは裏側での俺の護衛として。
 あとナーシェちゃんが補佐をしてくれるってんだから最高だ。

 そしてそんな同志が他にも、世界中に数多くいるらしい。

 俺はその同志達に協力してもらいつつ、ダンジョンブレイカーの力を奮う事になるだろう。
 勇者達を封殺しながら少しずつ攻略の仕方を教え、神を解放し、より多くの同志を増やしながら。

 そのためにも俺達は近々ワイスレットを――クラウース共和国を離れる。

 だからこの後はまだやる事は目白押し。
 もういつ帰って来られるかもわからないから、友人達に別れの挨拶もせにゃならんし。

 それじゃあ手始めにテント市場で挨拶でもして回るとしようか。
 あそこもまた良くしてくれた恩人ばかりだしな。
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