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第六章 反逆の狼煙編
第71話 暴虐を退く希望となれ
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俺と師匠の目指す道は一緒だった。
この人が教えてくれた志は間違いなくこの時のためにあったのだ。
だけどこの道を選んだのは決して師匠の受け売りなんかじゃない。
俺は俺の中で育ったこの志に殉じて抗うと決めたのだから。
「みんな、俺は決めたぜ。ダンジョンブレイカーはこれより師匠――ディマーユさんと共闘する事をな! それに異論がある奴はいるか?」
「ふんっ、言うまでもなかろうっ! わらわは大賛成なのら! 同胞が蘇るのならば是非もないわ!」
「ニルナナカも~~~れ、すぅ~~~!」
「うん、私も文句なし! ラングがそう選んだのなら付いていくんだから!」
「よしっ、そういう訳だディマーユさん! 俺達はこれから仲間だな!」
「あっははっ、ありがたい! ではよろしく頼むぞラング達よ!」
ディマーユさんは本当に嬉しそうだ。
最初は存在を疑っていた訳だが、実際に会ってみればウーティリス達とは何も変わらない。
この異形の姿だって中身を知ればもう何も怖くはないんだ。
むしろ頼もしい。
俺達よりもずっと計画性を持って行動していた訳だからな!
「……と、実はだな、我はお前達が賛同してくれる事を見越してすでに色々と準備を整えてあったのだ」
「え、準備?」
「うむ。この場にはもう我の仲間や協力者達が集っておる。彼等の前に是非とも顔を出してやってほしい」
「おお……」
さすが師匠、こういう所も抜け目がない。
一体どんな仲間が待っているんだろうな!
「ではエリクスよ、まずはかの者を連れて来てくれ」
「御意。少し話に時間を掛けましたからね、ちょっと間をもらいますよ」
「う……すまん、手間をかける」
「ははっ、もう馴れたから平気ですよ。では行ってまいります」
そんな仲間を呼びに、エリクスが部屋を出ていく。
「これから会わせる人物にはラング、お前のサポートをしてもらう事になる」
「サポート?」
「あーそういうのは私がやるんだからーっ!」
「いやいや、そこはわらわが」
「ニルナナカ~~~」
「いや待て、お前達は前線に立つのだろう。それに、これから来る者は事務的に優秀な人材だからな、これに代わる者はそうおらんよ」
ん、事務的?
なんだ、掘る事以外に何かをするのか?
「わかってはいると思うが、今のままではダメだ。ここのギルドの力を奪えても、お前個人の力だけでは世界全体をカバーする事は不可能に近い」
「それはまぁそうっすねぇ……」
「だからこそ我等は団結し、協力し、一つの目標に向けて邁進せねばならぬ。そのためには多くの仲間、そして〝団体〟が必要となるだろう」
「団体……? 師匠のリミュネール商会みたいな?」
「いや、それよりももっと大きな組織だ」
大きな組織。
つまり村とか町とかそういう規模の共同団体って事だろうか?
「……かつて、人類にはそういった団体が多く存在していた。一つの物、一つの目的を達するために大勢の人物が集まり、作り、体現していたのだ。おかげで個人では到底なせない事を幾つもやってのけたのだよ」
「むむっ!? ディマーユよ、それはもしかして――」
どうやらウーティリスも何か知っているみたいだ。
神がここまで好奇心を見せるものって……。
「そう! その名こそ〝企業〟! 人間が不可能を可能とさせた事業組織だ!」
キギョー……!?
それの設立が世界を救う鍵……!
「……とはいえ我も企業が何かは詳しく知らぬ。ただ、一つの目的に対して一致団結するという意味では必要不可欠になるに違いない!」
「おお!」
「そしてその組織には必ず頭たる存在〝社長〟がいたという。ゆえにラングよ、お前がそれになるのだ。企業を構成する〝社員〟の道標となれっ!」
俺が、トップ……!
仲間達を導き、目的を達するための……!
「これから来る者はきっとその力になるであろう。ダンジョンブレイカーという象徴をよりよく伝え、広めるための存在としてな」
「ディマーユ様、彼女を連れてきましたよ」
「おお、御苦労! ではさっそく入ってきてくれ」
「はい、わかりましたっ!」
お、もうその頼もしい人が来たのか。
なんか可愛い元気な声じゃないか。
あれ、でもこの声どこかで――
「――えっ!?」
「あっ! ラングさん!?」
そ、そんなバカな!?
なんで……なんであのナーシェちゃんがここに!?
「もしかしてディマーユ様、ダンジョンブレイカーってラングさんの事だったんです?」
「その通りだナーシェ。さすがにこれは驚いたかな?」
「もうびっくりですよー。まぁ今ならなんとなくわかりますけどね。雰囲気がたしかに自信に満ち溢れていますし!」
し、しかも普通にディマーユさんと話している。
もしかしてナーシェさんって相当付き合い長い?
彼女も三百年付き合ってるとか言わない!?
「彼女は実は我がリミュネール商会が放った内通者でな。常にこの地のギルドを監視してもらっている。もちろん神依人の一人だ」
「なんらとぉぉぉ!?」
「そうなんですよー! なのでお二人の心の声もぽやぽや聞こえてました!」
「あらまぁ~~~」
「さすがに意識を向けられていないと何話してるかわからなかったんですけどね」
「おいおい、じゃあもしかして他にその神依人ってのがいたら俺達普通にバレちまうんじゃねぇか!?」
「そ、そこは心配せんでよいのら。神を理解・認識していなければ神依人とてわらわ達の心の声は聴こえぬ」
「そ、そうか……ふぅ~~~」
「ふふっ、ラングさんは相変わらずあわてんぼうですねっ!」
いやーこれは驚くし慌てるでしょうよぉ。
まさか俺達のアイドル・ナーシェちゃんがギルドに潜伏するスパイだったなんて。
この笑顔が監視フェイスだと思うと気が気じゃないよぉ俺は。
マジガチで気付かなかったもん。
「という訳でこのナーシェがこれからラングさんの秘書を担当させていただきますねっ!」
「むむむ、私はなんか納得いかないんだけど!」
「まぁまぁそう言わずに~! 同じ官女という事で仲良くしましょー!」
「そうらぞチェルト。ならば皆でラングを愛せばよいではないかぁ~♡」
「それもそうね!」
「だからなんでそういう所だけ決断が早いんだよ!?」
ほらぁ、見ろよナーシェちゃん眉間を寄せて困ってるじゃないか。
みんなと違って、彼女は別に俺に対して気がある訳じゃないんだから!
――ウウッ! 胸が痛い!
墓穴を、掘ったか……っ!
「さて、他の協力者の皆さんも待たせていますし、そろそろ隣のホールへと向かいませんかねぇ?」
「そうだったな。ではラングよ、彼等と会ってやってほしい。我はうっかり真の姿に戻っちゃったから、この部屋出れないので後は任せる」
「だからすぐ元の姿に戻るなと以前からあれほど」
「だってぇ~ラングやウーティリス達を前にしたら我、興奮しちゃってェ~。けど戻ったらあと数時間は戻れなくてェ~……」
「……俺、素顔のままっすかね?」
「安心してくれ、卿がみんなの分の仮面を用意してあるから」
「さすがエリクス、師匠と違ってそういうとこもしっかりしてるな!」
「え、まって、我の株、下がってない……?」
どうやら細かい所の準備もすでに万端らしい。
エリクスから顔上半分を覆える仮面を譲り受け、全員で顔を隠す。
彼等的にはまだ正体を明かす気はないのだろう。
必要としているのはラング=バートナーではなくダンジョンブレイカーだからこそ。
だったら俺は演じてやるとしよう。
部屋を出て進んだ先、通路の向こうにある部屋で待つ協力者達のために。
彼等はきっと、ダンジョンブレイカーの象徴性を求めているだろうから。
その意気込みのまま、俺達は大きな二枚扉を叩いて開く。
そうしてその先に待っていた協力者達に姿をさらすのだ。
大歓声を受けながら、堂々と。
「「「おおおーーーっ!!!!!」」」
そんな中、エリクスが一歩前に立って大手を広げる。
「お待たせして申し訳ない皆さん。しかしようやくこの時がやってきました。あの横暴な勇者達とギルドに対し反旗を翻すこの時が!」
「「「おおおっ!?」」」
「どうか彼の姿を脳裏にとどめて欲しい! なぜなら彼こそがあのダンジョンブレイカー……我々リミュネール商会を率いる新たな指導者となる者なのです!」
「「「うおおおおおーーーーーー!!!!!」」」
想像以上の人数だった。
百人以上もいるように見える。
そんな人々を今、俺達は中二階から見下ろしているのだ。
よく見ればテント市場の商人達もちらほらと。
あっ、あの肉屋のおばちゃんもしっかりいるじゃないか!
「勇者とギルド、彼等の行いはもはや許せる段階ではない! だからこそこのダンジョンブレイカーが立ち上がったのだ! まずはみなの生活を第一に考え、奴ら非道者達から力を奪うためにと! しかし奴らはそれさえ利用し、さらなる非道を行った! 許せる訳がない!」
そうか、このワイスレットにいる半数の人々がもうリミュネール商会の協力者だったんだな。
それだけみんなが勇者やギルドにこれ以上ない不満を持っていたんだ。
「よってこの日、我等は奴らに対抗するべく新たな団体へと生まれ変わるであろう! 細々と生きるのはもうここまでだっ!」
「「「おおおーっ!」」」
「真の自由を勝ち取るために、明日の安定した糧を得るために皆、これからも我々に力を貸してくれえっ!!!」
「「「ブレイカー! ブレイカー! ダンジョンブレイカー!!!」」」
「「「勇者とギルドへ目に物を見せてやれえっ!!!!!」」」
なんてすごい熱量なんだ……!
それだけみんな、辛い日々を送っていたんだろう。
それでも何も言い出せなくて、泣き寝入りするしかなかったから。
――けど、それもここまでだ。
これから奴らに堂々と逆らえる時代を築く。
今この時をもって、奴らに叛逆する狼煙を上げよう。
ここからは俺の気持ちだけじゃない。
この場にいるみんなの期待を背負って戦うのだと。
ゆえに今、俺は右腕を高々と振り上げていたのだ。
彼等の声援に、想いに応えるためにとただ一心に。
この人が教えてくれた志は間違いなくこの時のためにあったのだ。
だけどこの道を選んだのは決して師匠の受け売りなんかじゃない。
俺は俺の中で育ったこの志に殉じて抗うと決めたのだから。
「みんな、俺は決めたぜ。ダンジョンブレイカーはこれより師匠――ディマーユさんと共闘する事をな! それに異論がある奴はいるか?」
「ふんっ、言うまでもなかろうっ! わらわは大賛成なのら! 同胞が蘇るのならば是非もないわ!」
「ニルナナカも~~~れ、すぅ~~~!」
「うん、私も文句なし! ラングがそう選んだのなら付いていくんだから!」
「よしっ、そういう訳だディマーユさん! 俺達はこれから仲間だな!」
「あっははっ、ありがたい! ではよろしく頼むぞラング達よ!」
ディマーユさんは本当に嬉しそうだ。
最初は存在を疑っていた訳だが、実際に会ってみればウーティリス達とは何も変わらない。
この異形の姿だって中身を知ればもう何も怖くはないんだ。
むしろ頼もしい。
俺達よりもずっと計画性を持って行動していた訳だからな!
「……と、実はだな、我はお前達が賛同してくれる事を見越してすでに色々と準備を整えてあったのだ」
「え、準備?」
「うむ。この場にはもう我の仲間や協力者達が集っておる。彼等の前に是非とも顔を出してやってほしい」
「おお……」
さすが師匠、こういう所も抜け目がない。
一体どんな仲間が待っているんだろうな!
「ではエリクスよ、まずはかの者を連れて来てくれ」
「御意。少し話に時間を掛けましたからね、ちょっと間をもらいますよ」
「う……すまん、手間をかける」
「ははっ、もう馴れたから平気ですよ。では行ってまいります」
そんな仲間を呼びに、エリクスが部屋を出ていく。
「これから会わせる人物にはラング、お前のサポートをしてもらう事になる」
「サポート?」
「あーそういうのは私がやるんだからーっ!」
「いやいや、そこはわらわが」
「ニルナナカ~~~」
「いや待て、お前達は前線に立つのだろう。それに、これから来る者は事務的に優秀な人材だからな、これに代わる者はそうおらんよ」
ん、事務的?
なんだ、掘る事以外に何かをするのか?
「わかってはいると思うが、今のままではダメだ。ここのギルドの力を奪えても、お前個人の力だけでは世界全体をカバーする事は不可能に近い」
「それはまぁそうっすねぇ……」
「だからこそ我等は団結し、協力し、一つの目標に向けて邁進せねばならぬ。そのためには多くの仲間、そして〝団体〟が必要となるだろう」
「団体……? 師匠のリミュネール商会みたいな?」
「いや、それよりももっと大きな組織だ」
大きな組織。
つまり村とか町とかそういう規模の共同団体って事だろうか?
「……かつて、人類にはそういった団体が多く存在していた。一つの物、一つの目的を達するために大勢の人物が集まり、作り、体現していたのだ。おかげで個人では到底なせない事を幾つもやってのけたのだよ」
「むむっ!? ディマーユよ、それはもしかして――」
どうやらウーティリスも何か知っているみたいだ。
神がここまで好奇心を見せるものって……。
「そう! その名こそ〝企業〟! 人間が不可能を可能とさせた事業組織だ!」
キギョー……!?
それの設立が世界を救う鍵……!
「……とはいえ我も企業が何かは詳しく知らぬ。ただ、一つの目的に対して一致団結するという意味では必要不可欠になるに違いない!」
「おお!」
「そしてその組織には必ず頭たる存在〝社長〟がいたという。ゆえにラングよ、お前がそれになるのだ。企業を構成する〝社員〟の道標となれっ!」
俺が、トップ……!
仲間達を導き、目的を達するための……!
「これから来る者はきっとその力になるであろう。ダンジョンブレイカーという象徴をよりよく伝え、広めるための存在としてな」
「ディマーユ様、彼女を連れてきましたよ」
「おお、御苦労! ではさっそく入ってきてくれ」
「はい、わかりましたっ!」
お、もうその頼もしい人が来たのか。
なんか可愛い元気な声じゃないか。
あれ、でもこの声どこかで――
「――えっ!?」
「あっ! ラングさん!?」
そ、そんなバカな!?
なんで……なんであのナーシェちゃんがここに!?
「もしかしてディマーユ様、ダンジョンブレイカーってラングさんの事だったんです?」
「その通りだナーシェ。さすがにこれは驚いたかな?」
「もうびっくりですよー。まぁ今ならなんとなくわかりますけどね。雰囲気がたしかに自信に満ち溢れていますし!」
し、しかも普通にディマーユさんと話している。
もしかしてナーシェさんって相当付き合い長い?
彼女も三百年付き合ってるとか言わない!?
「彼女は実は我がリミュネール商会が放った内通者でな。常にこの地のギルドを監視してもらっている。もちろん神依人の一人だ」
「なんらとぉぉぉ!?」
「そうなんですよー! なのでお二人の心の声もぽやぽや聞こえてました!」
「あらまぁ~~~」
「さすがに意識を向けられていないと何話してるかわからなかったんですけどね」
「おいおい、じゃあもしかして他にその神依人ってのがいたら俺達普通にバレちまうんじゃねぇか!?」
「そ、そこは心配せんでよいのら。神を理解・認識していなければ神依人とてわらわ達の心の声は聴こえぬ」
「そ、そうか……ふぅ~~~」
「ふふっ、ラングさんは相変わらずあわてんぼうですねっ!」
いやーこれは驚くし慌てるでしょうよぉ。
まさか俺達のアイドル・ナーシェちゃんがギルドに潜伏するスパイだったなんて。
この笑顔が監視フェイスだと思うと気が気じゃないよぉ俺は。
マジガチで気付かなかったもん。
「という訳でこのナーシェがこれからラングさんの秘書を担当させていただきますねっ!」
「むむむ、私はなんか納得いかないんだけど!」
「まぁまぁそう言わずに~! 同じ官女という事で仲良くしましょー!」
「そうらぞチェルト。ならば皆でラングを愛せばよいではないかぁ~♡」
「それもそうね!」
「だからなんでそういう所だけ決断が早いんだよ!?」
ほらぁ、見ろよナーシェちゃん眉間を寄せて困ってるじゃないか。
みんなと違って、彼女は別に俺に対して気がある訳じゃないんだから!
――ウウッ! 胸が痛い!
墓穴を、掘ったか……っ!
「さて、他の協力者の皆さんも待たせていますし、そろそろ隣のホールへと向かいませんかねぇ?」
「そうだったな。ではラングよ、彼等と会ってやってほしい。我はうっかり真の姿に戻っちゃったから、この部屋出れないので後は任せる」
「だからすぐ元の姿に戻るなと以前からあれほど」
「だってぇ~ラングやウーティリス達を前にしたら我、興奮しちゃってェ~。けど戻ったらあと数時間は戻れなくてェ~……」
「……俺、素顔のままっすかね?」
「安心してくれ、卿がみんなの分の仮面を用意してあるから」
「さすがエリクス、師匠と違ってそういうとこもしっかりしてるな!」
「え、まって、我の株、下がってない……?」
どうやら細かい所の準備もすでに万端らしい。
エリクスから顔上半分を覆える仮面を譲り受け、全員で顔を隠す。
彼等的にはまだ正体を明かす気はないのだろう。
必要としているのはラング=バートナーではなくダンジョンブレイカーだからこそ。
だったら俺は演じてやるとしよう。
部屋を出て進んだ先、通路の向こうにある部屋で待つ協力者達のために。
彼等はきっと、ダンジョンブレイカーの象徴性を求めているだろうから。
その意気込みのまま、俺達は大きな二枚扉を叩いて開く。
そうしてその先に待っていた協力者達に姿をさらすのだ。
大歓声を受けながら、堂々と。
「「「おおおーーーっ!!!!!」」」
そんな中、エリクスが一歩前に立って大手を広げる。
「お待たせして申し訳ない皆さん。しかしようやくこの時がやってきました。あの横暴な勇者達とギルドに対し反旗を翻すこの時が!」
「「「おおおっ!?」」」
「どうか彼の姿を脳裏にとどめて欲しい! なぜなら彼こそがあのダンジョンブレイカー……我々リミュネール商会を率いる新たな指導者となる者なのです!」
「「「うおおおおおーーーーーー!!!!!」」」
想像以上の人数だった。
百人以上もいるように見える。
そんな人々を今、俺達は中二階から見下ろしているのだ。
よく見ればテント市場の商人達もちらほらと。
あっ、あの肉屋のおばちゃんもしっかりいるじゃないか!
「勇者とギルド、彼等の行いはもはや許せる段階ではない! だからこそこのダンジョンブレイカーが立ち上がったのだ! まずはみなの生活を第一に考え、奴ら非道者達から力を奪うためにと! しかし奴らはそれさえ利用し、さらなる非道を行った! 許せる訳がない!」
そうか、このワイスレットにいる半数の人々がもうリミュネール商会の協力者だったんだな。
それだけみんなが勇者やギルドにこれ以上ない不満を持っていたんだ。
「よってこの日、我等は奴らに対抗するべく新たな団体へと生まれ変わるであろう! 細々と生きるのはもうここまでだっ!」
「「「おおおーっ!」」」
「真の自由を勝ち取るために、明日の安定した糧を得るために皆、これからも我々に力を貸してくれえっ!!!」
「「「ブレイカー! ブレイカー! ダンジョンブレイカー!!!」」」
「「「勇者とギルドへ目に物を見せてやれえっ!!!!!」」」
なんてすごい熱量なんだ……!
それだけみんな、辛い日々を送っていたんだろう。
それでも何も言い出せなくて、泣き寝入りするしかなかったから。
――けど、それもここまでだ。
これから奴らに堂々と逆らえる時代を築く。
今この時をもって、奴らに叛逆する狼煙を上げよう。
ここからは俺の気持ちだけじゃない。
この場にいるみんなの期待を背負って戦うのだと。
ゆえに今、俺は右腕を高々と振り上げていたのだ。
彼等の声援に、想いに応えるためにとただ一心に。
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