底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
72 / 148
第六章 反逆の狼煙編

第72話 ああ~、うん、あのギトスね……(ディマーユ視点

しおりを挟む
 ラング達が信じてくれて本当に良かった。
 我の持つ象徴ゆえに疑われる事もあり得たからこそ、なおさらに。

 しかしおかげで計画通り、ギルドどもへの逆襲が始められよう。

 ワイスレットの市民はもはや我慢の限界だった。
 ……いや、世界中のどこででも状況は同じだ。
 程度が違うだけで、もうどこかしくも限界に近い。

 だからこそ多くの市民がリミュネール商会と我に賛同してくれたのだ。
 かつて神に反旗を翻した反神組織ゲールトと同じようにな。
 自分達の行いと同じ事をやり返されるなんて思ってもみないだろう。

 だがそれが報いだ。
 この逆襲までには随分と時間がかかってしまったが。

「挨拶終わったぜ、ディマーユさん」

 ――あっ、さすが我自慢の弟子ラングきゅん、仕事がはっやーい!
 ご褒美にまたなでなでしてあげゆ♡

 んん~撫で甲斐のある良き筋肉ゥン!

「それでだが、これからどうすりゃいい? 俺はまず何をするべきなんだ?」
「なに、今まで通りで良い。ダンジョンを見つけたら片っ端から勇者より先に攻略するのだ。そうして集めた資産を我等が売りさばく。装備は分解して素材として、道具や薬品は困窮した者へ。決してギルドを通さずにな」
「なるほど、その流通ルートはすでに確保できていると」
「ふふふ、任せよ。リミュネール商会は思うよりずっと大規模だぞ?」

 もっともっと頼ってラングきゅん!
 あなたのために我、この商会創ったと言っても過言じゃないんだからぁー!

「さすがっすね師匠。なら頼りにさせてもらいまさぁ!」
「うむ、任せておけ!」
「そこでなんすが、ちと聞きたい事があるんですよ」
「なんだ? 我が知っている事なら何でも話そう」

 どうしたのかなー? しんみりした顔しちゃって。
 そんな心配そうな顔すると我、胸キュンで困っちゃうー!

「それは師匠がギトスに渡したペンダントの事です」

 ……え?

「たしかあれ、反願の呪鎖飾りとか言いましたっけ。あれをどうして奴に渡したのか、それがどうしても気がかりでならなかったんだ」
「ウン」
「何故です? 何故アイツにそんな物を渡したんですか?」
「ウン」

 ……。
 えーっと、えーっとぉ……
 待ってラングきゅん、ちょっと睨まないで?

 あのね、ごめん、誰だっけそれ。
 我そんな物渡したっけ?

 あーマズイ、お、思い出せない……!

「あーえぇーとぉ……ギトス、そうギトス! あの!」
「そうです。あのギトスです」
「反願! そう、反願ペンダントね! あ、あれねーもう大変だったんだから!」
「えっ……!?」
「ほら、たしかぁ、ほ、欲しがっててぇ……」
「そうでしたね。アイツ、師匠が首に下げていたあのペンダントをずっと欲しがっていたから」

 あ、あ、ああーーーっ!
 なんとなく、なんとなーく僅かに思い出してきた!
 そう、あれね、あのラングきゅんの周りでチョロチョロしてたアレ!

 なんかずーっと我のペンダント見てニヤニヤしてて「キショッ!」って思ってたんだよね。
 でもアレと仲良かったラングきゅんの手前、ハッキリと言えないしぃ……。

 とはいえ嫌だしうっとおしいしで、だからあげちゃったんだっけか、そういえば。
 ウーちゃんの力感じられて幸せだったからもったいなかったけど、なんか今にもセクハラしてきそうだったしさぁ~。

 まぁその後すぐにあの村出る事になっちゃったから、損したって後悔したっけ。

「あ、あれは偶然、ギルドの刺客を倒した際に奪った物。そしてウーティリスと呪いで繋がっている事も知っていた。だからこそ渡したのだ。あやつには本来、なーんも素質がなかったゆえにな」
「え……」
「もし才能のせいで奴が落ちこぼれれば、奴を信頼していたお前も気落ちして才能に蓋をするかもしれなかったぁ! そ、そうならないためにと思って渡したのだ!」
「でもアイツも一緒に修行したじゃないですか!」
「え? あ、うん。たしかに勇者になるべく修行はさせたが、ぶっちゃけまったく成長してなかったぞ。お前と違っていつもサボってたし、面倒臭がるし、特訓内容の趣旨もちーっとも理解してなかったし」
「ええー……そんなはずは……」
「やはりのう、やはりラングが美化していただけだったのら。心を読めばわかるが、奴は性根からクズだったのら」

 アレに実力がなかったのは本当だもーん!
 成長度合い酷すぎて途中から投げ出したかったしぃ!
 ラングきゅんがいる手前、そうできなかっただけでぇーーー!

「それで、アレが何かしでかしたの?」
「アレがA級勇者でラングでバーンしたのら」
「ゆ"る"さ"ん"ッ!!!!!!!!!!」
「おおっ!? なんかガチギレしとるのら! なして!?」

 ギリリリィ!!!!!
 ギトスとかいう奴めぇ! 我のラングきゅんをおとしめるなど到底許せぬ!!!!!
 もしまた遭った日には存在そのものを我の力をもって消し去ってくれるわァァァ!!!!!

 ――アッ! いかん、熱くなってしまった!
 つい床を歪ませてしまって……まずい、エリクスきゅんがめっちゃ睨んでるゥ!

 あとで我のお小遣いで何とかするから許してぇ!

「と、ともかくだ、そのアレをどうにかしたいのだろう?」
「あ、いや、そういう訳では――ありますがね。ま、もういいですわ。悪意があって渡したのでなければ構わんですよ」
「その点は心配するな。我がラングきゅんを追い込むような事は決してせぬ」
「きゅん?」
「あんっ、床の合わせ目に毛が挟まってきゅうんっ!」
「……」

 いっけなーい! 危うく我の地がバレちゃうところだったのぉーっ!
 んもぉーラングきゅんってば疑ってる顔も可愛らしっ!

 ……でもなんでみんな同じ目で見上げてるのかな?

「さて、ではさっそくだがラングよ、お前達には手始めに一つやってもらいたい事がある」

 仕方ない、今はちょっと真面目モードで行くとしよう誤魔化すために。

「どうすりゃいいですかね?」
「簡単な話だ。お前達の存在を公にして欲しい」
「ほぉー?」
「ただしセンセーショナルに、それでいて奴らにとって屈辱的な形でな」

 我の計画は奴らの行動まで織り込み済みだ。
 なればラングきゅん達がしくじらない限り、問題無くやり遂げられるだろう。

 そしてそんなミスを犯すような者達ではないと我は信じている。

「その為のお膳立てはしよう。あとはお前達が作戦通りに動けば、それだけで奴らはまんまと罠に乗せられるはずだ」
「……わかった。任せてくれ!」
「うむ。ではエリクス、をウーティリスへ渡してやってくれ」
「御意」
「むむ? アレとは一体なんなのら? お、これは……」

 ふふ、それは我が長い年月を駆けずり回って手に入れた逸品よ。
 もう残り少なくなってしまって心もとないが、今だけあればもう十分であろう。

「まさしく〝ダンジョンの種〟ではないか! しかしこれは超級ダンジョン以上でしか出ない代物であろう!?」

 その通り。
 さすがウーちゃん、ダンジョンにかかわる事は何でも知っているな。

「それが卿の持つ最後の種、『中級シード』です。それに迷宮神ウーティリスの力が加われば上級ダンジョンでも容易に生成できるでしょう?」
「うむ! そしてその上級ダンジョンに勇者どもを誘い込むという訳らな!」
「ご明察。やってくれるなラング?」
「そういう事かい……」

 そうなのー!
 そういうことなのー!
 さすがラングきゅん、可愛い賢いすごくつよーい! んもぉ愛してるぅーっ!

「オーケー、それならやってやるぜ! 見ていてくださいよおっ!」

 ウフフフフフ、我もうすっごい楽しみぃーっ!
 勇者とギルドの奴らが慌てふためいてグッズグズのボッロボロになっていく姿をもう想像しちゃってムネドキがとまらないのぉーんっ!

 ……だから頼んだぞラングきゅん。
 我と、この世界の人々のためにも、お前の力をどうか存分に奮ってくれ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ
ファンタジー
突然変異クラスのS級大地魔法使いとして生を受けた伯爵子息リーク。 彼の家では、十六歳になると他家へと奉公(修行)する決まりがあった。 奉公先のシルバリオル家の領主は、最近代替わりしたテスラという女性なのだが、彼女はドラゴンを素手で屠るほど強い上に、凄まじいカリスマを持ち合わせていた。 リークの才能を見抜いたテスラ。戦闘面でも内政面でも無理難題を押しつけてくるのでそれらを次々にこなしてみせるリーク。 テスラの町は、瞬く間に繁栄を遂げる。だが、それに嫉妬する近隣諸侯の貴族たちが彼女の躍進を妨害をするのであった。 果たして、S級大地魔法使いのリークは彼女を守ることができるのか? そもそも、守る必要があるのか? カリスマ女領主と一緒に町を反映させる物語。 バトルあり内政あり。女の子たちと一緒に領主道を突き進む! ―――――――――――――――――――――――――― 作品が面白かったらブックマークや感想、レビューをいただけると嬉しいです。 たかみが小躍りして喜びます。感想などは、お気軽にどうぞ。一言でもめっちゃ嬉しいです。 楽しい時間を過ごしていただけたら幸いです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...